第23話片鱗

身体がおかしい…



ずっと常に誰かが側にいて、プライバシーなど全く無い日々の中、優が一人になれるのは風呂か厠か布団の中位だったが、陽が暮れた辺りから、急に下半身が熱くなり困惑した。



どうしても我慢しきれず、一度目は厠で。



二度目はその直後、風呂の洗い場で。



そして同じ場所で、すぐ三度目。



格子窓から誰かに見られてはないか気にしつつ、ただ速く終わらせたい一心で自分で処理した。



いつまでも入浴していれば、定吉が様子を見に来るだろうから。



現代では、すでに彼女のいる同級生達よりも自分は性に淡白な方で、ほんのたまに一度すれば収まったのに、今回はすぐ四度目の欲求が湧いてきた。



布団に入ったが、やはり眠れるはずも無く、隣の座敷で眠る朝霧と観月に悟られ無い様に唇を噛みながら処理する。



艶かしい息が零れそうになると共に、不意に誰かは分からないが呼びたくなり、更に唇を強く噛む。



誰か、誰か、俺を…



この世界に来て、どんなに辛くても泣かなかったのに、もっと何かを求めているのか、自然と両目から涙が溢れそうになりそれを必死で堪え、全身薄っすら汗を浮かべる。



早く終わらせなければ…

朝霧さん達に見つかってしまう…



そう思い、優の脳裏にふと朝霧の顔が浮かんだ。



「あっ、はひっ…」



次の瞬間、あっけなく事は終わる。



しかし、終わった理由は朝霧にあるのでは無く、もしかして誰かに見られるかもと言う事に反応したのかもと、もしかして変な癖があるのかもと優は自己嫌悪なりながら、こんなになるのは、自分の淫魔の血が関係しているのでは無いかと背筋が寒くなる。



だが、それを考える前に先に始末しないといけ無いのだ。



定吉に見つからない様に、出したモノをさらに紙で二重にし、山里のお婆さんに作って貰った小袋に忍ばせた。



申し訳無かったが、定吉達が唯一中を見ないだろう物がこれだけしか無かった。



ゴミ箱は、必ず定吉が中を確認するのは分かっているので、朝になり隙を見て、包装物は何処かにこっそり捨てるつもりだ。



すぐにあれだけしっかり夕食を摂ったのに、今まで感じた事の無い激しい空腹が襲ってきた。



精神的には後ろめたさと、自分の中に流れているかもしれない淫魔の血への恐怖に疲弊している。



布団を被り直し息を静かに整えた。



ぐーぐーとお腹が鳴るが、なんとしても眠らないといけない。



そして、頼むからもう今日はもう何も起らないでくれと、優は深く念じて瞼を閉じた。









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