191 周遊の成果

 まずは、新しく発見した特殊条件から見ていこう。


 さっき、タイムアタックの話をしたよな。

 これまでの最速記録は小田原城ダンジョンの27分。

 わざわざタイムを計測してたのは、ここに特殊条件が設定されてるんじゃないかと思ったからだ。


 結果から言えば、大当たりだった。

 タイムアタック関連では、なんと六つもの特殊条件を達成できた。


『Cランク以上のダンジョンを30分以内に踏破する』

『Bランク以上のダンジョンを1時間以内に踏破する』

『Bランク以上のダンジョンを30分以内に踏破する』

『Aランク以上のダンジョンを2時間以内に踏破する』

『Aランク以上のダンジョンを1時間以内に踏破する』

『Aランク以上のダンジョンを30分以内に踏破する』


 ……この六つだな。


 この条件で入手できたスキルは、上から順に、



Skill──────────────────

健脚

歩き疲れにくくなる。

────────────────────

Skill──────────────────

俊足

走っても疲れにくくなる。

────────────────────

Skill──────────────────

空歩5

S.Lv歩分、空中を足場にすることができる。

────────────────────

Skill──────────────────

探索勘

フロアの踏破率に応じて残りフロアの構造の一部が直感的にわかる。

────────────────────

Skill──────────────────

戦場勘

攻め時や引き際といった戦況に関する判断が正確になる。ただし、元となる判断能力は、あくまでもスキル所持者自身の経験に基づくもの。

────────────────────

Skill──────────────────

筋疲労無効

運動による筋疲労が無効化される。

────────────────────

(※ 「空歩5」のスキルレベルは取得時には1)



「どれもこれも便利だよな」


 「健脚」「俊足」は順当に便利。

 空中機動が可能になる「空歩」は早速スキルレベルを5まで上げて使ってる。

 いろいろとおもしろいことができるが、それはまたの機会に紹介しよう。


 「戦場勘」……どこかで聞き覚えがあると思ったんだが、ダンジョン崩壊を止めたあとに、神様が状況判断を向上させるスキルの例として挙げてたスキルの一つだな。(*1)


 「筋疲労無効」は、短い説明文でしれっととんでもないことが書かれてる。

 このスキルのおかげでいくらダッシュしても疲れないし、剣を全力で振り続けても腕が動かなくなることがない。

 一見地味ながら「健脚」「俊足」が霞んでしまうような壊れスキルだ。


 「探索勘」だけはハズレだろう。

 俺はダンジョンマスターの能力で今いるフロアの構造がわかるからな。

 俺以外の探索者にとっては相当有用なスキルだろうとは思うんだが。


 その次に並んでるのは、モンスター400体撃破のスキルだな。



Status──────────────────

蔵式悠人


……


・取得スキル

スキルコンボ5 再鑑定 アーカイブ 縮地 雷光転身 ポルターガイスト 霊圧 精神侵蝕 暗視 恐怖攻撃 死霊魔法 シンクロ5 SP能力値変換 健脚 俊足 空歩5 探索勘 戦場勘 筋疲労無効 『毒回復 急所ダメージ軽減5 生命探知5 超聴覚 超音波 夜行性 魅了5 呪詛返し 催眠術5 詳細鑑定 周辺視野強化 邪眼5 ズーム 視力強化』 孤高5 連続踏破ボーナス5 スキル封印5 強制解除5 天啓5 神降ろし 『水中呼吸 魚人泳法 水流放射5 潜水 水中行動 銛術 撥水 対潜攻撃』


……

────────────────────


 「毒回復」から「夜行性」までと、さっき取ったばかりの「水中呼吸」から最後までだ。


 まず、「種族:アンデッド」の400体連続撃破で「毒回復」「急所ダメージ軽減」「生命探知」。

 悪くはないが、ものすごく有用ってほどでもない。

 「種族:蝙蝠」で得た「超聴覚」「超音波」「夜行性」も同じような感触だな。

 一応、「生命探知」や「超聴覚」はTo Doリストの「④ 政府からの監視対策」にはなるだろうか。

 標的をリモート監視できるようなもっと強力なスキルがほしかったんだが、そんな都合のいいスキルはないってことかもしれないしな。


 ゴブリンやオーク、リザードマンでも条件を満たせるダンジョンはあったんだが、出現モンスターの所持スキルが微妙だったので、今回は見送ることにした。


 「種族:悪魔」というのは、黒鳥の森水上公園ダンジョンにいたインプのようなモンスターのことを指す。

 Aランクダンジョンではレッサーデーモンなんかが該当する。


 「魅了」は成功率が魔力依存なので今の俺が使えば強力だろう。


 「呪詛返し」は名前の通り呪術を自動で反射できるスキル。精神の値に左右されるが、俺の現在の精神力ならほぼほぼ返せると思ってよさそうだ。


 「催眠術」は、スキルレベルに応じて認識阻害、意識操作、記憶操作なんかができる。ほのかちゃん(ジョブ世界)のテレパスの技能に通じるところがあるが、仕組み的には別物だ。

 名前的に薄い本のような能力を連想してしまうが、敵と認識された相手にしかかけられないという制約がある。

 できることも、せいぜいちょっとのあいだ意識を他に向けさせたり、直前の記憶をなくさせたりするくらいが限界だ。

 ……それでも十分しゃれにならないスキルだとは思うけどな。


 「種族:アイボール」は豊作だった。

 三つ選択で取得したのが「詳細鑑定」「周辺視野強化」「邪眼」。取得可能になったものをSPを払って取得したのが「ズーム」と「視力強化」だな。


 「周辺視野強化」「ズーム」「視力強化」は読んで字の如し。

 周辺視野がよく見えるようになり、遠くを見つめるとズームすることができ、視力がサバンナの狩猟民族並みに高くなった。


 「邪眼」は、対象を睨むだけでスキルレベルに応じて「怯み」「混乱」「気絶」「麻痺」「石化」の状態異常をかけられる。

 スキルレベル5なら自動的に「石化」というわけじゃなく、意識してそれ以下の状態異常に抑えることも可能だ。

 ジョブ世界のダークゲイザーの視線即死はレベル差依存だったが、有り難いことにこの「邪眼」は魔力依存になっている。


 これで、To Doリスト「⑤ 人を穏便に無力化する方法」は、「霊圧」「精神侵蝕」「超音波」「魅了」「催眠術」「邪眼」と、なんと六つもの手段が増えた(「霊圧」「精神侵蝕」は千鳥ヶ淵ダンジョンの時に手に入れたもの)。


 ちなみに、「霊圧」は自分のMPが対象のMPの十倍以上あるときに相手の動きが鈍る効果、「精神侵蝕」は精神同士を比較してこちらが倍以上高ければ相手の精神を0にする効果、「超音波」は音を浴びせて相手をスタンさせる効果だな。


 「霊圧」のMP十倍以上は難しそうに思えるが、そうでもない。

 モンスターの中にはMPが0に近いような奴もいるからな。

 過去に戦った例だとギガントロックゴーレムなんかがそうだ。

 そうでなかったとしても、今の俺のMPなら大抵のモンスター相手にマウントが取れるだろう。

 効果としては動きが鈍るだけなんだが、普通の状態異常と違って解除ができない。

 対モンスターはもちろん、対人戦でも有効そうだよな。


 で、アイボールの時に手に入れたスキルの中で最も重要なのが――これだ。



Skill──────────────────

詳細鑑定

他の「鑑定」系スキルでは見ることのできないより詳細なステータスを見ることができる。ただし、このスキルを使用中は他のスキルを使用することができない。

────────────────────



―――――

*1 107話参照。

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