第10話 彼女の決意
彼女がアメリカに来てくれて、三日が経った。僕は今まで会えなかった時間を取り戻そうと孤軍奮闘していた。彼は彼女と面と向かって会うのは彼が四月に離日してからなので、約半年ぶりだった。彼女も仕事に慣れていき、充実した日々を送っていた。しかし、彼女には気がかりなことがあった。それは、彼の健康に関することだった。アメリカに来てから不規則な生活を送っているからなのか、体型がふくよかになり、食べているものもカロリーが高い物が多かった。そんな彼にとって、これは序の口だったのかもしれない。なぜなら、彼は食事に関してもあまり気にしないで生活してきた。そのため、そのツケが今になって彼に降りかかってきた。そして、彼に出向している会社からメディカルチェックの結果が届いたらしく、その中身を見ると彼女がいない間にかなり不摂生をしたのだろう。医者からは「健康上は問題ないが、これ以上不摂生をすれば命に関わる」と言われた。
そして、彼女は彼のために彼の家の近くにあるスーパーで様々な食料品を調達して、彼のために和食を作ってあげた。その食事を食べた彼は「まるで日本にいるみたい。」そう考えていたのだろう。久しぶりの日本食に舌鼓していた。実は彼がアメリカに行く前は自炊をあまりしていなかった。その影響なのか、平日は米を炊いて食べていたが、週末はやることが増えてしまって、なかなかデリバリー以外の食事を取ることは出来なかった。そんな生活に慣れてしまって、徐々にストレスがたまると過食気味になってしまったのだろう。その生活を彼に続けさせるわけにはいかないと彼女は向こうにいる友人に時間のあるときに見に来てもらうことにした。
そして、彼女が明日、日本に向けて出発する事になっていたため、彼に頼んでお土産などを買いに出かけた。その時はハロウィーンのシーズンだったため、街中がすごくきらびやかな世界になっていた。そして、彼女とショッピングモールへ向かい、お土産やハロウィーンの装飾などを買い込んだ。そして、たくさんの食品や装飾などを積んだ車内には甘い匂いが漂っていた。そう、彼がモールで売っていたキャラメルのポップコーンとサイダーのボトルを片手においしい物をたしなんでいた。
そして、彼は彼女とのアメリカ滞在最後の夕食を一緒に作りながらこんな話をしていた。「ねぇ、わたしと結婚したい?」と彼女から質問されると「もちろん結婚したいよ」と即答で彼から返ってきた。しかし、彼は結婚に踏み切れない事情があった。それは、アメリカの会社の社員として出向延長が決定していたため、帰国するのは難しい状況で、万が一結婚できるとしても彼女の仕事を辞めて、アメリカに来てもらうか、遠距離生活しかなかった。
そして、彼女が帰国するために空港に送っていきながら「まさか、本当に来てくれると思ってなかったからこの一週間たのしかったよ。また時間が出来たら遊びに来てね。」と彼が話すと、彼女も「アメリカに来たことがなかったから来られて、あなたの仕事も知る事が出来てよかった。また時間を作ってくるね。」と告げて出発ロビーに入っていった。その後ろ姿が悲しそうで、無事に日本に着けるのか心配で、彼は仕事が手につかなくなりそうになった。彼にとっても彼女と会えなくなることは辛かった。
その後、彼女が日本に無事に到着して、彼女のメッセージを読んで唖然とした。それは、「私、テレワーク制度を使って、アメリカで生活する。」というのだ。
その決意は揺るぎなかった。実は彼女から以前に「仕事を休職かテレワークかアメリカの支社に異動して仕事すれば一緒に居られるよね?」といっていたことを思い出した。
まさか、その話が現実の話になろうとしていたことにびっくりした。
僕の理想を裏切る君へ NOTTI @masa_notti
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