第43話33.オットー兵団20
「なんだと!!信じられん!!」(コーホー・コーホー・プッシュー)
目の前にある物が…。
全て信じられない光景だ。
無人となった帝国軍軍事施設。
その荒涼とした門扉に掛かる看板。
我々が到着した時は既に城門の門扉は開かれ、人気が無くなっていた。
放棄されたばかりの軍事施設の門を潜る。
看板には帝国語で書かれた”帝国北部工廠”の文字だ。
どうやら非戦闘施設なので工員と兵は放棄して逃げた様子だ…。
急いだのか食堂の使用済み食器も放置して。
全ての職場は稼働中に放棄してそのままだ。
そして建物の中には油に塗れたお宝の山だ。
「見ろダン素晴らしいぞ!!コレが旋盤だ!!」(コーホ・コーホー)
「はぁ。」
興奮する俺に若干引き気味のダン。
初歩的な旋盤で動力は足踏み、紐が上部の弓(板ばね)の弦に繋がっている。
厳密に言えば動力が機械でないので機械旋盤とは言えない。
俺は魔法回転体は既に完成させたので、改造すれば夢の機械旋盤の出来上がりだ。
「ダン見ろ!”ボール盤”もある!!うーむ、王国に無いものだ…。正直、この建物全てを持って帰りたい…。」(コーホー・コーホー)
王国には旋盤が無かった…。
コレは幼い頃からの疑問の一つだった。
簡単な轆轤や木材加工の回転盤は在るのに…。
翔ちゃんの世界では古代から旋盤は在った。
しかし、翔ちゃんの国では数世代前に入って来たモノらしいので。
”発想の問題で発明されない物かも知れないと…。”思っていた。
但し、作るのは難しい。
何せ旋盤を作るのは
操作する工員を育てる必要もある。
面倒なので製造は後回しにしていたが…。
「ダン、全てを持ち帰る!準備しろ!!」(コーホー・コーホー)
「す、全て?」
「ああ、全てだ…。帝国の資料も残さず持ち帰れ。コレと同じ物を我が領地に作ってやる!俺の夢だっ!!」(コーホー・コーホー・プッシュー)
はい、軍事工廠コレ来ます!
きっとメンテナンスマニュアルもサービスマニュアルも…。
そして設計図も有るはずだ。
正直、コレが手に入るなら犯って良かった大遠征。
「全ての魔法収納袋を使えば持って帰れるハズだ…。取り外す前に配置図と姿図を描いておけ!」(コーホー・コーホー)
魔法の屯パックを全て出す。
マスクを外して大声で叫ぶ。
「誰かこの機械に詳しい者は居ないか!!」
モヒカンは誰もがお互いの顔を見ている。
仕方が無いので帝国語で繰り返す。
「”ワシは昔、この工具を持って仕事をしておった…。こんなに立派な奴ではないが…。”」
一人のドワーフ爺が手を挙げた。
「素晴らしい!”何処までやれた!!ねじ加工は出来たか?”」
「”ネジ…。は出来た。しかし、最新型は半分自動で切ってくれると噂で聞いた。”」
素直に驚く…。
帝国は進んでいるな…。
「”よし!!触ってみろ。やって見せよ!!”」
ドワーフが前に進み旋盤を選んでいる…。
一つを選び、各ハンドルやチャックを触って確かめている。
鋭い眼光だ…。
コレは期待できる。
工具机の中からレバーを取り出しチャックをゆっくり回して確認している…。
部材箱の中から鉄の棒を選んでチャックにセット、各爪の掛かりを確認している。
その後はハンドルを操作して材料の当りを確認している。
慎重な手付きだ。
足踏みを行い母材の回転が始まる。
幾つか有るハンドルを操作して
削り粉が飛び油煙が登る。
ドワーフは油差で、油を注いでいる。
チャックの元まで歯が進むと別のハンドルを素早く回して別の切り粉が飛ぶ。
足踏みを止めたドワーフは別のレバーを操作してチャックが回転を止めた。
チャックから部材を外して…。
鉄の薄板を充てて確認している。
恐らくねじ山ゲージだ。
治具の扱いが解る工員でないと精度は出ない。
翔ちゃんの世界のように図面を入力したらひたすら寸分狂いも無く部品を作り続けるチートマシンはこの世界に無い。
部材を回し何度か充てて確信したのかウェスで部材を研きながらやって来た。
「油が手に付くのでお気を付けを…。」
ウェスごと渡された鉄の円柱は見事にねじ山が立っていた。
削った面はピカピカだ!
「”よし!素晴らしいぞ!!我々は凡てコレを持ち帰り。我が領地で動かす!ソレには知識が必要だ!”」
「”はい…。ワシも幼い頃から親父に仕込まれました、置き時計を作ってました。あの…。ご領主様はこの道具をご存じで?”」
精密金属加工屋キター!!
思わず笑う。
コイツは掘り出しものだ、ギヤーも作れる。
「”文献で見ただけだ…、現物を見たのは初めてだ。何が作れるのか?は知っている。その程度だ…だからお前に仕事を任せたい。”」
「”ハイなんでしょうか。ご領主様。”」
「”俺はコレを動かすのに何が必要なのかは知らん。我が兵を使ってよい。分解取り外しを指導せよ!俺はこの工房を我が領地に持ち帰りたい。必要な物を全て持ち去る。組み立ても頼むぞ!”」
「”はい!ご領主さまのご命令のままに。”」
ドワーフの爺の心は興奮で目は歓喜だ。
「ダン!他の建屋の道具も部材も全て持ち去る。この者が使い方を知っている。
「はっ!了解しました!」
流石ゲームだ!
何というご都合主義。
コレでココを任す事が出来る。
俺はマントを翻す。
「俺は一足先に
(#◎皿◎´)遂に、旋盤を手に入れた!!
(´・ω・`)…。(異世界転生もののお約束…。)というか。なろう系話でコレ、旋盤無いと作れないよね?とか金型と油圧プレスでないと製造できないよね?って小物が大杉。
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