幻想世界に特撮が舞い降りる
逃げまわる私たちを巨大な大怪獣、スネークイーンが追い回す。
遠目でレビィを探すと杖と一緒に
「どーすんだよ、この大惨事っ!」
「どうするもこうするも全部丸っと計算通りよ」
私を背に乗せた状態でアカリが魔導を全力で駆使して大怪獣から逃げ回る。
「さすがね、ユウちゃん」
「ほんとどこまで深読みしてるのかしら、この子は」
「ぜっったいっ! 行き当たりばったりだからっ! ていうかー、チョーサイテー!」
なぜにそこでコギャル語なのよ。
アカリの背に背負われた私は右手の指二本を立て他の指を内側に握りんだ。
「
言葉と同時に夢の中、レビィテリア含む全域に巨大な魔法陣が浮かんだ。
「ゆ、優姉。そうか、あいつを転換するんですね!」
アカリがはしゃいだ声を上げるがそのままスルーして詠唱を続ける。
「
左から右へ、金色の光が指の動きを追いかけると同時に怪獣に砕かれ現在進行形で壊されていく都市全体が淡く光った。
それに合わせて空も海も、そして月華王の組み上げた世界そのものが淡く光り輝く。
「
何度も繰り返したその手順通り、そのまま左下に、そして頭上へと指を動かす。
「我が前のもの、今まさに
突進してきたスネークイーンの髪の毛の一部をセーラが水の刃で跳ね飛ばした。
そのまま宙にうねる髪の蛇が私とアカリに襲い掛かってきた。
「このモノすでに
光が付いてくるのを確認しながら一気に始まりの位置へと戻すと同時に五芒星が光り輝く。
その陣に触れた怪獣の蛇を私は手を伸ばしてつかみ取ると
「え、あ、あわわわっ!」
飛んできた
「
沙羅の水が水星詩歌を救い上げてリーシャの手元に届けた。
「あ、ありがとう!」
そんな沙羅たちののやり取りを回避に専念しながら跳ね回っていたセーラが優しい表情で見つめていた。
「光さす庭に場所無き者に
シギャーーーーーーーっというスネークイーンの鳴き声に合わせて私は全力で叫ぶ。
結構な頻度でやってる私の無茶ぶりに慣れた沙羅が条件反射でこちらを向いた。
「世界も母も怪獣も全てまとめてっ、妹になれっ!! 沙羅、世界のすべてを回収っ!」
「は、はいぃーーーー!!」
ズドーーーンという物音とともにポシェット内のぬかるんだ泥の位置に大怪獣と都市が文字通り振って落ちた。
今回の心の旅、念のため妹全員を外に出しといて正解だったわ。
正確には世界樹とスライムたちは残って土地を修繕してたはずだけど、たぶん大丈夫でしょ。
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
時間差を置いて上から沙羅とリーシャの絶叫が落ちてきた。
あの子らもポシェットの中に追いかけてきたみたいね。
「……妹に変わってねーじゃねーか。どうすんだよ」
崩壊したレビィティリアの上に降り立ったアカリが私を地面の上に下ろしながら姿の変わらない怪獣を見てつぶやいた。
「そらまぁ、本番はここからだしね」
スネークイーンの髪が一部千切れ先ほどと同じように私たちに襲い掛かる。
「くっ!エアロ…」
アカリが私をかばいながら魔導の発動宣言。
その時である。
「バーストッ!」
巨大な盾を構えた赤みを帯びた髪の少女が間に立ちふさがった。
「
はじかれた無数の蛇を高速の騎士が刺し貫いていく。
大方の蛇の処分を終えたところでその美丈夫は剣を振って宣誓した。
「同じく
不意に現れた二人にアカリが目を
「えっ、こいつら、なんで、って」
そんなアカリと私の手を一人の少女が両手で掴むと風景がゆがむ。
スネークイーンの一撃を背水の陣でよけた私とアカリの前でその少女がはにかんだ。
「平凡こそが我が人生。標準的幼馴染メアリー」
そこで一息入れたメアリーが安堵の吐息を漏らした。
「回避できてよかったです」
「これって……」
絶句するアカリ。
そんな私たちのそばにセーラが姉妹二人を伴って降り立つ。
その首にしがみついてるリーシャも悪魔っ子コスプレに水星詩歌を手に携えていた。
「うまくいったようやな」
疲労をにじませたレビィが白ちゃんをリーシャに押し付けた。
「せやね」
向こうで助けに来てくれた姉妹たちが大怪獣相手に大立ち回りしている中、長期戦をして疲労していた私たちは神殿に近い位置へと一旦後退した。
周囲を見渡してみると十人では数えきれない数の妹達が、私たちの撤退を支援するためにスネークイーン相手に戦いを挑み始めていた。
そんな私たち二人のやり取りを見ながらセーラが小首をかしげた。
「ユウちゃん、これ、どういうこと」
どういうことも何もね、見た通りさね。
「レビィティリアと夢の世界そのものに妹転換をかけた」
「「「「はぁ!?」」」」
失われかけていたからね。
そもそも、そのためにリーシャのとの戦いで私の血を付与したりしていたわけで。
月を砕いて全体に
「陰陽勇者、ユウ・アンドゥ・シス・ロマーニの名においてここに定義する」
風が吹くようになった沙羅のポシェット内世界に私の声が響く。
「この都市の名はシスティリア。リーシャの新しい妹になるからみんな可愛がってあげるように」
「わ、私っ!?」
目を白黒させるリーシャと声を荒げるアカリ。
「どういうことだよっ! それとなんでリーシャ姉!?」
「都市が妹にできないと誰が決めた?」
口をパクパクさせるアカリに向かって私は人差し指で指さす。
「大体にしてアカリがいったんじゃんか」
「わ、わたしが? な、なにを」
アカリの綺麗な緑の瞳を見つめなら私はこういった。
「『じゃぁ、来月以降の出世払いでいいじゃないですか』」
セーラに服を作ってもらったときにアカリは確かにそういったのさ。
「そんでもってセーラはこう答えた。『そうね、リーシャに渡してくれると嬉しいわ』」
同じく呆然とした様子のセーラ。
「ということで私とアカリからリーシャに利子付けて払うことにしたのさ。妹化した都市を」
ディス、シティ、イズ、マイシスター。
この都市は私の妹です。
「そしてこのシスティリアの中では『誰もが強制的に妹に転換される』と私が定義した」
皆の視線が大怪獣と戦う大量の妹たちに向いた。
がんばれ、トマスさん。
「
「日本語おかしいだろ」
ぼやくアカリ。
「あとちょいで終わりなんだから頑張れ。終わったら肩もんであげるからさ」
「おっさん相手にセクハラす……あれ、セクハラじゃない!?」
幻想世界に特撮が舞い降りる。
戦隊もので敵が巨大化したら次に何が来るか。
さぁ、妹の上で怪獣と踊ろうか。
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