第145話 稽古場の日常

「うぅ……」

「絶対折れてるこれ……」

「体力の限界……」

 稽古場のには死体と見間違う体が横たわっている。死屍累々とはこの事を言うのだろう。ウルルスは刃を潰してある訓練用の剣で肩をポンポンと叩いている。ウルルスはこれで素手の方が強いので、思いっきり手加減していると言って過言でも無い。その事を知らない練習生も多いので本気でしごいていると思っている練習生も多い。

「練習生の皆さん~! ご飯ですよ~!」

 ローガンの作の朝食を食べる為に死屍累々の半死体達が移動を開始する。稽古場に併設された食堂に用意されたローガンの朝食が無かったら、全練習生はティアの人気があるとはいえ、今の半分だったろう。

「片手で物が食える様になったのは進化なのか、退化のなのか……」

「黙って喰えよ……。休憩時間が終わっちまう……」

「今日は三人だけだから、鬼メニューだからな……」

「へぇ。会話するだけの体力があるなら食事後の稽古はもっと厳しくしても問題無さそうだな……」

 練習生から悲鳴が上がる。

「治療するから、飯終わったさっさと来いよ?」




 ウルルスもローガンの食事を食べる為に家に入る。朝食は最近はローガンが作ってくれ事の方が多い。その際はオムレツ専用のフライパンは使わない様に厳命している。

「今日も今日とてご苦労な事ね……」

「私達は後から稽古をお願いいます」

「ティアもやるんだぞ? 練習生のやる気が違うから」

「うへぇ、客寄せパンダは飽きましたぁ~」

 ティアとメルティアと護衛二人も食事をしている。フェイとロイは助産婦の所だ。ローガンはソフィアとこの後に行く予定でいる。ソフィアは食事を取らず家の周りを巡回していた。その必要が無いと思うのだが、癖の様なモノらしい。

「メルティアも少し運動しないとブクブクになるぞ? ローガンの作る食事は美味いからな」

「ウルルスの見てない陰でやってるわよ。私は努力を人に見せないタイプなの」

 護衛二人を見ると頷いていた。本当に陰で努力するタイプらしい。でなければスタイルも維持できないが。



「今日はここまでにしとこうか……」

 ティアを始め護衛二人と練習生の半死体が六体そこにあった。護衛と言う仕事柄体を動かす機会がある二人も、早朝稽古で毎日体を動かしているはずのティアまでも活性魔法を掛けられて無理矢理体力を回復させられた練習生三人も倒れ伏している。三時間半の練習時間だったが鬼メニューと呼べる練習内容だった。

「鬼……」

「悪魔……」

「人でなし……」

「なんだ? もっとやりたいなら。そう言えば良いのに……」

 迂闊な発言をした練習生の三人の悲鳴が木霊したのは言うまでもない。

「自業自得ですね」

 ティアはそう呟いて昼ご飯を食べに家に向かうのだった。

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