第104話 晩餐
ティアとロイは珍しく猪肉を買ってきた。てっきり野ウサギか鹿肉だと思っていた。
「猪肉ですか……。どんな調理法が良いでしょう?」
「パン粉をつけて揚げ焼きにするカツレツにすると美味いぞ?」
「いまいちイメージ出来ません。師匠、一緒に作りましょう」
幸いにも卵も小麦粉も固くなってしまったパンもある。パンを細かくしてパン粉にする事にして、残ったしまった猪肉はどうしよう……。燻製にでもするか。
「ご主人様、お酒飲みましたね?」
「それりゃあ、晩酌くらいするさ。来客に水だけ振る舞う訳にいかんだろ」
「私が帰ってくるまで待てないんですか?」
「酒が飲みたいなら残れば良かったじゃないか」
「それはそうですけど……」
「ウルルス殿。その子は奴隷か?」
「半分そうだし、半分違うな。教会の赦免状があるから奴隷から抜けてもいいだけど、親の仇から貰った赦免状なんて使う気になれんそうだ。ここは異端者の楽園だ。身分なんてあまり関係ないしな」
「なるほど! 教会が無いという事はそお云う事も許されるのだな!」
「そう云う事。ティア、ラムサスに酌をしろ。自分の分も飲んでいいぞ」
「はい。分かりました」
すでに高いウイスキーからグレードの低い酒に変えてある。それでも銀貨三枚くらいするが、
「これお客様に出すお酒じゃないと思うんですけど……」
「十分美味しいと思うけど? な、ラムサス?」
「うむ。こんなに美味い酒は初めてだ」
あらかじめティア達が来る前に打ち合わせはしてある。ローガンもフェイも余計ないざこざは避けたいと口裏は合わせてくれていた。
「料理が出来るまでちょっと待っててくれよ?」
「こんな美人に酌をしてもらえると美味い酒がますます美味くなるな!」
「お上手ですね。ま、一杯」
「すまぬな」
手持ち無沙汰なロイとフェイは料理が出来る間、ルドルフの詩集を読むことにした。何度読んでも読み飽きないらしい。
「調理法の手本を見せるから、覚えてくれ俺も酒盛りに混じりたい」
「了解です、師匠」
猪肉から余分なの脂身を取り除き、それをフライパンで熱しラードを抽出する。薄く切った猪肉に塩胡椒をして薄く小麦粉をつけ。溶き卵にくぐらせパン粉をつけて軽くはたく。その肉をラードで揚げ焼きする。これを人数分作る訳だが、一枚作ると後はローガンに任せて酒席に混ざる。
「ご主人様、医学書の進捗状況はどうですか?」
「ん~。本を作るのは初めてだし、ルドルフに助言を求めるつもりだ」
「最近は活版印刷のお陰で本も安くなりましたしね」
「それでも一般市民が本を買うのは珍しい事だがな、本当にルドルフは凄いよ」
「文字が読める人はガリバー先生の新作を待ちわびているようですね」
「ガリバー先生のお陰でこの国の識字率が上がったそうよ」
フェイの言葉にギョっとする。そこまで影響力があるとは思って無かった。
「夕飯が出来ましたよ~!」
「ラムサス。食事にウイスキーは合わん。ワインに切り替えていいか?」
「ああ、ウイスキーは夕食の後にまた飲ませてもらおう!」
「師匠は料理が上手いですからね、楽しみです」
「ティア殿もローテシアの教えを受けているのか?」
「基礎の基礎ですけどね。これでも魔法士なんですよ?」
「魔法士が近接戦闘を覚えちゃダメって法律はないからな」
「強さに貪欲なのは良い事だな!」
「私も拳法を教えていますよ?」
「ほう、二人も師匠がいるのか羨ましいな!」
「朝に弱い私には地獄ですよ。体力が尽きてもご主人様の活性魔法ですぐさま回復されますし」
「効率的だな!」
「ハッキリ言って地獄です……。いつまで続くんでしょう……」
「ティアさんが一人前になるまでですよ?」
「それは、いつのなるんでしょうか……」
「さあ? 三週間後かも知れませんし、三年後かも知れません」
「ご主人様……。ヘルプ……」
「俺は修練を止めないからな、一生になるぞ?」
「聞く人を間違えました……」
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