第97話 カジノ王の娘

 その昔、様々なカジノで大勝ちしてしまって王国全てのカジノの元締め、通称カジノ王と呼ばれる男と戦った事がある。その男との勝負にも勝ってしまい新しいカジノ王にされかかったので一目散に逃げた。それからというものカジノに行けば拉致されそうになるというのが続き、カジノには近づかなくなった。

 出禁を喰らっていうのは半分嘘で半分本当の事だ。カジノで遊びたいならカジノ王の娘と結婚しろと言われているのだ。結婚は嫌なので以降カジノで遊ぶ事が出来ないでいる。出禁を喰らっているのと同じ状況なのである。

「起こして早々浮気の宣言ですか……。いい度胸です!」

 朝に弱いティアも怒りが絡むとその限りではない。

「違う違う。たまたま昔の話の夢を見たから、万が一でも誤解を招かない様に釘を刺そうと思ってだな……」

「これ以上同居人が増えるのはごめんです!」

「いや、多分拉致されそうになるから助けてね?」

「ご主人様を拉致とか何の冗談ですか? そんな事出来る訳ないじゃないですか」

「そうなんだが……。ティアが拉致される可能性を考えた方が良いのかな?」

「賞金稼ぎにも負けない私を拉致とか、どんな冗談です?」

「そうだな。フェイ達が拉致されたらとりあえず……。生かしておけないな」

「それは同意します。ご主人様の子供に何かあったら、私だって激怒します」

「昔の夢を見ると出てきたその人が現れたりしない? 俺ら魔法士って」

「確かに良くありますね。予知夢って奴なんですかね?」

「原理は知らんが、夢のお告げみたいなもんだろ?」

「なんです。なんの話です?」

 昨日は部屋に戻らなかったロイが目を覚ましたようだ。正確には寝入ってしまったのだが、セミダブルのベットはギュウギュウ詰めだ。

「カジノ王の娘が近々家に現れるかもしれない」

「……。その話詳しくお願いします」

 同じ説明をロイに話す。ロイは難しい顔になる。

「魔法士ってそんな技能も有るんですね、少し羨ましいです……」

「俺とロイの子供は魔法士になる確率の方が高いぞ?」

「そうなんですか?」

「魔法士同士だともっと確率は上がるんだけど、魔法適性の無い女性との間の子供でも魔法適性がある子が産まれる可能性が高いんだ」

「でも、それだと世界中魔法士だらけになりません?」

「そうだな。だから魔法士の家系は特権階級を守るために、それほど自由には結婚は出来ないんだよ」

「ダーマスも理由なく私を狙った訳じゃないんですね」

「いや、あれはただの変態だから。魔法士全般的な考え方じゃないぞ?」

「いやぁ~。美少女過ぎましたね、私も罪作りな女です」

「ロイ、どう思う?」

「これ以上不幸になり様が無いんで、いいんじゃないですか?」

「不幸ですよ! ご主人様の子供が授からないんですから!」

「それは下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるっていうから数こなすしかないな。なんでにじり寄って来る……」

「鉄砲が何かは知りませんが、数をこなせばいいんですよね?」

「ロイ、ヘルプ!」

「私もティアさんに激しく同意します。私も赤ちゃん欲しいですし」

「味方がいない……。そうだな、外でなら美味しく頂かれてやる」

「……」

「……」

 朝日が昇り始め。朝の日課の為に全裸から服を着ている最中、二人分の視線を感じる。ウルルスの着替え終わるまで二人は毛布で体を隠している。毎日のように肌を合わせているものの恥ずかしいモノは恥ずかしいのだろう。

「じゃあな、その気になったら相手してやる」

 残された二人はウルルスが出て行った扉を見つめ、顏を見合わせると同時に頷いた。


 

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