第62話 隣国へ
王国の東隣は共和国である。国の代表は選挙で決まる。賄賂や買収なんでもござれな選挙なのだが、一致団結した国民に支持を得た代表も何人か生まれている。
選挙は王国民には理解できない思想らしく、共和国との交流はほぼ無い。
「人が人を選ぶってのが理解できない」
これが王国民の大多数の意見だ。今いる地位から上を目指すのが王国民なのだ。 人は平等であるが共和国の思想だ。二国間にほとんど交流が無いのも頷ける。
だが、言葉は通じる。大昔に王国から共和国が分離したという噂もありえる話だ。まあ、思想の違いだろう。王国民は共和国に行こうとしないし、逆も然りだ。
しかし、人の本質は変わらないもので一攫千金を目指すのも人の性だ。
「この辺にカジノは無いか?」
共和国の入り口の町はそれなりに大きかった。
「ああ、それならこの先にグランカジノがあるぜ? ここの通りを真っ直ぐ行けば分かるよ」
「ありがとよ」
チャラそうな若者に聞いたら、一発でカジノの場所が分かった。これは幸先がいい。俺はカジノでは負けなしだ。まあ、それで王国では出禁喰らってるわけなんだが……。
「立派な建物だな……。これは期待できる」
建物の立派さで集まる人種も変わる。これは、まあ。いつもの手を使おう。
カジノに入ると一番勝ってる人物の所に向かう。
「すみません、少しいいですか?」
「なんだ、こんなところで物乞いか?」
「似たようなモノですが、一つ手品でもお見せしようかと……」
「ほう、面白い。つまらなかったら警備員呼んでカジノからたたき出すぞ?」
「はい。では一枚チップを一枚頂ければ……」
「どのチップでもいいのか?」
「はい」
二人の美女を連れた小太りの男は一番安いチップを渡してきた。これは、一番簡単な手品でいいか。
「では、目を凝らしてご覧ください」
チップを上下に両手の平でグッと挟む。
「何が起きるんだ、それで?」
「チップが消えます。ほら、こんな風に」
手を開くとチップは消えていた。
「は? どういうことだ?」
「お代は消えたチップです、失礼いたします」
「まてまて、どうしてチップが消えたんだ!」
「種明かしは高いですよ? あなたが今持ってるチップの三倍は貰わないと」
「これから三倍にしてやる。その時は……」
「喜んでお教えいたします」
そんなに難しい事はしていない、初見殺しのネタだ。
「ではお互い頑張りましょう。健闘を祈ります」
そう言ってブラックジャックのテーブルに向かった。配られたカードで21を作る。比較的プレイヤーに優しいゲームだ。ディーラーは17以下場合もう一枚カードを引くプレイヤーもディーラーも22以上はバーストで負けになる。
「肩慣らしにはいいか」
「何かおしゃいましたか?」
「なんでもない気にしないでくれ」
ティーラーが二枚カードを配る。いきなり合計21の絵札とエースのナチュラルブラックジャックだ。
「気前がいいな」
「なんですか?」
「ナチュラルブラックジャックだ」
「‼ おめでとうございます」
「ここの配当はどうななってる?」
「ナチュラルブラックジャックは三倍です」
「ああ、そうなんだ」
このあと三回連続ナチュラルブラックジャックで勝った。ディーラーは少し涙目だ。配られたカードの上下を数字を当てるダブルアップするかと聞かれたが全て断った。まだまだ元手が足りない。着実に勝とう。その後はディーラーのバーストで勝ち続けた。ブラックジャックのコツは十九か二十で止める事だ。後はディーラーがバーストするのを待つ、たったこれだけだ。
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