第54話 師弟
「お帰りなさい師匠」
「お帰りなさい師父」
「だだいま」
この数日で二人はだいぶ仲が良くなった様だ。前までは睨み合っていたから大分前進したと思う。
「私も居るのですが?」
「なんだ、もう客寄せパンダは終わりですか」
「先生とねんごろになってもいいのですよ?」
「私はご主人様一筋なんです! 何ですか客寄せパンダって!」
三人が争い始めたので無視して家に入ると夕飯のいい匂いがしてくる。自分で作るのも楽しいが、用意されてるのも悪くない。
「あら、お帰りなさい」
フェイが読んでた本から視線をこちらに変える。本を読む時だけフェイは眼鏡を掛ける。聞いた話では乱視らしい。
「久々に頭使って疲れたよ……」
「医院に行って何で頭を使うのよ?」
フェイに今までの端的に話した。
「まあ、失恋で町から居なくなるのは困るわよね……」
「だろ? 看護婦は必須なんだよ」
「なんでウチがその費用を払うのか謎だけどね」
「必要経費だよ。俺だってこの町の住人の一人だ。医者が居なくなるのは困る」
「居なくなったら、優秀な回復術士が居るじゃない」
「俺が留守中に来られても困る。俺の本業は暗殺者だぞ?」
「もう辞めたら? これから父親になるのだし……」
「生憎、依頼があれば俺はそれを実行に移す」
フェイが深い深いため息をついた。何を言っても説得出来ないと理解しているのだろう。
「師匠~。ティアさんが攻撃魔法使ってきました」
「師父。回復魔法を……」
二人ともボロボロである。ティアに何を言ったのだろう……。
「いいけど、ティアに謝ったか?」
「「それはもちろん」」
「本気で怒ってたら骨も残らんか……」
「これでも手加減したんです。感謝してください」
まだは少し鼻息が荒い。大分お怒りだったようだ。
「二人ともちょっとこっち来い」
「「はい」」
右手でローガン。左手でロイに触れる。同時に回復魔法を掛けてしまおう。
「ああ、痛みが和らいでいきます……」
「うう、気持ちいいです……」
「何でしょう。無性に腹立ちますね……」
ティアが親指の爪を噛んでイライラしている。自分で怪我をさせて置いて、物凄く理不尽に感じてしまう。
「ティアも近接格闘覚えればいいじゃないか」
「それは、そうですが。この二人が師匠は嫌です」
「俺は容赦ないぞ?」
「未来の奥さんに何する気ですか!」
「とりあえず、体力付ける為に走り込み」
「なんだ、その程度ですか」
「この町から隣町まで全力ダッシュで」
「殺す気ですか!」
「だから言ったのに……」
「ティアさん。剣は私が教えてあげます」
「では私は心構えからですね」
「何でしょう……。嫌な予感しかしません」
「自業自得だよ」
「楽しみですね明日が」
「ええ、本当に……」
回復魔法で二人を全快にするのは止めた方がいいんだろうか?
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