第14話・オルは二百歳!?
「ミーナは以前、僕が拾った異世界人さ」
「私の他にもいるの?」
「ああ。いたと言うべきかな。ここにはもういないよ」
黙りこんだ私を見かねたように、オルが教えてくれた。それを見て補足するようにエントが言う。
「あの時は、ミーナの方がオルにべったりで、オルは嫌がっておった」
「あの女はべたべたとしつこかったからね。クロウが気に入っているのかと思えば、他の男にも粉かけるし」
どうやらミーナという女性は、問題ありの女性のようだった。オルは顔を顰めて言うし、エントは苦笑していた。クロウというのは確かオルのもとにいる調理人の名前だったような気がする。
「ミーナはそれでもオルに相当、惚れ込んでいる様には見えたがのう。あの子はオルの表面しか理解できんじゃったから仕方ないか」
「エント」
ふたりの話に聞き入る私を見ながら、オルが警戒の声をあげる。
「なにも隠しておく事はあるまい? オル。いつかはばれることじゃぞ?」
「僕は……出来ればこの子には恐れられたくない」
「コーカサスの王ともあろうものが、弱くなったものじゃ」
そう言いながらエントは目を細めて、オルを見た。エントを前にしたオルは子供のようだ。私には分からない言葉が二人の間で飛び交っていたが、なんとなくオルには私に知られたくない何か秘密のようなものがあるらしいと察した。でも知らないふりをした方が良さそうだと思っていると、エントと目があった。
「なあ、ヨーコよ。わしからお願いがある。わしは出来れば、こやつが気に入っているそなたがオルを理解してくれたならいいと思うがの」
エントの理解という言葉には、言葉以上の深い意味が隠されているような気がした。
「そんなことを私に言われても──」
なんだか深い事情がありそうだし、気軽にハイなどと答えていい問題でもなさそうに思えた。
「異世界人であるそなたには、こやつの本当の姿は理解しにくいかも知れない。じゃが、こやつは異質であるがゆえに常に孤独だ。純粋な面がある一方で傲慢でもある。それはこやつの立場ゆえによるもの。そこを理解し支える者がいないと、いつまでもこやつは不完全で苦しむ」
「エントさん。ずい分、オルについて詳しいのですね?」
「こやつが産まれた時から、わしは彼を見守ってきた。我が子のようなものじゃよ」
「オルとは、付き合いが長いんですね。彼って何歳なんですか?」
「二百歳は過ぎているはずじゃ。そこのイチリンや、ニリンは見た目道理の年齢じゃがな」
「二百歳!? そうするとエントさんは?」
エントは面倒見の良いお爺さんのようだ。オルを見る目が、孫を見るようなものに思われてふたりの仲に微笑ましいものを感じていると、オルの年齢が発覚した。三桁台だなんて思ってもみなかった。
思わず私を抱いているオルの横顔を見つめてしまう。このシミや皺の一つもない羨ましいほど、真っ白なもちもち肌の持ち主が二百歳? 私の理解を超えそうだ。
でもだからかと納得した。よくオルが私の事を子供扱いしたがるのは彼の年齢ゆえだと。
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