第12話・オルの本性ってなに?


 オルは私を横抱きにして庭園に降り立った。さすがに私も色々と見せられて、ここが自分の住んでいた世界とは別の世界なのだと認めざる得なかった。


「私のいた世界とは全然違うのね。驚いたわ。でも今見てきた中で、ここが一番好きだわ」

「ありがとうヨーコ。この世界は僕を初めとした七人の幻獣の王達が治める世界なんだ。獣人と妖精達が暮らしている。きみも馴染んでくれたら嬉しいな」

「マーメイドにゴブリン。ケンタウロスにサキュバス。フェニックスにユニコーン。それぞれ素晴らしい国があるのね」


 私はオルに紹介してもらった国々を指折り数えて、一つ足りない事に気が付いた。


「あら。そういえばこのコーカサスに住む者達は何の妖精なの?」

「この国では僕が受け入れた妖精や、精霊達が住んでいる。いわゆる他の一族から見れば、はみ出し者と言われるものを受け入れているよ。救済処置を取っているんだ」


 オルは事も無げに言ったが、はみ出し者と言う言葉が意味ありげに聞こえた。


「僕が特殊な存在だからね」

「オルが王さまということは、あなたも何かの幻獣なのよね? 何度でも言うけど私にはあなたは天使にしか見えないわ」

「ありがとう。これは仮の姿なんだよ。僕の本性は別にある」

「オルの本性って? 気になるわ」

「まだ明かせないかな。僕の本性を知ったら大抵の者は驚くからね」

「そうなの? あなたの今の姿でさえ、綺麗過ぎて直視するのが辛すぎるのに。まさか神さまってことはないわよね?」

「さあ。どうかなぁ?」


 オルは苦笑する。彼の本性は気になるところだけど、彼は知られたくないのか教えてくれなかった。大抵の者が驚くというくらいだから大きな存在なんだろうか? ドラゴンとか? 巨人? 仮の姿とはいえ、体に羽があるのだから天狗とか? いや、あれは東洋系だから違うような。

 じっと見つめていたらそのうちにね。と、言われてしまった。


「オルさま。お帰りなさい」

「ヨーコ。お帰りなさい」


 イチリン達が出迎えてくれる。イチリンが可笑しそうにオルに言った。


「オルさま。エントさまがヨーコに会いたいって」

「お前たち。エントにもう話したのか? このおしゃべりめ」

「だってオルさま。嬉しそうだったから」

「ご報告しただけだよ。オルさまが幸せならエントさまも喜ぶから」


 ニリンが邪気のない笑みを浮かべて言う。二人はとても仲が良さそうだ。イチリンとニリンの二人は双子のようによく似ているが、よく見れば瞳と髪色が濃い方がイチリン、やや薄い方がニリンだと見分けがつくようになっていた。

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