ナインリッヒーズの祝福

作者 きなこ

77

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★★★ Excellent!!!

 大学の夏休み、もともとほとんど面識のなかったふたりの女子学生が、ふとした事情から事実上の同居生活を始めることになるお話。
 百合です。これが百合でなければ一体なにが百合たり得るか、というくらいの、本当にただただまっすぐな少女同士の関係性の物語。ふたりの出会いからその関係の成立までを、細やかかつ丁寧に描いてゆく、そのストーリーテリングの実直さがとても魅力的でした。
 奇を衒ったり暴走するようなところがなく、着実に物語を積み重ねていくからこその魅力。単純に読みやすく、内容を受け止めやすい、というのもあるのですけれど、それがお話の方向性というか雰囲気とうまく噛み合い、どこか爽やかな心地良さのようなものを感じさせてくれるところが印象的です。
 好きなのは作中に登場する細かいモチーフというか、いわゆる小道具的なものの使われ方。例えば髙橋さんであれば、写真にまつわるあれやこれや。撮影のロケーションに触れることで景色が浮かび、また撮影であることから「カメラを構えた彼女」の絵を想像させる。他にも二章の『大きめのパーカー』なんかはもっとわかりやすくて、つまり画的なイメージをごく自然な形で読者の脳裏に想起させる、その手際が見事で惚れ惚れしました。……と、いうのは実は今現在、このレビューを書いていてやっと気づいたことなのですけれど。逆説、読んでいる最中はまるで意識すらしなかった、その自然さこそがまさに巧みであることの証左だと思います。
 読む人が内容を受け取りやすいように、堅実な描写を丁寧に積み上げた物語。そしてその描かれ方であればこそ、こうして支えることのできた内容。ふたりの距離感の変化や、そこに生じる空気の皮膚感覚まで。初々しくももどかしい青春の一幕を肌で感じさせてくれる、爽やかながら安定感のある作品でした。

★★★ Excellent!!!

 大学の学祭を通して憧れの女の子と仲良くなるアオハルなお話です。
 初めての小説とのことなのですが、そうとは思えないくらい完成度が高いです。
 主人公であるメイは、SNSで相互だけれど関わりは薄い同じ大学のなゆさんを推しているのですが……大学祭をきっかけにして二人は徐々に距離を縮めていきます。
 なゆちゃんがすごく人懐っこくて「陽の者……」と思っていたのですが、一筋縄ではいかない!という展開もあり、すごく面白かったです。
 趣味の楽しさを忘れかけた主人公と、全力で色々楽しむヒロインの素敵な百合作品が読みたい方にオススメの一作でした。