姚泓23 劉裕侵攻15  

姚泓ようおう姚和都ようわと堯柳ぎょうりゅうに配備、

南からくる沈田子しんでんし軍に備えさせた。


東部戦線の話に戻る。

姚紹ようしょうは諸將に対し、言う。


檀道濟だんどうさいらは遠くより来、

 死を押してやっては来ている。

 しかしその兵力は多くない。

 いま、砦の守りを固めるのは、

 劉裕りゅうゆう本隊が来るまでの時間稼ぎだ。


 ゆえに隊を分けて閿鄉じゅきょうに急行させ、

 奴らの補給路を断とうと考えている。

 さすれば一ヶ月もせずして、

 我らが陣には檀道済の首が

 ぶら下がることであろう。


 となれば、劉裕の計略も破綻しよう」


皆々はその意見に賛同したが、

その中にあり、胡翼度こよくどが言う。


「兵は集めおくべきでしょう。

 分けるのには賛同いたしかねます。

 これで派兵した隊が破れでもすれば、

 もはや士気はガタ落ちとなり、

 戦う、戦わない以前の話となりますぞ!」


なるほど、もっともだ。

姚紹、自身の提案を取り下げた。


この頃薛帛せつはくが、河曲かきょくで反旗を翻した。

赫連勃勃かくれんぼつぼつに接しているエリアである。

抱き込まれたのだろうか。


とはいえ、姚紹は

それに構ってなどいられない。

軍勢を分けて胡翼度を東原とうげんに配し、

姚鸞ようらんには大路だいろに宿営地を築かせる。


その様子を見た東晋とうしん軍、沈林子しんりんし

先に出た沈田子の弟である。

かれは精鋭を選抜すると口に板をくわえさせ、

喋れない状態にし、夜襲を掛けた。

この夜襲で姚鸞軍は潰滅。

9000 人あまりの死者を出すに至った。




泓遣給事黃門侍郎姚和都屯于堯柳,以備田子。姚紹謂諸將曰:「道濟等遠來送死,眾旅不多,嬰壘自固者,正欲曠日持久,以待繼援耳。吾欲分軍逕據閿鄉,以絕其糧運,不至一月,道濟之首可懸之麾下矣。濟等既沒,裕計自沮。」諸將咸以為然。其將胡翼度曰:「軍勢宜集不可以分,若偏師不利,人心駭懼,胡可以戰!」紹乃止。薛帛據河曲以叛。紹分道置諸軍為掎角之勢,遣輔國胡翼度據東原,武衞姚鸞營於大路,與晉軍相接。沈林子簡精銳銜枚夜襲之,鸞眾潰戰死,士卒死者九千餘人。


泓は給事黃門侍郎の姚和都を遣わせ堯柳に屯ぜしめ、以て田子に備う。姚紹は諸將に謂いて曰く:「道濟らは遠きより來たりて死を送ず。眾が旅は多からず、壘を嬰め自固せるは、正に曠日を持久し、以て繼援を待たんと欲すのみ。吾れ、軍を分け逕ちに閿鄉に據し、以て其の糧運を絕たんと欲す。一月と至らずして、道濟の首を之れ麾下に懸くべからん。濟らの既に沒さば、裕が計は自ら沮さん」と。諸將は咸な以て然りと為す。其の將の胡翼度は曰く:「軍勢は宜しく集むべし、以て分すべからず、若し偏師に利あらざらば、人心は駭懼せん。胡んぞ以て戰すべからんか!」と。紹は乃ち止む。薛帛は河曲に據し以て叛ず。紹は道を分け諸軍を置きて掎角の勢を為し、輔國の胡翼度を遣りて東原に據せしめ、武衞の姚鸞を大路に營ぜしめ、晉軍と相い接す。沈林子は精銳を簡じ枚を銜え之を夜襲せしまば、鸞が眾は潰し戰に死し、士卒の死者は九千餘人たり。


(晋書119-23_衰亡)




……なんか姚紹さんの提案却下されすぎじゃね? 大丈夫この人?


ひとまず胡翼度の発言から伺えるのは、後秦こうしん軍の最低限の士気キープすらかなりキツかったのであろう、ということ。ある程度以上の士気が望めれば、胡翼度も反対しなかったのかもです。


後秦の皆さん、誰も悪くないよね……なんでこんなきっつい戦いしなきゃいけないのこの人たち……姚興ようこう、返す返すも姚興の晩節……。

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