姚泓12 劉裕侵攻4   

東晉とうしん軍が成皋関せいこうかんにまで至ると、

洛陽らくようを守っていた姚洸ようこうは、救援を要請。

姚泓ようおう閻生えんせいに騎兵三千を与えて直行させ、

また姚益男ようえきだんに歩兵一万を与えて続かせた。

さらに姚懿よういを南の陝津きょうしんに配置、援護とした。


洛陽では、趙玄ちょうげんというひとが姚洸に言う。


「すでに晋軍は国内に深く食い込んでおり、

 人々は怯え上がっています。

 そもそもにして、我と彼とでは

 兵力の差が甚だしい。まともに当たって、

 どうにかできるものでもありません。


 であるならば、我々は兵力を引き上げ、

 金墉きんよう城での籠城をなすべきです。

 そして長安ちょうあんよりの援軍を待ちましょう。


 打って出る事だけは、避けるべきです。

 それで敗れれば、致命傷となります。


 金墉城はもとより堅固、

 そして損傷も受けておりません。


 カスが洛陽を避けて進軍するなど、

 決して叶わぬこと。ここでクソ呉を

 少しでも疲弊させておけば、

 やってきた援軍で制圧するのも

 容易きこととなりましょう」


実にもっともな策である。

だが、この策を見抜き、

すでに崩していたものがいた。

謝晦しゃかいである。


謝晦は檀道済だんどうさいに、姚洸の副官である

姚禹よううと接触させ、内応させていた。

この策には、他にも閻恢えんかい楊虔ようけんも参加。


彼らにしてみれば、趙玄の献策は、

クソクソ&クソである。

なのであの手この手で趙玄の策を批判、

姚洸に出撃をそそのかす。


最終的に姚禹の策を

もっともだ、と判断した、姚洸。

趙玄に精兵千余りを与えて南の柏谷塢はくやうを、

石無諱せきむいに東の鞏城きょうじょうを守らせて、

東晉軍を迎え撃たせる事にした。




王師至成皋,征南姚洸時鎮洛陽,馳使請救。泓遣越騎校尉閻生率騎三千以赴之,武衛姚益男將步卒一萬助守洛陽,又遣征東、并州牧姚懿南屯陝津為之聲援。洸部將趙玄說洸曰:「今寇逼已深,百姓駭懼,眾寡勢殊,難以應敵。宜攝諸戍兵士,固守金墉,以待京師之援,不可出戰。如脫不捷,大事去矣。金墉既固,師無損敗,吳寇終不敢越金墉而西。困之於堅城之下,可以坐制其弊。」時洸司馬姚禹潛通於道濟,主簿閻恢、楊虔等皆禹之党,嫉玄忠誠,咸共毀之,固勸洸出戰。洸從之,乃遣玄率精兵千餘南守柏穀塢,廣武石無諱東戍鞏城,以距王師。


王師の成皋に至るに、征南の姚洸の時に洛陽に鎮ざば、使を馳せ救を請う。泓は越騎校尉の閻生遣りて騎三千を率い以て之を赴かしめ、武衛の姚益男に步卒一萬を將い洛陽を助守せしめ、又た征東、并州牧の姚懿を遣りて陝津に南屯し之の聲援と為す。洸が部將の趙玄は洸に說きて曰く:「今、寇の逼るは已に深く、百姓は駭懼し、眾寡の勢は殊にして、以て敵に應ぜるは難し。宜しく諸戍の兵士を攝い、金墉を固守し、以て京師の援を待したるべくし、出戰すべからず。如し脫し捷さざらば、大事は去りたらん。金墉は既に固く、師に損敗無かれば、吳寇は終に敢えて金墉を越え西せざらん。因りて堅城の下に之き、坐せるを以て其の弊を制すべし」と。時に洸が司馬の姚禹は潛かに道濟と通じ、主簿の閻恢、楊虔らは皆な禹の党にして、玄の忠誠を嫉まば、咸な共に之を毀ち、洸に出戰を固く勸む。洸は之に從い、乃ち玄を遣りて精兵千餘を率い柏穀塢に南守せしめ、廣武の石無諱に鞏城を東戍せしめ、以て王師を距がんとす。


(晋書119-12_仇隟)




一部跳躍解釈が発生しています。ここについての解説なぞを。


上掲跳躍は、後日の檀道済のコメントに拠ります。いわく「謝晦の策謀はやばい。北伐の策、十あればその内の九は奴の手による。とても敵には回したくない」。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888050025/episodes/1177354054890239576


実際のところ、後秦討伐の動きは「まず国境地帯の敵の心を折る」ところからスタートしており、楽=最小の損害とする戦い、がテーマとなっている印象です。であれば、いかに損耗なく敵を倒せるかに対し、謝晦は腐心したことでしょう。


土断からすでに深く関わっていることを思えば、かなり早い段階から謝晦は後秦方面に諜報を飛ばしまくり、策を練りにねったはず。

いや、てゆうかその辺の話を謝晦伝で全くしないとか、沈約しんやくさんまじそういうとこだぞ。「あっさり瓦解した情けない反逆者」ブックの演出強すぎだろ。


まぁ、そんなわけで、あえて「檀道済の策」という方向は弾きました。いや檀道済でもいいんですけど、宋書の謝晦下げは多分、無視しきれないものだと思うのですよ。


ほんに「晋末宋初は劉裕りゅうゆう穆之ぼくし以外に人はなし」ぐらいの書かれっぷりだし、後世の評伝もだいたいそこに依っているんですが、んなわけねーだろうがよ、ってのが、自分にとっての大前提。裏が取れるわけではないですが、まァそこは歴史学をやってるわけではない気楽さでね!

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