夏の赫連勃勃（かくれんぼつぼつ）、陰密（いんみつ）を陥落。

陰密を守る姚軍都（ようぐんと）は捕まり、

かれの目の前で、將士五千人あまりが

穴埋めにされてしまう。

姚軍都はらんらんとした怒気を目に宿し、

声の限りに赫連勃勃の罪状を叫び、

決して屈するつもりがないことを示す。

赫連勃勃は怒って斬った。

いや怒るなや。

赫連勃勃は止まらない。

そのまま雍（よう）にまで進軍する。

この行軍に、周辺住民は

みな五将山（ごしょうざん）へと逃げ込んだ。

姚恢は安定（あんてい）を放棄、五千世帯を引き連れ、

新平（しんへい）へと脱出しようとする。

だが、これを地元の豪族、

胡儼（こげん）と華韜（かとう）が兵を率い、妨害。

なので姚恢は、ひとり長安（ちょうあん）へ逃亡。

残された者たちのうち、彌姐成（びそせい）と裴岐（はいき）は、

胡儼らによって殺された。

また西方を守っていた姚諶（ようしん）も、

配下に城を押し付け、逃亡。

ズタボロにもほどがある。

赫連勃勃は雍周辺で略奪を繰り広げる。

この事態に、姚紹（ようしょう）が動く。

尹昭（いんしょう）や姚洽（ようこう）を率い、歩騎五万で出立。

後続として、姚恢が精騎一万を率いる。

えっ姚恢に兵権？　マジで？

横水（おうすい）に駐屯する後秦（こうしん）軍を見、

赫連勃勃は安定まで撤退しようとする。

が、ここで再度登場。胡儼さんです。

安定の城門を閉ざし、鮮卑（せんぴ）数千人を殺害。

安定ごと後秦に降伏してしまった。

えっなにがしたいのこのひと……。

ともあれ、足止めを食らった赫連勃勃に

姚紹が追いつき、馬鞍坂（ばあんはん）で交戦。

後秦軍が快勝する。

更に追撃をかけ、朝那（ちょうな）にまで至ったが、

ここで逃してしまった。

そのため姚紹軍は、引き返すのだった。

赫連勃勃攻陷陰密，執秦州刺史姚軍都，坑將士五千餘人。軍都真目厲聲數勃勃殘忍之罪，不為之屈，勃勃怒而殺之。勃勃既克陰密，進兵侵雍，嶺北雜戶悉奔五將山。征北姚恢棄安定，率戶五千奔新平，安定人胡儼、華韜等率眾距恢，恢單騎歸長安。立節彌姐成、建武裴岐為儼所殺，鎮西姚諶委鎮東走。勃勃遂據雍，抄掠郿城。姚紹及征虜尹昭、鎮軍姚洽等率步騎五萬討勃勃，姚恢以精騎一萬繼之。軍次橫水，勃勃退保安定，胡儼閉門距之，殺鮮卑數千人，據安定以降。紹進兵躡勃勃，戰於馬鞍阪，敗之，追至朝那，不及而還。

赫連勃勃は陰密を攻陷し、秦州刺史の姚軍都を執え、將士五千餘人を坑ず。軍都は目を瞋らせ聲を厲し勃勃が殘忍の罪を數え、之に屈せるを為さずば、勃勃は怒りて之を殺す。勃勃の既に陰密を克せるに、兵を進め雍を侵し、嶺北の雜戶は悉く五將山に奔る。征北の姚恢は安定を棄て、戶五千を率い新平に奔らば、安定人の胡儼、華韜らは眾を率い恢を距ぎ、恢は單騎にて長安に歸す。立節の彌姐成、建武の裴岐は儼に殺さる所と為り、鎮西の姚諶は鎮を委ね東に走ぐ。勃勃は遂に雍に據し、郿城を抄掠す。姚紹及び征虜の尹昭、鎮軍の姚洽らは步騎五萬を率い、勃勃を討ち、姚恢は精騎一萬を以て之に繼ぐ。軍の橫水に次せるに、勃勃は退りて安定を保ち、胡儼は門を閉じ之を距ぎ、鮮卑數千人を殺し、安定に據せるを以て降ず。紹は兵を進め勃勃を躡じ、馬鞍阪にて戰いて之を敗り、追いて朝那に至れど、及ばざれば還ず。

（晋書119-7_仇隟）

なんだこのツッコミが追いつかない感じ。

にしても、胡儼の動きが不気味すぎますね。いちど後秦軍を蹴っておきながら、赫連勃勃が来ると投降とか。彌姐成と裴岐、殺され損じゃないですか……。

完全に連携が崩壊してますねえ。これもやっぱり「姚宏の残したもの」だよね。ほんに、こんな一気に瓦解しないでくれてもええんやで……。