AIに書かせてみる?



 AIのべりすと。

 すでに使ってみたよってかたも、けっこうおられるんじゃないですかね。

 174万冊のデータをぶっこみ、小説の書きかたを訓練させたAIに自動で作品を書いてもらうというアプリだそうです。冒頭数行を自分で書き、その続きをお願いする形。


 小説書くのが楽しくて楽しくてしかたない僕みたいな人間には無用の長物ですね。

 とは言え、コンピューターにどのていど書けるのか、気にはなってたんですが。


 なぜとつぜん、この話題かというと、これもまた近況ノートに書かれてる人がいて……。


 数人の書き手さんたちが、去年の年末ごろだったかに、試しに使って感想を書かれてるのは見てたんですよ。ほとんどの人は「そこそこ無難に書いてくれるけど、設定など無視することがあって、現状、そのまま自作としてサイトにあげるのは不可能」と言ったご意見でした。


 それを読んで、まあそんなもんだろうなと僕も思ってたわけですが。


 さて、じゃあ、なんで今さら?

 いや、だからですね。衝撃的なノートを見ちゃったので。


 それによると、その人は忙しくて執筆する時間がない。そもそも文章書くことがさほど好きじゃない。なので、自作品の30万字ほどをAIのべりすとにデータ落とし、続きを書かせてみた、と。


 そこまではいいんです。僕が衝撃的だったのはそのさきで。

 今後はAIのべりすとに書かせた文章を投稿します。そのまま書かせるとプロットが破綻するので要所で手直ししてやりながら、AIに書かせたら、三時間で六万字書けた……と。

 で、自分の文体と多少は違うかもだけど遜色はないし、そのために30万字も読ませて、自分の思考法をトレースさせたんだから、AIが考えた展開であっても自分の作品であることに間違いない、みたいなことを書かれてたんです。


 えっ……? それ、投稿しちゃうんだ? それって、カクヨム的にアリなのかな?


 ご存じのとおり、カクヨムはロイヤルティプログラムに登録しておけば、PVやギフトに応じてお金をくれます。当然のことながら、人間より容易に大量の文字数を書けてしまうAIに書かせたものを、自作品として公開し、リワード換金するのは、カクヨム運営としてオッケーなの?

 それだと、ちょっとプロット作れる人なら、誰でも小説書けることになっちゃうよ?

 たぶん、僕みたいにつねに書きたい案があふれてる人だったら、あっというまに、スゴイ作品数になる。


 カクヨム、ゆるしてくれるかな? そこはかとなくアウトのような気がするんだけど……。


 それにやっぱり、細部の展開をAIがひねりだした作品って、自作品とは言えない気がするんですよね。


 たとえばだけど、大人気漫画家が、おおざっぱなネームだけ、ちゃっと作った話をもとに「あとは君が仕上げといてよ」と、アシスタントに任せたとします。それって、その漫画家の作品ですかね? 長年、その先生にお仕えしてたお弟子さんなら、もちろん先生の癖や好みも把握はしてるんだろうけど……やっぱり、本人の作とは言いがたい。そんな気がするのは僕だけ? いわゆる原作者、原案にとどまるのでは?


 自分の代理でAIに書かせた作品って、それと同じだと思うんですけどね。

 僕は小説を書くことも、自分の作品も、キャラクターも、場面も、セリフも、すべてをこよなく愛してるので、なんとなく冒涜行為に思えてならない。古くさいんでしょうか?


 これは書き手としての倫理観の問題なのかなぁ。


 たぶん、賞金五百万とか一千万とかかけてる一般公募の賞で、万一、大賞作品をAIのべりすとに書かせてたと発覚したら、受賞取り消しになるでしょうね。

 最近、公募に出してないので、規約とか読む機会なくなってますが、もしかしたら、すでにそういう行為は不可と記されてるかも?

 少なくとも、カクヨムではまだ、AIに書かせた作品を公開しちゃダメとは記載されてなかった気はしますが、文芸誌などがAIを受けつけるとは思えない。じゃあ、あなた自身の文章力は? って問題になってくるし。文芸誌は文章力コミでその人の実力でしょう。


 公募で受けつけてもらえないものを書く意味はない気がしますが、単に読者からチヤホヤされたいとか、ロイヤルティで小金を稼ぎたいとかの動機なら、充分、達成できてしまう……。


 将来的にはカクヨムなどweb投稿サイトでも禁止される可能性は高いかなぁ。

 ただ現状、人間が書いたのか、AIが書いたのかを判別することは難しいんじゃないかと思います。短時間に大量に投稿する人はAIを疑われてしまうようになるかもしれません。とくに他サイトから大長編をコピペで運び中の人とか。


 AIが書いた文章じたいは、ノートにあげてるかたが何人かおられたので、僕も読んだことがあります。まあ、可もなく不可もなしというか。

 とびきり「スゴイ! こんなウィットに富んだ文体、初めて見た!」とかではないですが、とりあえず、ふつうに読める。

 むしろ、初心者のかたのセリフ書きにくらべたら、かなり達者と言えます。日本語のおかしな言いまわしとか誤字とかはないわけですから、ある意味、優秀なのかも。


 だからといって、それでなくても、web投稿サイトに投稿されてるのは、素人が書いた小説なわけです。著名人ですらないのに、AIが書いたものだと知ったら、誰が読みますか?


 というか、webで人気のラノベにしては、地の文が多かった。セリフが少ない。もっとセリフ多めじゃないと、読者がついてこない。


 何よりも、その作品を評価してくれる人が現れたとして、ほんとに「これ自分が書いたんだ」って誇れるんですかね?

 僕はAIが書いた話を誰かに褒められたとしても、ぜんぜん嬉しくないですが。

 まあ、そこは個人の自由と言うなら、やりたい人はやればいいです。


 いいんですけど、たぶん、AIはまだ人間の発想は超えられないんじゃないかと思うんですよね。


 しつこいようですが、僕はパンツァーです。頭のなかで練りながら書きます。


 書き手のみなさんにはあるあるじゃないでしょうか。書いてる最中、思ってもみなかった案が、急に降って湧いてくること。つまり、書く行為に刺激されて、イマジネーションが活性化する現象。

 ぜんぜん予定してなかったのに、おかげですごくいい出来になった、というような。


 AIにそれと同じことって起こるのかな?

 AIはたぶん、データベースにあるすべてのパターンをランダムに選びだし、つなぎあわせてストーリーを考えているんだと思います。それって、いくら書いても以前に誰かが書いたもののなかの二番煎じにすぎない。


 もちろん、人間が考えることにも限界があって、期せずしてほかの人と似たような内容になることはよくあります。というか、人間の考えられることは先人がすべてやってしまってるので、もはや新しいネタなんてないとも言われてます。


 なら、AIに書かせるのと変わりないじゃないかって?


 いやいや。だからこそ、発想の訓練は大事。インスピレーションは鍛えられるものだと僕は思ってます。さきほどの書き中に浮かぶ発想なんかもそうですが。

 僕がパンツァーでやってられるのは、長年、小説を書き続けたから。小さな閃き、大きな閃き、いろいろありますが、毎日使うからこそ、その力が強化されていったんだと断言します。


 AIがたくさんのデータを積みあげて学習してくように、人間の脳みそも鍛えることで、より磨かれていきます。それをAIに任せてしまうと、発想力は衰えていく……気がするんですけどね。


 便利だから、楽だからと機械に頼りすぎると、自分の能力を伸ばすチャンスを失うんじゃないですかねぇ?


 みなさんは、どう思いますか?

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