禁断の扉はいずこ?
すいません。今回は趣味丸出しの話題です。
エブリはそうでもなかったんですが、カクヨムではけっこうクトゥルフ神話を題材にしてホラーや、なんならファンタジーなどを書いてる人いますよね。
クトゥルフ神話っていうのは、20世紀初めごろにラブクラフトというアメリカの作家が仲間の作家たちと共通の設定を利用して書いた作品群や、それに出てくる邪神をモチーフにした、その後の神話体系のことです。まあ、最近はゲームなどにもなってるので、そっちから入りましたという人が多い。
じゃあ、クトゥルフ神話って怖いのか?
去年の夏、『納涼ホラー祭り』だったかなんだかというタイトルで自主企画をひらいてホラー作品を集めました。120作以上が集まりました。そのほとんどを読破。結果、ほんとに怖い作品や、よくできた上手い作品、小説として面白い作品などもありました。ほんのひとにぎりですけどね。
ただ、ホラーのいいところはヘタクソだからダメな作品かというと、そうではないってこと。ヘタクソでもそれなりにゾォっとしたり、オリジナリティのある面白い作品に出会ったりする。技術力だけでなく、ネタとして楽しめるジャンルだと思います。
そのうちで、クトゥルフ物ってどれだけ来たかというと、じつは一話だけだった。もしかしたら、クトゥルフと言ってないだけで、それを題材にしてるのかな? と匂わせるていどのものは他にもあったかもしれないけど、僕の記憶に残ってるのはその一話だけ。まあ、僕が心霊物が読みたいって書いたせいもあるんでしょうね。おおむね、心霊系のホラーでした。たまにシュール系とか、人間が怖いとか、サイコとか……。
あっ、違うんですよ。今回、このエピソードで書きたいのは、じつはラブについてです。
えっ? ホラーの話じゃないの? ないんです。
じゃあ、なんで納涼大会の話をしてるかと言うと、クトゥルフ神話って、怖いのかってとこなんですね。
クトゥルフ神話。エブリでも読んだことあるし、カクヨムではホラーのランキングにチョコチョコ載ってる。
ただ、クトゥルフ神話として書かれてるホラーを読むと、たいていは怖くない。小説として面白い話はあります。が、怖くない……。
僕が心霊物じゃないとゾッとしないタチだからですかねぇ?
大元のラブクラフトの全集だって、ほとんど全巻読んだけど、面白いけど怖くはないんですよね。
現実とかけ離れてるので、創作読み物というか、SFを楽しむ感覚でしか読めないので。コズミックホラーと呼ばれてますが、まさにそれかな。オカルトっぽいSFのお話って認識なんですね。もちろん、作品としては好きなんですよ?
なんか、たまにクトゥルフ神話を書き始めてから身のまわりで変なことが起こるようになったとか書かれてる書き手さんいますが、僕は今のところ、そういうのは皆無です。というより、ラッキーなぐうぜんがよく起こるという意味では、とても不思議な作品で、何かに祝福されているとすら思えるんですね。サブタイトルがぐうぜん、しりとりになってることに、三部まで書きおわってから気づいたとか。そのしりとりがバッチリなタイミングでバッチリな邪神にあてはまる、とか。まあいろいろ。
でも、今回書きたいのはそれじゃないw
ここまでホラーを語ってきて、ようやく恋愛の話です。
恋愛小説って、いかに障害を乗り越えていくかっていうのが王道じゃないですか。
恋愛小説って読まないんですが、ドラマのラブコメは見るようになった。昔も今もけっきょく、なんらかの形で二人の前に現れる障害をいかに克服し、ゴールにたどりつくか。それがテーマなんだなと思います。まったく異なる傾向の切ない恋愛物も、ユーモラスなラブコメも、必ず障害があって、最後はそれを超えていく。二人は結ばれる。そうじゃなければ、障害を乗り越えるためには愛しあっているけど別れるほかはなかったか、このどちらか。LALALANDなんか後者の傑作。何度見ても切ないですね。タイタニックもよかった。あれだけヒットしたのには理由があるんだと思いました。
障害があればあるほど、壁が高く厚く堅固であればあるほど、二人の愛の絆が試されて、見てるほうとしては面白い。
で、ここでタイトルの『禁断の扉』です。
かつてですね。高くて厚く超えられないハードルとして編みだされたのが、BLであり、 GLだったわけです。性別が同じ、相手はノーマル。叶わない。っていう前提からの逆転だったわけで。
ふつうの身分違いとか、不倫とかだけでは飽きたらない(おもに)女性が、ロマンチック度をさらに高めるために考えだしたジャンルだった。
ところが、世の中は今やセクシャルマイノリティに対して優しくなりました。以前ほどの偏見はないし、むしろ、それについてアレコレ書くと「あの人はマイノリティ差別者だ」となって、バッシングの嵐。炎上商法とか言われる。あんまり自由に表現できないジャンルになってしまった。
禁断の扉が禁断じゃなくなってしまったんですね。
正直言うと、僕がBL要素のある話をたくさん書いてたのは、それが禁断だったからです。禁断=倒錯=ロマンチックって思考の人間なので。
BLはもう禁断じゃなくなったので、今後はあんまり書かないだろうな。別の禁断の扉を模索しないと。
今のラブコメの主流の一つに妹物ってあるじゃないですか。大半は義妹だけど、なかには実の妹とか、実の姉とか。あれって近場で恋愛しようとする男のぐーたらな本能があの願望になってるんだろうなと思うわけですが、じつはBLとかGLとかと同じで、禁断の扉を求めてさまよった証なのかもしれないと、ふと思った。男の書き手や読者が手近に禁断を探すと、ああいう形になるのかなと。
不倫はもう古いしね。大御所がずいぶん前にたくさん書いてる。
あっ? クトゥルフがつながってこない?w
書き手それぞれ、たどりつく禁断の扉は違うと思うんですよ。
無意識でしたが、じつは僕の禁断の扉はクトゥルフだったと最近になってわかりました。五部あたりを書いてるころから、おぼろに思いついてはいたんですが。
というわけで、『八重咲探偵の怪奇譚』十三部。世界で一番、美しいクトゥルフ神話だと自負してます。
クトゥルフ神話ってふつう、邪悪、不気味、グロ、狂気などがモチーフじゃないですか。たまに這いよれニャル子さんみたいな使われかたもしますが。あれは邪神を可愛く使うのが目新しかったわけですね。
僕は美しく、美しく使わせてもらいました。十一部のラストなんかも好きです。あのクトゥルフが美しい!
もともと美と醜はとなりあってるときにこそ、もっともおたがいをひきたてあうと思ってるので。
けっきょく何が言いたいかと言うと、今の世の中、禁断の扉が次々こわされていく。身分や年齢差が充分ハードルだったころの少女マンガが羨ましい。
新しい扉を見つけるのは、ひと苦労ですねという話です。
そこを工夫して誰も到達したことのない新しい扉を発見したら、もしかしたら、ものすごい大ヒット作が生まれるかもしれません。
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