キャラクター造形、魅力的な悪役
仲よくなるって言うけど、じっさいにどうやるのかと言えば、ストーリーを書きながら、そのときどきで、もっともその人のやりそうなことをさせていくだけ。
前から僕は憑依型ですと言ってるんですが、そこですね。
なりきって書いてれば、自然にそうなるので。
その人の感覚で思考した結果、新しい一面が出てきても、それはそれでいい。
じつは自覚があって、子どものころから僕って役者の才能があるなと思ってました。たぶん、幼児のころからの妄想癖のせいなんですが、今の自分ではない別の誰かになりきる『ごっこ遊び』が得意だった。
これ言いだすと小説のコツじゃないよねと思ってたので、ずっと言わずにいたんですが、まあ、そういうことです。キャラクター造りには役者の才能があると便利。そんなの素養の問題なので、どうにもならないんですが。
なので、僕と同じ憑依型、感覚で書いてる人たちなら、みんなやってることかなと。
ところで、こういうキャラ造りなわけですから、長いつきあいの人(キャラクター)ほど、より詳細に性格の表裏、嗜好や感性までわかりあえる。
先日、とあるかたの近況ノートで、自己愛性パーソナリティー障害について書かれてました。
んん、なんぞやと思い、さっそくグーグルさんで調べてみると……あッ! 読めば読むほど……ああ、これは、ワレスさんではないですか!
症状がいちいち、あてはまる。そうか。僕のなかでもっとも長いつきあいで誰よりもよくわかってるあの人は自己愛性パーソナリティー障害だったのか……。
自己愛性パーソナリティー障害というのは、誇大性(自分を誇大評価)、賞賛への欲求、共感の欠如などの症例を持つ精神障害の一種。
ただ、社会生活はふつうに送れるようです。むしろ、得意な分野で成功している人もいるんだそう。
自分を特別な存在だと感じ、自尊心がとにかく高い。なので、自尊心を傷つけられることに過敏で、感情の起伏が激しく起こるのが、このとき。
ああ……まさにワレスさんだよ。あの人、プライドのかたまりだからなぁ。ふつうの人ならなんとも思わないようなことで、すぐカチンときて激昂するしw
ほかにも症例と一致する点が多々ある。かなり嫉妬深い。自分の目的のために他人を利用する。理想的な愛の妄想におぼれてたり、共感性の欠如がルーシサスとのあの重大な事件を起こした要因なわけで。
ついでに自己愛性人格障害の人の怒りかたという記事も読んでみたけど、もうまったくワレスさん。
自己愛性憤怒ですか。しますね。あの人。異常なくらい憤激して、まわりをビビらせるし、その一方で冷たく、しつこく、ネチネチと怒ることもある。よくすねたり、ふてくされたりもしてる。
もうほんと怖いくらい、あてはまる。
愛するキャラクターが病気だとは思ってませんでしたが、なんか納得。
まあ、彼の場合は不遇な幼少期が性格形成に大きくかかわってますけどね。
葛藤の多い心理描写を書くためのキャラクター造りは、こういう症状をひきおこしてしまうってことですかねぇ。自己愛の強い人だなとは思ってましたが……。
ちなみに先日、テレビで『タイタニック』を見たんですが、ヒロインの婚約者キャルのあまりのクズっぷりに、あぜんとしました。今の映画であのキャラクター性は問題になりそうと思ったんですが、よく考えると、あのキャラクター、もろに自己愛性パーソナリティー障害ですね。傲慢で金と身分をかさにきていばりちらし、平気で他人を陥れ、怒ると手がつけられなくなり女を叩く。自尊心を傷つけた相手をネチネチとしつこく追いこむ。自分の命のために幼児を利用、などなど。
こういう病名が知られる前から、この手の男は五万といたってことですね。
弁解させてもらえば、キャルはクズ中のクズ。最悪の外道でしたが、ワレスさんはそうではないです。ここまでの説明だけ聞けば、めっちゃイヤなヤツのようですが、ちゃんと魅力的なキャラと、エブリの選評ももらってる。
えーと、今回、個人的に自分のキャラがそうだったと知って驚いたってことしか書いてないので、ちょっとは他の書き手さんにも役立つことも書いときましょうか。
ワレスさんは主役にしてはひねくれてて、かなり複雑な性格。通常なら、この手のタイプは悪役として登場することが多いはず。キャルもそうだしね。
悪い(イヤな)人を魅力的に見せる方法ですね。
常套的なのは、その人物の弱みを読者に見せること。ワレスさんの場合は生い立ちの不幸をさんざん暴露してますね。また、この人、ふつうの人の百倍は不幸だから。
悪役が悪事を働くのは、じつは愛する人を守るためだったとか、そういうエピソードですね。
ただ、これ一人称だと主役が知るまで、読者に伝えられない。このへんのことについては、またの機会に詳しく書きます。
さて、魅力的な悪役に戻って。そんな定番な技、とっくに使い倒してるんだよと言われかねないので……ほかにはないかな?
ワレスさんはですね。ああいう病的なとこもあるんですが、本人もそれに苦しんでるし、それ以外の面では魅力的な要素をもともと持ってるんですよ。そこを見せる。
ふだん悪ぶってる人がちょっと優しいと、ドキッとしませんか? ワレスさんにはそういうとこがある。
根本的には正義や善なるものに憧れていて、人知れずそれを守ろうとする。なので、ほんとの根っからの悪人には立ち向かう派。
仲間思いで、心をゆるした相手にはけっこう、つくしてくれます。
そして、最大の特徴は、根源に愛を求めてるってことですよね。とても一途です。好きになった人のことは、ずっと愛してくれます。
愛する人が死んでしまうという運命を持ってるので、誰を愛してもすぐ死別してしまう。そのため、深い孤独感を背負っています。孤独だから、また人を愛したくなるし、でも相手を死なせたくないので愛を遠ざけようとする。
つまり、病的な部分が、なぜそうなったのか。こんな事情ならしかたないよねと読者に思ってもらえること。共感できるか、できないまでも行動原理を理解できるか、そこが重要。
ただですね。ワレスさんはとにかく読む人によって好き嫌いがものすごくハッキリわかれる人でした。耽美な男が好きな女性の書き手さんには、めっちゃ好かれましたね。エブリのころ。心情表現にしばしば酔うと言われた。
一方で嫌いな人には、とことんダメらしく、「このキャラクターには個人的な地雷があるので好きになれませんが、ストーリーは素晴らしかったです」と、わざわざコメントしてきた見ず知らずの人がいた。嫌いなら別にコメントしなくていいんですけどw
とにかく、個性的ってことなんでしょうね。
興味のある人は、『ジゴロ探偵の甘美な嘘シリーズ』https://kakuyomu.jp/works/1177354054889202602か、『墜落のシリウスシリーズ』https://kakuyomu.jp/works/1177354054890987852のどちらかをごらんください。シリウスのほうが、より尖ってます。BLだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます