ヒット作に学ぶ3(あのキス)
売れてる作品には、それなりのわけがあるんですよね。
以前、鬼滅の刃について書きました(じつは、現エピソードを書いたのはベルセルクの前。公開時期が前後しました)が、今回はドラマが原作、連動してコミカライズという『あのときキスしておけば』について。
皆さん、このドラマ、ご存じでしょうか?
鬼滅ほどメジャーじゃないので、知らないよって人も多いのでは?
僕は録画を一話観て、衝撃を受けました。
スゴイ! これぞ、ラブコメ。これぞ、ラノベ。いや、小説じゃないけど。
ラノベのラブコメのお手本でした。
なので、ヒット作と言えるかどうかはともかく、ちょっとこれについて書こうとw
まず、何を置いても感心したのは、タイトル。成功を約束されたタイトルですね。
こういうのがつけられないから、僕の作品はイマイチPV伸びないんだなぁ。あるていどは読まれる。いったん読みだすと、そのままシリーズの最新話まで、いっき読みする人も少なくない。つまり、読めばおもしろいので、ファンのかたは読んでくださるんだけど、新規の人に「読んでみるか」と思わせる力が弱い。
以前、このエッセイのなかでタイトルについて書いたとき、人の感心をひくような単語が入ってると目をひきやすいですねって書いたけど、自分ではそれができてない。まあ、流行りの長文タイトルがあまり好きではないので、そういうのつけてないですからね。
別に長文タイトルが悪いと言ってるわけじゃありません。長文タイトルはストーリーが想像できるって点はいいと思いますが、そのぶん、長ったらしくて、全文を記憶できるかっていうと、そうではありませんよね?
カクヨムのあの話が好きなんだよなって作品が、皆さんにもあるかと思います。その作品が長文タイトルだった場合、皆さんは一言一句まちがえず、ちゃんと言えるでしょうか?
「えーと、『おれの妹がエロすぎて、ガンガン迫ってくるんで困るんだが』だったっけ? それとも『俺のエロすぎる妹がガンガン迫ってきて、毎晩が天国と地獄な件』だったっけ?」みたいなね。
じっさいにはどっちでもかまわないんですよ。読者は読みたければお気に入り登録するんで。ただ、五年後、十年後、もう一度その作品を読んでみたいなと思ったとき、果たしてタイトルを思いだせるか?
読み専の人だと、場合によっては機種変などで前のパスワードが失われてしまって、新しくアカを作りなおすとか、ゲストログインで読むって人もいると思う。そうなると、前のお気に入り登録は役に立たないわけで。
「えーと、たしか妹がエロいんだよね。略して『エロ
この場合、作者がタグにエロ妹とつけてれば、検索でひっかかるかもしれない。それがしてなければ、読者はたぶん、作品にたどりつけない。
こういうところが、僕が長文タイトルを敬遠する理由の一つなんですね。やっぱりタイトルは一発で覚えられるものがいい。
でも、時流に乗りたいというとき、『あのときキスをしておけば』は、ほどよい長さ。
たとえ、「えーと、あのときキスをしていたら、だったかな? それとも、あのときキスをしていれば?」と迷ったとしても、あのときキス、まで入力すれば、グーグルさんは勝手に正しい候補を出してくれます。
まずは覚えやすさ、インパクトで〇
しかもこのタイトル、ほかにも二点、スゴイなと思うところがあるんですね。
一つはタイトルがちゃんと、内容にからんでること。
えーと、ざっくり概要を書きますと、冴えないスーパーの店員の桃地はあるとき強烈な個性の美女と出会う。じつは彼女は桃地が大ファンのマンガの作者だった。彼女のメシスタントをしているうちに、いいふんいきになり、キスを迫られる。「そんなつもりじゃないんで」と遠慮したところ、彼女は激昂。追い返される。が、その後、仲直り。二人で沖縄旅行に向かうも、飛行機が墜落し、彼女は死亡……。
このあと、男女の体入れ代わり系のドタバタが始まるわけですが、ここまで来たときにタイトルの意味が生きてくる。たぶん、今後の展開ではことあるごとに、「あのときキスをしておけば……」と、桃地は思う。タイトルが主役の心情を代弁してくれる。いいタイトルですね。
もう一点。ここがスゴイと思ったのは……最近のタイトルって、たいてい略すじゃないですか。さっきのエロ妹もそうだけど。そういう意味では、エロ妹もいいタイトルだなと思います。書きもしない例のために作ったタイトルは抜群にいい……orz
あっ、すいません。
要するに、略したときにもインパクトなんですね。タイトルに人目をひく単語を入れろと。
おれの妹がエロすぎて……の場合、当然、エロすぎる、妹、のあたり。なんですかねぇ。カクヨムでは妹とか幼なじみと言っとけば、とりあえず読まれる。そしてエロければ、なおよし。
たとえタイトル詐欺で、本文はそこまでエロすぎなくても読む人はいる。新規読者を呼びこむという点では成功。
そして覚えやすい略称のほうにも、エロと妹が残るわけで、悪くない。
『あのときキスをしておけば』は、当然、キスに視線が集まる。略しても、あのキス。キスが残る。ここまで考えてタイトルつければ、かなりの読者をひきつけることができるはず。
内容的にも、麻生久美子演じるヒロインが自由奔放で、気まぐれで、ワガママに見えて優しいとこもあり、ひじょうに魅力的でした。主人公が惹かれるのもよくわかる。しかも、ストーリーはハイスピードでサクサク進み、ハラハラドキドキ。気分も上がったり下がったり、飽きさせない。
テレビの底力を見たなぁと思う番組でした。
ドラマって、途中まではめちゃくちゃ面白いのに、最終回で急にしょうもなくなることが、わりとあるんですが、そうならないことを祈ります。
とにかく、ラブコメを書くとき、参考になるところが多かったです。
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