描写について

三大描写(前半)



 以前、ある知りあいの書き手さんと、こんな話になりました。


 描写って大きくわけて三種類ありますよね。情景描写、行動描写、心理描写の三つ。


 そして、そのかたは言われました。私は情景描写を書くのは好きだけど、どうやら心理描写が好きではないようです——と。


 よく近況ノートで、描写が苦手です。誰か描写の上手な書きかたを教えてくださいと、記されていることがあります。このとき、これを書かれてる人は、じっさいにどの描写のつもりなのかなと。


 たぶん、「描写の上手なコツ教えてください」と言われてる人は、この三種類の違いをあんまり意識されてないんじゃないですかねぇ?

 まとめて『描写』としか認識してないから苦手なのではないでしょうか?


 情景描写。読んで字のごとく、視点人物、または神視点なら作者が見る風景を中心に、目で見えるものの描写のことですね。キャラクターの外見的特徴なども、これにふくまれます。


 たぶん、多くの初心者の人が、描写が苦手です、と言われてるのは、この情景描写のことでしょう。


 風景を上手に描写するには、どれくらいハッキリとその景色を作者が思いうかべているか。あとは見えているものを表現する語彙力がどのていど豊富なのか、ですね。


 たとえば、現代ドラマなどで、現実に存在している都市が舞台なら、地名を明かし、写真などを見たまま説明していけばいいので簡単です。

 これからちょっと、とある有名なものについて描写してみます。



 岸辺に立つ緑青色の巨人の女が、遠い母国をながめている。手にかかげているのは聖火なのだろうか?

 イバラの冠にもきっと意味があるのだろう。そう言えば、はいているのはサンダルだという話だ。ひきちぎられた鎖と足かせをつけ、何者にも従属されない自由を表しているのだとか。

 テレビや写真ではよく見るが、じっさいに目の前にすると、意外と小さい。もっと空を圧するほど巨大なんだと思っていた。



 はい。わかりましたよね?

 そうです。自由の女神です。こういう誰でも知っていて、写真なども出まわっているものは描写を伝えやすい。


 自分がじっさいに目で見ることのできるものは、表現も簡単です。

 難しくなるのは、現実には存在しないもの、または作者自身がよくわからないものや行ったことのない場所を書くときじゃないでしょうか?


 とくに現実に存在するものの場合、いいかげんなこと書くと、「それ違いますよ」って読者に指摘されますからw

 まあ、今ならネットでいくらでも検索できるし、ストリートビューなども利用すれば、あるていどほんとっぽく描くことはできます。


 これがファンタジーになると、自分のなかで想像して、この世には存在しないものを描写しなければならないことも、ままありますね。

 そのときは、とにかく微に入り細に入り、ことこまかにそのを設定するしかないです。


 たとえば、もふもふの神獣と言っても、大きいのか小さいのか、ツノがあるのか羽があるのか、ウサギっぽいのか、はたまたゾウっぽいのか、毛並みは長毛か短毛か、白いのか黒いのか、瞳は青いのか金色なのか、などなど、あるわけです。


 これはもう自分で妄想してください。ファンタジー世界は現実にないことをいくらでも妄想していいので、想像力豊かな人にとっては現実が舞台であるより、かえってラクです。とにかく好きほうだい書けばいい。ただし、一回書いたことがのちに違ってこないように、メモなどはしっかりしといてくださいね。


 さて、初心者の人が、「今までちゃんと書けてなかったので丁寧な描写を書いていくように努力します!」と言われたとき、たいていおちいる罠が行動描写です。


 行動描写。つまり、キャラクターが何をどうして、どんなことを言ったか。それを言うとき笑ったか、泣いたか。

 バトルシーンなんかは、もろに行動描写。


 なぜか、初心者が丁寧に書こうとすると、まずになるのは行動描写です。


 何人か初級から中級になりかかったころの書き手さんの話を読んだとき、この点がすごく気になりました。

 このころの人はキャラクターの一挙手一投足をとにかく延々と書きたがる。


 とくにエブリで読んだ人のなかで、主役が朝起きて、目覚まし止めて、カーテンひらいて、朝日まぶしいからの制服に着替えて階下におりて顔を洗い歯をみがき、朝食はトースト。さあ、出かけるぞ、いやその前にトイレだ。ちゃんと大もして、じゃあ今度こそほんとに、「お母さん、行ってくるよ」からの通学路…………いや、まだクツ紐も結ぶんだったな。長いですよね。この間、まったく事件は起こりません。一人の少年の朝の支度がずうっと、ずうっと続くんです。文字数にしたら、たぶん2000〜3000字くらいだったかな? 学校につくまでに。

 で、物語じたいは学校についてから美少女に出会うことで始まる現代ファンタジーでした。


 正直、学校につくまでの描写、全部いらないんです。なんか丁寧に書こうとするあまり、行動のすべてを省略することができない呪いにかかる時期ってあるんですよね。


 それ、僕にもありました。中学の終わりごろかな? 誰が何をやったか、どこまで書けばいいのかわからなくて。


 なんか長くなってきたので、次回に続きます。

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