ベラベラ書く方法5 上げるか下げるか



 ベラベラ書く方法にはあまり関係ないんですが、前回のプロッターかパンツァーかの続きです。

 慣れでベラベラ書けるようになるまでは、プロットはあったほうがいいですよ、と。

 なので、今回はプロットのコツです。


 よく近況ノートを見ると、もっと面白い小説を書くために、文章力をあげたいです、と書かれてることがあります。

 でも、面白い小説にとって大事なのは、文章力よりも、じつは構成力なんですよね。この話、これまでにもエッセイで何度も書いたんですが。


 上げるか、下げるか。

 今回のタイトルですね。


 プロットと言えば起承転結。フィルムアート社さんは三幕物とか、ほかにも猫がなんとかかんとかとか、いろいろ教えてくださるらしい。

 ありがたいですね。無料で読めるし。


 僕はフィルムアート社さんの本、読んだことありません。

 でも、自分なりに気をつけてることはある。

 そのなかで、誰にでも簡単にできて、しかも効果が大きいんじゃないかと思う方法が、コレ。


 上げるか、下げるか。

 だから、なんなんだー! 早く言え?

 はいはい。今、説明しますよぉー。

 簡単すぎて、文字数稼げないんじゃないかと心配してるんです……。


 さて、あなたの書きたいその話はハッピーエンドですか? アンハッピーエンドですか?

 これによって、上げるのか下げるのか決まります。

 ハッピーエンドなら下げましょう。とことん下げましょう。反対にアンハッピーエンドなら上げましょう。めいっぱい上げて上げて、上げまくりましょう。


 なんのことかって?

 主人公の境遇です。または感情。小説のなかでの立ち位置ですね。


 つまり、山場の作りかたなわけです。

 ハッピーエンドの場合、幸福に終わる直前が山です。ラストシーンが最高に幸せであると読者が感じるために、そこにいたる寸前まで不幸のどん底にあったほうがいい。


 グラフで想像してみてください。出だしは平凡か人並みより幸せな方が、その後の不幸が映えますね。物語の起の部分。

 次に承のあたりで、やや雲行きが怪しくなり、だんだんグラフが下降していく。ゆるやかに、なだらかに。

 読者がちょっと可哀想だなぁと思ったあたりで転です。いっきに下降します。もうこれ以上は下げられないってとこまで、とことん不幸にします。つらくて苦しくて、主人公は泣きます。なんなら死を考えます。グラフはついに底辺。深い谷底を描きます。マリアナ海溝より深く……。


 で、この直後になんらかの大事件が起きて、問題はすべて解決。グラフは急上昇。マックス右肩上がりなわけです。


 要するに、振り幅ですよね。幸と不幸、プラスとマイナス、喜びと悲しみ、快と不快——そのギャップが激しいほど、読者の感情も強くゆさぶられます。


 アンハッピーエンドで終わる場合は、この逆ですね。とにかく上げて上げて、いいことや楽しいことばっかり起きて、幸せの絶頂に至ったときに、とつぜんの不幸に見舞われる。


 もちろん、どちらの場合でも伏線は張っといてください。急に奇跡的に救われるにしろ、突き落とされるにしろ、なんの脈絡もなくとうとつにそうなると『ご都合主義』と呼ばれますので。


 この方法だと、ストーリー的にも起伏ができるし、読者がキャラクターに感情移入しやすくなるという利点もある。やっぱり共感できるキャラクター、大事ですから。


 昨今は、とくにラノベにおいて、ほのぼのとか日常系とか、なんにも起こらないのがいいみたいな風潮があるらしいですね。ざまぁの反動なんじゃないかと、知りあいさんが言われてましたが。

 通勤通学などのスキマ時間でサラッと読むには、なんの起伏もない平和な話のほうが心穏やかにすんでいいんだそうで。


 まあ、そういう話の需要もあるでしょうね。でも、世の中、大ヒットしてるのは、鬼滅ですよね。幸福な日々からの不幸の連続……なんやかんや言って、人間、ドラマチックな話が好きなんです。


 むむぅ。やっぱり短かったか。1600字。

 もうちょっと何か書かないと!


 僕がプロットが得意なのには理由があります。

 えーと、まだ初級から中級者に移るくらいのときに、視点でつまずいて書けなくなった時期がありました。ストーリーは浮かんでくるのに技術的な問題で書けない……文章が進まない……。

 人生で一度だけのスランプでした。


 そのときに『最初から完璧なものを書こうとしてもムリ。習作と割り切って、とにかく書こう』とひらきなおったんですね。で、どうせ練習用に書くなら、今まで書いたことのないものに一作ずつ挑戦してみよう、と思いたったわけです。


 書いたことのないタイプのキャラクターを毎回出してみたり、複雑なプロットにしてみたり。


 プロットはですね。過去に起きた事件、現在進行形で起こっている事件を並行(交互)で書き、一見、別々の事件のように見えていながら、最後にはその二つがクロスする、というもの。しかも、その上で人物たちの恋愛関係も進めていく。


 これのおかげで、複雑な構成を組むのが得意になりました。


 上達したいなら、自分になんらかの実験的な縛りを課して書いてみてはいかがでしょうか?

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