ベラベラ書く方法2 短編長編それぞれの描写量



 3、短編は長編より書きやすい?


 1と2に関連してですね。

 みなさんは書くときに、長編派ですか? 短編派ですか?

 長編のほうが書きやすいのか、短編のほうが書きやすいのか。


 新着近況ノートを見たとき、「短編は難しくて書けない」とか、その逆を書かれてる人がけっこういるんですよね。

 これはどっち向きかによりけりですね。たしかに、人によって書きやすい長さってあります。


 僕は昔は長編派でした。長いのはいくらでも長く書けるけど、短編は苦手だった。と言って、まったく書けないわけじゃなく、まれに思いつくと80〜150枚くらいの話を書くこともあったんだけど。

 今にして思うと、短い話はキャラクターにこだわらず、ストーリーを中心に書きたい話だった。キャラクター中心で書いてるやつは、とにかく長くなる。


 はい。答え、出ましたね。

 長編派の人が短編書くときは、キャラを動かさないよう注意する。あくまでストーリーだけを追う。変にキャラの個性出さない。そのときの主役は世の中に生きてるどこにでもいそうな人であれば充分。変に思い入れがあると勝手に動きだすので、過度の感情移入しない。とにかくプロットどおり動かす。


 長編が書けないって人は、その逆なんだと思う。もっとキャラクターの声に耳を傾け、世界中で一人だけの個性をつけてあげよう。とくにラノベなら、「現実にこんな人いないよな」ってくらい個性的でもオッケー。

 えっ? ラノベ読んだことないのでは? ないですよ。でも、たぶん、そうだから。マンガのキャラって個性的じゃないですか。ラノベにもそれは必要な要素なんだろうと思う。


 あとはそれぞれの長さに適した描写量ですね。

 2でショートショートを短編の長さで書きなおすと言いましたが、これを調整できるのって、ストーリーの過程を増やす、文章量を増やす、この二点で長さをひきのばしてるわけです。


 ショートショートはあらすじです。物語の骨だけ。骨格標本。余分な肉はいっさいなし。

 短編はそれにうっすら肉をつけた状態。とってもスレンダー。なんなら、ガリガリでも。

 長編はさらに肉をつけ、ふくよかな美人。グラマーな巨乳美女。もしくはデブデブの場合もある。デブデブはネット小説としては展開遅くて読む人を飽きさせる可能性もありますが、紙媒体では好まれます。


 前述のように僕は以前、長編派でしたが、今は自由自在に長くも短くもできます。肉付けの量を調整できるようになったからです。まあ、長編の場合は描写量だけじゃなく、キャラを動かすことも必要になってきますが。


 これができるようになったのは、以前、エブリで、みんなで作る百物語ってイベントがあって、文字数制限が1200っていう短さだったからなんですね。これ、じっさいに書くとわかりますが、ちょっとでも肉をつけるとすぐ超えます。いかに上手に骨だけ残して、短いなかに起承転結をつけるか。骨を見極める目が大事。


 これを50作くらい書いたので、骨をつかむことが楽になりました。物語として最重要で削ることのできない部分と、削ってもストーリーには影響ない部分ですね。


 ちょっと前に近況に「1000字以内の短編か、10000字以上の長編かどちらかしか書けない。ちょうどあいだの短編が書けない」と書かれてる人がいたんです。それってつまり、骨書きはできるんだけど、そこに短編に適した量の描写をつけることができてないってことなんですよね。

 じっさいに書かれてた文字数は、たしかそのくらいだったんですが、うろ覚えなので、もしかしたら長編のほうが3万字だったか、5万字だったかもしれない。あるいは10万字か。


 その人の作品を読んだわけじゃないので、じっさいにどのていどの描写で書かれてるのかはわかりませんが、具体的に長編用の描写量の半分から三分の一ていどを目安にすると、短編でほどよい長さになるかも。というのは、風景描写、心理描写などの一段落での量のことですが。


 そして、いらないエピソードは削る。

「ええ? どのエピソードも大事なんだけど……」「キャラクターらしさが失われる」

 いえ、そんなことはないです。それはキャラに肩入れしてるから。なくてもストーリーがまとまるなら、それはいらないエピソードです。エピソードごと外しましょう。とくに文字数制限のあるときには。


 んんー、長編を短編にするためのコツは書けるけど、短編を長編にするコツは書けないなぁw 自分がそっち派じゃなかったから。


 以前に小説講座的なエッセイに載せてた文章を、以下にそのまま持ってきます。描写量の具体的な例文です。


 長編、中編、短編、ショートショート——書きたい長さに見あった量で書きこみましょう。


 たとえばですが、



 そして、伝説の湖にたどりついた。

 海とも川とも空とも違う、神秘的なブルーの水をたたえた湖。

 その恐ろしく澄んだ深い青をながめていると、なぜだか胸がしめつけられるように痛む。



 というこの文章。先日、妄コン青用に書いた、『血青』という話のなかで描いた湖の描写です。物語的に重要な場所の描写なので、これでも、ちょっと多めに背景描写しています。

 もしも上記の例文を、



 その湖は四方をすべて山脈にかこまれていた。

 薄紫にかすむ山並みが何層にもかさなりあい、壮大な輪を描く。大地の女神が両腕で、そっと抱えるように優しく湖を包みこんでいる。

 山脈から、ゆるゆると霧が流れこみ、視界が乳白色に沈む。その霧を一陣の風が、さっと吹きはらうと、深い山々と霧に守られた湖が、私の前にその神秘的な姿を現した。

 なんという青だろうか。

 海とも川とも空とも違う摩訶不思議なブルーが、鮮烈に目にとびこんでくる。

 見つめていると、なぜかしら、胸の奥がしめつけられるように痛む。



 と、こういうふうに書くと、とにかく、やたら長いですよね。妄コン作品のなかで、これだけ背景の描写を続けられると、「いいから、さきに進んでくれ」と思いますよね?


 長編用の描写量だからですね。

 長編は丁寧に、短編はザックリ描写するといいです。

 逆に言えば、長さにあわせて描写量を変えられると、長短、自由自在に文字数をあやつれます。

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