第61話こうなったらなかなか曲がらない
「こういう機会、なかなか無いですからねっ!!言いたい事全て洗いざらい言わせて頂きますよっ
!!」
「ははっ、それもそうだなっ!!俺も言わせてもらおうかっ!」
「そう来なくっちゃっ!!お姉さんっ!枝豆っ!あとコーラっ!!」
「個人経営の居酒屋だったらこんなアルコール頼まない客は売り上げにならないと間違いなく煙たがられるなっ!」
俺が追加注文をするのを見て北川の元夫はそんな事を言うのだが、言った側から鳥軟骨の唐揚げとコーラを追加注文する。
そして二人はコーラを飲みながら二人とも気が済むまで愚痴り始めるのだが、愚痴を吐けども吐けども終わる気配を見せず、そして気が付けば俺にとって北川の元夫は昔から付き合いのある親友の様な関係になっていたのであった。
◆
「どうしたの?」
「いや、何も」
一旦私達は隣の県にあるそこそこ大きな遊園地を目指して高速道路へ入り、そのパーキングエリアでトイレもかねて休憩を取っていた。
そして、そこでふと見た元夫の表情はどこか穏やかで、久しぶりに見たその表情を見た私はつい昔の様に声をかけてしまいハッとするも、元夫からは棘の無い昔の声音で何でもないと帰ってくる。
「ただ、そうだな、今のお前を見て安心したのと、より一層高城君の評価が上がったとだけ言っておこう」
「………どういう意味?」
「男同士の絆だな」
「何よそれ」
「なんで今更良き母親ぶるんだよ。何もかもが遅すぎるだろう」
「え?今何か言った?」
「いや何も」
「変なの」
いや、変なのは私も同じだろう。
そして元夫と私の変な雰囲気は当然真奈美は気付いている。
だから時たま私達二人を仲良くさせようと真奈美は気を使ってくるのだ。
まだ幼い真奈美にそのような気遣いをさせてしまってるという事が、申し訳なさでいっぱいになる。
恐らく真奈美にはこういう所も違和感として感じてしまっているのであろう。
しっかりしなければならない。
その点で言えば元夫は、まるで離婚していない頃の様に真奈美の前では演じてくれているのでその強さや真奈美に対する愛情を深く感じる事ができる。
そんな夫には感謝してもし足りない程だ。
そして私たちは真奈美がソフトクリームを食べ終えるのを待ち、車へと乗りこむ。
「ほら真奈美、身体が冷えるから温かいお茶飲があるから飲みなさい」
「さむくないもん」
「でもソフトクリーム食べたでしょう?」
「さむくないもん」
ソフトクリームを食べて寒い筈であるのだが、真奈美は何故だか寒くないと言い張る。
こうなったらなかなか曲がらないのが真奈美だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます