第9話 妖精さんと放課後
俺は保健室を後にして教室に戻った。
その後はいつもどうり授業を受け放課後になった。
「んじゃな、愁。お前の母ちゃんによろしく言っておいてくれ」
「あぁ。そういえば柊にも会いたがってたから今度一緒に行こうぜ」
「あぁ、了解だ!」
そう言い柊は及川さんと帰っていった。
一応昔からの知り合いなのでうちの家庭内事情は柊は知っている。
まぁ、母親は少し前に人間ドックで癌が見つかったのだ。ステージは2だった為早期発見出来たのだが薬の副作用で体が弱くなってしまったから入院しているのだ。
「さて、迎えに行ってから病院行かないとな」
俺はそう呟き保健室に向かった。
ガラガラ〜
「こんちはー」
「あら?目覚ましくん。お迎えかしら?」
「ぐっ…はい。そうです」
また目覚ましくんって言われた。なに?もう決定なの?
「さっきお父さんから連絡があって今駐車場に居るらしいから早く向かいなさいね」
「分かりました、ありがとうございます」
そう。龍吾さんは毎日妖精さんの送り迎えをしているらしい。この前は会議が長引いてしまった為迎えに来れず、妖精さん一人で帰ることになってしまい、あんな事になったらしい。
「ほら、帰るぞ?」
俺が耳元で話すと彼女は寝ぼけながらも立ち上がりフラフラと俺の後を着いてきた。
「まるでアヒルの子供ねぇ〜。微笑ま〜…」
やめてくれ。俺も少しそう思っていたんだから!
「…げこっげこっ」
それはカエルですよ花園さん…
何とか妖精さんを車に詰め込み終了した。
「ありがとう。神原君のおかげで助かるよ」
「いえ、気にしないでください」
「あはは。どうする?送って行くが…」
「いえ、今日は寄るところがありますので」
「そうか。では、また明日よろしく頼む」
「はい、さよなら」
そして、龍吾さんは帰っていった。
「さて、行くか」
そして俺は母親のいる病院に向かった。
「来たぞ〜」
「あら、愁。いらっしゃい」
「おう、体調はどうだ?」
「大丈夫。順調に良くなってるわ」
「そか、なんか足りないものとかあるか?」
俺がそう言うと秋穂は少し考え込んだ。
「なんだよ?どうした?」
「…足りないもの。あるわ」
「ん?何か無くなったのか?」
「それはね…貴方の浮ついた話よ」
「…は?」
「考えても見なさい。病院でただ寝て過ごす毎日。もう飽きたの、娯楽が欲しいの!特に恋バナ!私にはそれが足りない…!」
そう言い手をわなわなと震えさせる母親
「頭…大丈夫か?」
俺はすごく心配になった。
確かに見た目は若いがもう40は過ぎてるんだぞ?それなのに何を言ってるんだ?
「なによ!元はと言えば愁に彼女が居ないから面白くないんじゃない!早く作りなさいよ。そして、会わせなさい!」
「なんで逆ギレしてんだよ…俺にはそんな人居ないよ。期待しても無駄無駄」
まぁ、今は妖精さんの面倒を見ているが、あの子とはそういう感じじゃ無いからな。
「何よ〜つまらないわね〜…」
「馬鹿なこと言ってないで早く良くなってくれよ?」
「はいはい。家の方は大丈夫なの?汚くしてないでしょうね…?」
「あぁ、大丈夫だよ。綺麗にしてる」
基本は自分の部屋にいる為汚れることは無いのだ。
「それならいいけど…何かあったらすぐに相談するのよ?」
「はいよ」
そんな会話をしながら今日1日が終わった。
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