第8話 妖精さんとお昼ご飯
そして、時間は流れお昼休みになった。
「さて、愁一緒に食べようぜ〜」
「悪い柊。俺はちょっと用事があってな。今日はパスだ」
俺がそう言うと案の定柊は理由を聞いてきた。
「あれ?どうかしたのか?」
流石に妖精さんに会いに行くなんて言えないしな…ここはあの人を使おう。
「あぁ。尚ちゃんに少し用事あってな、職員室に行ってくる」
「へぇ〜、なんかやらかしたのか?」
「なわけないだろ、ちょっと家の事でな」
俺がそう言うと柊は納得したのか快く送り出してくれた。
少し嘘をつくのは心が痛むがここはしょうがない。
「さて…保健室はっと」
そう言い俺は保健室に着き扉を開けるとそこには保健の先生が居た。
見た目は20代後半に見えるが実は35歳独身。見た目はかなりの美人だが実は、お酒大好きで毎日二日酔いで学校に来ることで有名な『
「あら?どうしたの?どこか怪我でもした?」
「いえ、妖精さんじゃなく花園さんに用がありまして」
そう言うと坂口先生はベットを指さし…
「彼女なら寝てるわよ?っていうかどこでその情報を手に入れたの?」
流石に怪しいよな…と思い俺は事情を話すことにした。
「なるほどね…ご両親からの許可が出ているなら私は何も言わないけど…彼女、寝たら中々起きないわよ?」
どんだけだよ…睡眠の権化だな。
と思いつつ答えた。
「大丈夫です」
そう言い俺はスヤスヤと心地よさそうに眠る妖精さんに近づき耳元で「花園さーん。起きてー」と言った。
「流石にそれじゃ起きないわ…よ?」
俺に声をかけられた花園はうっすらと目を開けて毛伸びをした。まるで猫だ。
「あふぅ…おふぁようごじゃいまふ。」
「あぁ。おはよう、寝てる所悪いが少し用があってな。大丈夫か?」
妖精さんは可愛らしく「うむぅ。大丈夫れす」と答えた。
「…とりあえず、これ飲め」
俺は事前に自販機で買ってきていたキンキンに冷えている水を手渡した。
それを可愛く両手で持ちコクコクと飲んだ妖精さんはちゃんと覚醒してくたようだ。
「あれ?神原さん?どうしました?」
「実はな…」
俺は今朝あったことを話した。
「ってことがあってな。何とかならないか相談に来たんだ」
「なるほど…分かりました!私の方で何とかしてみます!」
そう妖精さんが言い放った瞬間どこからか可愛らしい音が聞こえてきた。
くぅぅぅぅ〜…
「あー…昼だもんな」
「あぅ…すみません。お腹すきました…」
そう、顔を真っ赤にしながら両手でお腹を抑える妖精さんだった。
「ご飯を食べましょう!神原さんはもう食べました?」
「いや、食べてないよだから俺も腹減ってる」
「なら、ちょうど良かったです!こちらをどうぞ!」
そう言い青い箱型の弁当箱を渡された。
「これは?」
「お弁当ですよ?」
「それは分かるが…何故?」
「それはですね…私の趣味だからです!」
「…趣味?」
「はい!人に食べてもらうのが好きなんです!けど…私はすぐに寝ちゃうので中々友達と一緒に食べれないのですよ…」
と少し悲しそうに言った妖精さんはいきなり元気に喋りだした。
「だから!私は神原さんに食べて欲しいのです!神原さんは私のお世話係ですからね。そのお礼とでも考えて下さい!」
まぁ、一応筋は通っているしなんだかんだで菓子パン買えなかったからちょうどいいが…
「でも、いいのか?貰っても」
「はい!是非食べてください!」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
そんな会話を聞いていた坂口先生はここで食べ良いと言ってくれたので一緒に食べることにした。
相変わらず料理は得意なのかとても美味しかった。
「ご馳走様。すごく美味しかった」
「えへへ、お粗末さまです!」
妖精さんは嬉しそうに笑っていた。
そして、満腹になったからか彼女はすぐに眠ってしまった。
「…寝るのは早いな」
俺が少し驚いていると坂口先生が話しかけてきた。
「貴方…凄いわね。花園さんはいつもご飯を食べずにずっと寝ているから心配だったけど、よく起こせたわね」
何故か凄い驚いた感じだったので疑問に思い聞いてみた。
「それがよく分からないんですけど、そんなに驚く事なんですか?」
「そりゃそうよ。だって揺すっても何しても起きないのよ?どうして、こんなに眠ってしまうのか分からなくてお手上げ状態だったのに…」
「そうなんですか…」
流石にここまでとは思って無かったため純粋に驚いてしまった。
「まぁ、これからは目覚ましくんが居るから大丈夫そうね!」
「目覚ましくんって俺の事ですか?」
「勿論よ、これからも定期的に来てね?目覚ましくん?」
不名誉なあだ名を付けられてしまった昼休みだった。
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