第65話:回復術師は稽古をつける①
あれからそのまま二度寝することなく、昼を迎えた。
ギルドにちょっとした用事があり、俺とリーナ、リリアは冒険者ギルドを訪れている。
もちろんシロもテクテクとついてきている。
一枚の書面に俺のサインと、リリアのサインが並ぶ。
「おめでとうございます。これでリリアさんは正式に『レジェンド』のパーティメンバーです!」
いつもの受付嬢が笑顔で祝福してくれた。
今更にはなるが、ついさっきまでリリアはまだ仮加入という形で、正式なパーティメンバーではなかった。
「これでリリアも正式にパーティメンバーですね!」
「ええ、これからもよろしくね」
紙切れ一枚に大した価値はないのだが、こうして手続きをすることで本当に仲間になったのだという実感が湧いてくる。
「改めてよろしくな。じゃあ、ついでに何か依頼を受けるか」
「良いですね〜! 私、掲示板見てきますね!」
「見方わかるのか?」
「私を誰だと思ってるんですか? ユージは心配しなくて大丈夫です」
リーナだから心配してるんだが……?
リーナは最強の付与魔法の使い手。
説明できるかどうかはともかく、自分の中で完璧な理論が組めていなければできない。
だから、本質的にはバカだというわけではないはずなのだが、一緒に生活しているとこういう事務的なことは苦手そうな気がしていたのだが……。
……まあ、まずはやらせてみればいいか。
「そうか、ならいいんだが」
「リリアを連れていくので完璧です!」
「え、私⁉︎ 別に構わないけど……」
「おお、なら安心だな」
——と、こんな感じで盛り上がっていたのだが……。
「ユージ様、依頼の件なのですが……」
受付嬢が申し訳なさそうに言ってきた。
「うん?」
「ギルドから発注できる依頼が激減しているんです。単価も下がってしまいまして、正直なところあまり美味しい依頼がなく……」
「え、そうなのか?」
「ええ。魔物自体の数が激減しているんです。ギルドとしても冒険者の方にはお仕事を斡旋したいところではあるのですが……」
「もともと不安定な仕事ではあるから、それは仕方ないことだとは思うんだが……なんで急に魔物が激減したのかは分かってるのか?」
もともとは一人で何十件も受けられるほどには大量の依頼があり、供給過多だと思うことも多かった。
これほど極端な変化が起こる背景には何かがあるはずなんだが……。
「おそらくですが、魔王によるものかと思われます」
「魔王は倒したぞ?」
「ええ、そうなのですが……ユージ様たちのお話によれば、魔王はこの辺一帯の魔力を吸収し、自分の魔力として使っていたと聞きます。そしてユージ様もそれ以上に魔力を集められたのだとか……」
「その通りだ」
「魔物にとって、魔力はいわば栄養です」
「……あっ」
と言うことは、つまり——
「俺と魔王のせいで魔物が減っちゃったってことなのか?」
「その通りです」
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