第二章 冒険が始まった

004 戦いがはじまった。

「タイキさん、少しそこに隠れてください。」



指さす先には、洞窟どうくつがある。昔から暗闇は嫌いなのだが、仕方ない。また丸焼きにされてたまったものではない。



「隠れろっていってもな…。」



洞窟からは思いっきり外が見える。もう少し奥に進めば良いのだろうが、残念ながら暗闇を突き進む勇気は持ち合わせていない。



―――スターダスト・シュートッ!



突然、外から戦闘音が聞こえてきた。振り返ると、ミレイが魔法を展開している。敵の数は見える限りで数十人はいるだろう。



―――隠れとけって言われたけど…、これはさすがに。



正直、魔法は何も知らない。冒険者を目指していたが、俺が目指していたのはな冒険者だ。ただし、俺にはこの杖がある。ミレイの言葉を信じるならば、どんな魔法でも使えるはずだ。



―――「スターダスト・シュート」って言ってたよな…。



どの程度の規模なのか判然としないが、ミレイが使った魔法なので、この状況には適切な魔法なのだろう。



―――ばれないように、小声で、小声で…。



「スターダスト・シュート…。」



―――ズキュンッ!ドカンッ!バコーンッ!



目の前に信じられない光景が広がっている。辺り一面が崩壊している。跡形もないとはこのことだろう。その中心で、ミレイが魔法陣の中で震えていた。



「あ…その、ご、ごめんなさい。」



ひとまず全力で謝る。こんなことになるとは思っていなかった。



「どどどどどどどういう魔法を使ったんですかっ!」



「いや、スターダスト・シュートって聞こえたから…その、それをそのまま。」



「まさか、魔力量全開で撃ちました?」



「…魔力量って調整できるんですか?」



ミレイが静止画になってしまった。全く動かない。ほっぺをむにゅむにゅしてからかってみたものの、静止画状態がしばらく続く。



「…なんでもないです。私が悪いです。調整しときます。」



諦められてしまった気がする。杖を差し出すと、ミレイは杖の下にある部品を回しはじめた。どうやらあれが魔力量を調整するものらしい。覚えておこう。



「これで大丈夫です。あと、スターダスト系の魔法は危険すぎるので、普通の魔法もちゃんと覚えてください。」



それには全面的に賛成である。戦いの度にほとんど再生不可能な土地を生成してしまっては、誰が危険な存在かわからない。



「ところでさっきの奴らって…?」



「あぁ、あれは奴らの手先。魔法でつくり出された存在で、この道を通る者を襲うようにプログラムされていたみたい。…あ、ほら、白い鳥見せたでしょ。同じような魔法ね。」



道を通るだけで襲われるとは、恐ろしすぎる。俺の地面ライフはどこへ行ってしまったのか。



「まあ、あの程度の奴らは問題ないんだけど…。」



―――深刻な表情のところ申し訳ないのですが…。



「あの…、普通の魔法ってどういうのですか…?」



もはや呆れられることもなかった。むしろとても優しく教えていただけた。逆に恐ろしい。

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