第5話 山口のアピール(編集)

教室に向かうとクラスでは有名な話になっていた。

何がといえば当然、俺と秋田がやけに仲良く登校している事が、だ。

それが気に食わないのか俺に詰め寄って来る陽キャ。


俺はため息交じりで陽キャを見ていた。

何も言い返せない。

煩いから、だ。


「調子に乗るな。お前は所詮はモブなんだから」


「いや.....モブではある.....けど。.....確かに」


「はあ?じゃあ何で一緒に登校してんだよ。俺達から秋田さんを取るなって」


いやいや、お前は好きなのかよ秋田の事。

俺は静かに心の中で突っ込みながらもこれ以上は口出しはしなかった。

面倒臭い事になりかねない。

そう思っていた時だ。


いきなり秋田がこっちにやって来た。

それからそのリア充を睨んで、富岡君。いい加減にして、と言う。

クラスは仲良くするのがクラスだから。だからいつまでも仲間意識を持たないのなら私が許さないわ、とも言葉を発した。

俺は見開く。


「でも秋田さん.....」


「何か文句でもあるのかしら。文句あるなら文章に纏めて提出して頂戴。私が片っ端から読んであげるわ」


「.....分かったよ」


面倒臭いと思ったのかリア充は手を引いた。

そして陽キャは俺を1回だけ睨んでから去って行く。

俺はその姿を見て、フンッと言う秋田を見る。

秋田は、大丈夫かしら、と聞いてくる。

俺は、ああ.....まあ助かった、と答えた。


「.....何でこうもクラスって纏まらないのかしらね。いい加減にしてほしい感じだわ」


「スクールカーストがあるのが学校だ。これが現実なんだと思うぞ」


「スクールカースト制なんて滅べばいいのに」


「.....そうはいかないだろうな。ハハハ。まあ俺はモブらしく生きるよ」


秋田は目線だけ動かして俺を見てくる。

それから、モブだけど貴方は活躍出来るわよ、と説得してくる。

俺はその事に、え?.....あ。ああ、と頷く。

相変わらずだな、と思う。


そして秋田は女子の群れに戻って行った。

そうしていると.....今度は教室のドアがガラッと開く。

そして山口がヒョコッと顔を見せた。

それから辺りをキョロキョロしてから俺を見つけてパアッと明るくなる。


「先輩!やっと見つけました」


「おま!?山口!?」


「さっきの話が中途半端に切れていたので.....また話しに来ましたよ」


「いや10分休みに話に来たら時間無いだろ。何を考えてんだ」


教室中が、何事?、的な目線で俺を見てくる。

俺はその事に溜息を吐いて廊下に出た。

山口もしっかり付いてくる。

それから山口に向く。


「で、話の続きってのはなんだ?」


「あ。はい。先輩。今度.....一緒に映画に行きませんか?楽しそうな映画があるんですけど.....」


「いや.....俺、人込み苦手なんだけど.....あまりそういうのは苦手だ」


「え?.....あ、そうでしたね.....確かに。.....じゃあその、映画の代わり今度、先輩の家に行って良いですか」


「無茶苦茶だな。何でだよ」


すると。

だって.....私.....、と俯いて呟く山口。

俺は首を傾げながらも話の切れ目が見つからないので、分かった、と返事をした。

丁度、妹と遊べるかもしれないから、な。

そして俺は、本当ですか!?、と言う山口に向いた。

それから笑みを浮かべる。


「来ても良い。.....その代わり、妹と遊んでやってくれないか」


「.....それぐらいなら全然!本当に良いんですか!?」


「お前が来たいって言ったからな。断れないし昔の話も出来るかなって」


「嬉しいです!有難う御座います!」


ニコニコする山口。

見れば見るほどに小学生から中学になりたての少女の様だ。

愛らしいというかロリコンにはキツイだろうな、これ。


身長もさることながら本当に小学生高学年の様に見えるから。

しかし何でこんなに俺に関わって来るのだこの少女。

意味が分からない。


「じゃあ約束ですよ。絶対に」


「.....ああ。分かった分かった」


「じゃあ帰りますね。アハハ」


と嬉しそうに手を振ってから帰って行った山口。

俺はその姿を見ながら.....顎に手を添える。

何故あまり関りが無かったのに、と思いそのまま教室に戻ると。

秋田が寄って来た。

それから、話は終わったの?、と聞いてくる。


「山口らしかったよ。相変わらず」


「そうなのね。昔話も良いわよね。色々と会話が弾むわ」


「.....だな。確かに」


それは確かに同意する。

昔話が色々出来て.....しかも気分も.....ああでも嫌な記憶しかないな。

俺は少しだけ溜息を吐きながらも。

山口と一緒だった記憶を思い出してみた。


「.....でも嫌な事ばかりじゃ無いかもな」


「.....?.....どうしたの?」


「.....全部お前のお陰って事だ。秋田」


「.....???」


秋田は、え?、と首を傾げる。

そんな秋田を柔和に見ながら.....俺は窓から外の景色を見た。

それから.....こういのも悪く無いのかもな、と思う。

そして席に戻った。

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