第231話 オークの襲撃
「えっ⁉️」
俺は探知魔法で視た光景に思わず声を上げてしまう。
「どうしたヒイロ?」
「前方2キロの場所で大量の魔物が⋯⋯人を襲っている」
しかもこの馬車はミリアリス姫の物だ。
兵士が魔物相手に奮戦しているが、如何せん数が違い過ぎる。
魔物はおおよそ200匹ほどだが、兵士は30人しかいない。しかも兵士は1人、また1人と力尽きこのままだと全滅してしまう。
「ミリアリス姫が危ない! 俺は先行するから後から来てくれ!」
「お、おう! わかった!」
「【
俺は魔法を唱え、急ぎ空を飛んでミリアリス姫の所へ向かう。
ミリアリスside
こ、怖い⋯⋯どうしてこんなことになってしまったの?
シズリアの街で暗殺者に襲われ、そして今度は魔物の襲撃を受けるなんて。
「ミリアリス姫を迎えに着た兵士達はどこだ⁉️」
「いえ、そのような者達はどこにも見当たりません!」
護衛隊長と兵士の声が辺りに木霊する。
私の護衛を増やすため、追加の兵士がこちらにいると言われ来てみれば、いたのは大勢の魔物だった。
「我らをここに案内した兵士はどこにいった⁉️」
「そ、それが先程から探しているのですが見当たりません!」
「おのれ! 我らは嵌められたということか!」
兵士達は突然の魔物の襲撃に対して、ろくな陣形を取れず、兵士達は次々と地面にひれ伏していく。
「ミリアリス様、このままここに留まるのは危険です。多少荒っぽくなりますが、馬車で奴らの包囲網を突破致します」
「わ、わかりました」
私は恐怖に震えながらも、何とか護衛隊長の問いかけに答えた。
馬車の窓から外を見ると魔物だらけ、そして兵士達は30人ほどいたが今は半分もいないかもしれない。
私は先程の護衛隊長の言葉で、ここにいる者達だけでは魔物を倒すことができないと悟った。もし私がリズリットお姉さまだったら、少しは皆さんのお役に立てたのかな。
自分が持つ紋章の非力さに情けなくなり、涙が出てくる。
たぶん役立たずだから私はルーンフォレスト王国に人質として行くことになったのだろう。そんな嫌な考えが頭を過る。
「ミリアリス様! 行きますぞ!」
しかし時は私に嘆く時間さえも与えてくれない。
馬車は護衛隊長の声で急発進をすると、その勢いで体が後ろに持っていかれそうになる。
「怖い⋯⋯怖い⋯⋯」
私に出きることはいつも震えて縮こまるだけ⋯⋯昨日の噴水広場の時も、仮面の騎士さんと対峙した時も⋯⋯でも私には勇気も力もない。このまま生きようが死のうが時間が過ぎるのを待つことしかできない。
ガタッ!
「いたっ!」
馬車が突然大きな揺れと共に急ブレーキをして、私は頭を椅子にぶつけてしまう。
「終わったの?」
先程までは魔物や兵士達の声が聞こえていたが、今は何も聞こえない。
一瞬助かったと思い始めたけど、冷静になって考えるともし魔物の包囲網を抜けることができたなら、急に馬車を止める必要はない。
そして外からガタガタと音が聞こえ、ゆっくりと馬車のドアが開き、中を覗いてきたのは⋯⋯護衛隊長の方だった。
「ま、魔物から逃げることができたのでしょうか⋯⋯」
けれど護衛隊長から出た言葉は、私の望むものではなかった。
「ミ、ミリアリス様⋯⋯お逃げ⋯⋯下さい⋯⋯」
そう言って護衛隊長はその場に倒れてしまう。
そして護衛隊長の背後から現れたのは、茶色い毛で豚の顔を持つ人型の魔物⋯⋯オークだった。
「いやっ!」
オークが2匹馬車の中に侵入して来て、私の両手を掴み、思わず悲鳴を上げてしまう。
「い、嫌だ⋯⋯来ないで下さい」
しかし私の願いも虚しく、2匹のオークの手によって馬車の外へ引きずり出されてしまい、地面に手を着く。
に、逃げなきゃ⋯⋯このままだと殺されてしまう。
私は立ち上がろうと足に力を入れるが、上手く動かすことができず、地面に転んでしまう。
そして私が倒れている間にオークは手を振りかぶる。
殺される!
私は殴られると思い目を閉じてしまうが、顔や体に痛みはなく、あるのは両手を掴まれた感触だけ。おそるおそる目を開けてみると2匹のオークはそれぞれ私の右手と左手を押さえつけている。
「は、離してください!」
私は両手に力を入れて、必死に逃げようとするが、振りほどくことができない。
「な、何⁉️ 私をどうする気なの⁉️」
勇気を振り絞ってオークに問いかけても、人では理解できない声が返ってくるだけ。
「だ、だれか⋯⋯だれか助けて」
私の声が辺りに響いたことが原因なのか、この2体のオーク以外の誰かがこちらに近づいてくる。
た、助かったの⋯⋯。
けれど私の願いとは裏腹に、2匹のオークよりさらに大きなオークが私を見下ろしている。
「きゃぁぁぁっ!」
私はその巨大なオークに驚き、大きな声で悲鳴を上げてしまう。
わ、私をどうするき⁉️
あれこれ嫌な考えが思い浮かべている時に、オークのある部分が大きくなっているのがわかった。
「も、もしかして⋯⋯」
ゴブリンやオークは異種交配をするって何かの本で読んだことがある。ま、まさか私を犯すつもり!
巨大なオークは薄気味悪い笑みを浮かべながら、私のドレスの胸元に手をやり、勢いよく脱がしてきた。
「いやっ! やめてください!」
しかし今ここにいるのは意識がない護衛隊長だけ。私を助ける人なんて誰もいない。
オークは私のドレスの上半身を脱がしたことで気分を良くしたのか、男性の部分がさらに大きくなる。
あれを私の中に入れるの⁉️ そんなことをされたら死んじゃう!
「嫌だ! 嫌だよ!」
私は今まで出したことがないくらい大きな声で叫ぶ。
誰か⋯⋯誰かお願い! 嫌だよこんなところでオークに襲われるなんて。
けれどオークの手は止まらず、このままドレスの下半身を脱がそうとしている。
護衛の兵士もいない、そして大勢のオークに包囲されているこの絶望的な中、私は昨日助けてくれた仮面の騎士さんのことが頭に過った。
しかし昨日仮面の騎士さんが私を助けてくれたのは、偶々噴水広場に居合わせただけだと言っていた。この場所でまた私を助けてくれるなんてそんな都合の良いことはあるわけがない。
けれど⋯⋯けれどそれでも私はその名前を呼ばずにはいられない。
「助けて! 仮面の騎士さん!」
「承知した」
どこからか声がすると共に、目の前にいた3匹のオークの首が地面に落ちた。
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