第146話 グレイのハーレム?

 メルビアの城門前にて


 俺はメルビア城の前まで転移すると、ルーナとティアが出迎えてくれた。


「仮面の騎士様お帰りなさいませ」

「ご無事で何よりです」


 2人に会い、俺は戦場での怒りを静めるため、一度深呼吸をする。

 今は仮面をつけてるからいいが外した時に、鬼の形相で会うわけにいかない。


「ティア様⋯⋯そちらの仮面をつけた男は?」


 城の門番を勤めている兵士が王女であるティアに、俺のことを聞いてくる。

 まあ素顔を見せない怪しい仮面の男がくれば、怪しむのは当然だろう。むしろ止めない方が職務怠慢だ。


「この方は私とディレイト王の命の恩人です。失礼のないように」

「そ、それは失礼いたしました! どうぞお通り下さい」


 兵士は慌てた様子で俺達を城の中へと案内する。



「ティア⋯⋯そんなこと言わなくてもいいぞ」


 城の通路を歩いている時に、俺は先程のティアの言葉について注意する。

 だってそうしないと会う兵士達に「あ、あの人はディレイト王の命を救ったお方だ! 全員整列して出迎えろ」みたいなことをやられたらたまったもんじゃない。


「いいえ⋯⋯メルビア王家としてお世話になった方を無下にすることなどできません⋯⋯それに将来私と結婚して王族となる方ですから」


 最後の方は良く聞こえなかったが、ティアとしては譲る気がないらしい。


「ティアさん⋯⋯今の言葉は聞き捨てならないですよ」

「何がでしょうか? ルーナさんの仰っている意味がわかりません」


 何故だか知らないな2人が一触即発の状態になっている。


「ほら2人とも、速くリアナとグレイに合わせてくれ」

「お兄ちゃんは少し静かにしてて」

「ティアさんが今言った言葉は、ヒイロくんの奴隷として見過ごすことができません」


 ティアが何を言ったのかわからないが、どうやら2人の間にある火花を俺は消すことができなかった。

 

「あ~っ! ヒイロさん」


 聞き覚えのある声がしたので後ろを振り向くと、マーサちゃんが俺の胸に向かって飛び込んで来たので、手を広げ抱き止める。


「無事で良かったです」


 そして俺の身を案じながら、グリグリと頭を押し付けてくるため、女の子特有の甘い匂いがして、ドキドキする。


「リアナさんとグレイさんの所に案内しますね⋯⋯けど先にそのお姿を解除するならこちらが私達の休憩室になっていますからどうぞ」


 そしてマーサちゃんに手を取られ、俺は右奥にある部屋へと連れていかれる。


「ルーナさん⋯⋯私達も行きましょうか」

「そうですね」


 ヒイロをマーサに取られた様を見て、ルーナとティアは言い争いをやめ、共に休憩室へと向かった。



 トントン


 俺は認識阻害魔法を解き、ヒイロとしてリアナとグレイが寝ている部屋へと向かいドアをノックする。


「どうぞ」


 今のはラナさんだ⋯⋯声が返って来たので、俺はドアノブを回し中へ入る。

 部屋の中にはラナさんとベットに寝ているリアナとグレイがいた。


「変態ロリ好きエロ男遅いじゃないの! あなた、リアナがどんな目にあったかわかっているの!」


 ラナさんは仮面の騎士の正体が俺だと知らないから、リアナが大変な時に今頃ノコノコ来た俺のことが許せないみたいだ。


「ごめん⋯⋯今そこでルーナ達から聞いたよ⋯⋯皆も大変だったね」

「私達は良いのよ、何もしていないし⋯⋯でもリアナとグレイは⋯⋯」


 気絶して横たわっている2人を見て、ラナさんは神妙な顔をする。


「う⋯⋯うぅ⋯⋯」


 まるでヒイロが来るの待っていたのように、リアナが目を覚ました。


「はっ! ヒイロちゃんは! 魔物達は! 王都は大丈夫なの!」

「大丈夫だリアナ⋯⋯俺はここにいるし、王都はマグナスさんやルドルフさんの活躍もあって護ることが出来たよ」


 俺はリアナの肩を掴み、落ち着かせるように優しく抱きしめる。


「そっかあ⋯⋯よかったよ」


 リアナはあんな目に会わされたにもかかわらず、王都の心配をしている。自分達が助かるため、魔物に差し出されたのに⋯⋯俺には到底真似できない行為だ。これがリアナの良いところでもあるが⋯⋯。


「こ、ここは⋯⋯」


 リアナの隣のベットで寝ていたグレイも、どうやら目が覚めたようだ。


「うお! ヒイロがいる! リアナちゃんもいる!」


 寝起き1番で俺とリアナの顔を見て驚いていたが、すぐに安堵の息を吐き、いつも通り少しヘラヘラした表情になる。そんなグレイを見て俺が話しかける前に、ラナさん、ルーナ、マーサちゃんが前に行き、グレイに話かける。


「「「ごめんなさい!」」」


 3人は深々と頭を下げ、グレイに謝罪の言葉を伝える。


「ティア王女から全て聞いたわ⋯⋯あなたが命をかけて魔物の包囲網を突破して、仮面の騎士様を連れてきてくれたことを」

「それなのに私グレイさんに最低って言っちゃって」

「私は頬を思いっきり叩いてしまって申し訳ありませんでした」


 ラナさん達に謝られて、グレイがどう対処すればいいのか、戸惑っている。


 こんな姿を見るの珍しい。いつもおちゃらけているから礼を言われることになれていないのかな。

 これどうすりゃいいんだ? とアイコンタクトで送って来たから、俺は知らん、自分で何とかしろと返しておいた。


「あ~⋯⋯ひょっとして皆俺に惚れちゃった? ラナちゃん俺のハーレムに入る?」

「死になさい」


 ラナさんは問答無用の断り方だな。あんな事を言われたらメンタルがズタズタになりそうだ。


「マーサちゃんはどう? 今なら1番に入れるよ」

「う~ん⋯⋯私には将来を決めた人がいるのでごめんなさい」


 たぶんそれって俺のことだよな? いつの間にかマーサちゃんの策略に嵌まって婚約してそうで怖いな。


「ルーナちゃん⋯⋯」

「ごめんなさい⋯⋯悪いとは思っていますがそれはちょっと⋯⋯」


 グレイが言葉を言い切る前に拒む。これも結構精神にくるぞ。


「ひでえよみんな⋯⋯」


 たぶんこの空気に堪えられなくなって、わざとハーレムとか言い出したが、完膚なきまでに断られて、グレイは涙目になっている。


「グレイくん⋯⋯私からも言わせて」


 リアナが傷心のグレイに向かって話しかける。


「あなたがヒイ⋯⋯じゃなくて仮面の騎士さんを連れてきてくれたから、私は命を救われました。本当にありがとう」


 いつもどこか天真爛漫なリアナは影を潜め、普段とは違う普通の話し方でグレイに礼を言う。

 こんなリアナは初めて見た。それだけ今回の件はグレイに感謝しているのだろう。


「そ、それじゃあリアナちゃんは俺のハーレムに⋯⋯」

「それは無理かな、かな」


 リアナによって、さらに奈落の底に落とされ、グレイは言葉も発することもできずその場に崩れ落ちるのであった。


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