第43話虫と息子くんの果てなきバトル

 ママは大昔虫網を片手に虫かごを肩にかけて野原を駆け回っていたのですが、息子くんは全く虫の類は苦手。

 テレビで観る昆虫や公園の蝶々などは平気だったのでママもその時まで気にしたことは無かったのですが、息子くんを連れて海に出かけた時、小さな原っぱに居た小さなショウリョウバッタに息子くん悲鳴をあげて泣いてしまいました。

 息子くん三歳、普段は好奇心が勝つのにママの指先に乗る程度のショウリョウバッタに身動きも取れなくなってしまいました。

 初めて間近に見たショウリョウバッタはテレビで知っていた可愛いものではなかったらしく、ママも苦笑しながら息子くんを抱いて移動。

 ショウリョウバッタは狭い草むらに潜り込んでいきました。

 そんな息子くん小学校にあがってからクワガタやカブトムシを飼いたいと言い出し、毎日毎日ママを説得にあくせくしていました。

 しかし、ママは息子くんが虫を怖がることも忘れていないので無責任に飼うことは却下しつづけていました。

 そうして数年前の夏前に息子くんを連れて選挙に行ってきました。道中に選挙についての仕組みの話などをしながら実際に何をするのかを見るだけですが、暑い日汗をかきながら二人で歩いて行き帰宅する頃にはクタクタ。

 そんな状態のママと息子くんが帰宅した玄関先で見たのは行き倒れていた雌のカブトムシ。

 ひっくり返っていたので取り敢えず先に家に入り息子くんに「ちょっと見ておいで」と促し確認するとまだ息がある様子。

 我が家の周りはコンクリートしかなくカブトムシが生きれる環境ですらないため、息子くんに「すぐ飼育ケースと土、カブトムシの餌と霧吹き、それと中に入れる木を買っといで」と。

 ママはその間にカブトムシを保護、走って買ってきた息子くんに手伝ってもらいとにかく環境を作って暫く様子を見ていました。

 行き倒れのカブトムシは息子くんが毎日毎日手を尽くして暫くは元気を取り戻していましたが夏の半ば暑い暑い日に動かなくなりました。

 息子くんはそれ以降カブトムシやクワガタが飼いたいとは言わなくなりましたが時折二人で写真を見返しています。

 それはそれとして、未だに虫は苦手な息子くん。ショウリョウバッタは相変わらず怖いらしいです。

 

 

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