第19話初詣

 今でこそ真冬に並んで除夜の鐘聞きながら参拝なんていう無理は体が許さなくなってしまったけど、息子くん小さいうちに三回程行ったことがありました。今日はそれより少し前、まだ三歳になった頃の昼間に行った初詣の思い出。

 別に信心深いわけではなく、単にコンクリートの中にいると不意に緑や土に触れたくなり、普段から散歩がてら参拝する神社があり息子くんもいつの間にか見様見真似でアレコレするようになっていたんです。

 参道は真ん中は歩かないとか門をくぐる前に一礼とか。

 その一礼をしていたまだ小さな息子くん、それを指差しで笑いながら二人連れの若い男女がそのまま門を抜けようとした一瞬、女性のハイヒールのカカトが隙間に挟まり転倒。

 お連れの男性はそれを見て笑っていたら隣にいた息子くん、颯爽と女性に手を差し伸べ「だいじょうぶ?いたくない?」これには先程まで笑って息子くん見ていたお嬢さんが顔を真っ赤にして「大丈夫、ありがとう。君優しいね」と、そうして門の向こうでバツが悪そうな連れの男性に鋭い視線を。

 息子くん空気読みません。「ママ、おねえさんたっちするの手伝って」とママを召喚。ママも勿論手を貸し起き上がらせてスカートについた砂を払ってそうして、お嬢さんに礼を言われながらもう一度一礼して息子くんと門をくぐりました。お嬢さんも一礼して脇にいた連れの男性を一切無視してスタスタと颯爽と歩く姿はちょっと小粋でした。

 息子くん、お賽銭持って入れるのも投げるのはダメだってそっと入れてからカランカランと鈴を鳴らし「〇〇が欲しい、あ!でもアレも欲しいし、こづかいもいっぱい欲しい!」と欲張り放題。

 息子くん、最後まで格好つけてたら良いのだけど毎年隣で聞く願い事はかなり物欲に満ち満ちてます。

 

 

 

 

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