第86話ー② みんな揃って
――20分後。
「たった一人を相手にしているだけなのに……」
「まさかの完敗ですか」
悔しそうな顔でそう言うキリヤと優香。
「ははは! 俺もまだまだ現役には負けないぞ」
ニヤリと笑いながらそういう暁。すると、
「あれ、もう始めていたんだ」
「頑張って急いで終わらせたのになあ」
「しおん君が何度も取り直しになるからですよ。なんでトークであんなに噛み噛みなんですかあ。ありえないですう」
「い、いいだろ! これでもたくさん練習したんだって!!」
そう言って真一としおん、凛子がグラウンドにやってきた。
「元気そうだな、3人共!!」
暁はそう言って微笑んだ。
「先生は相変わらずみたいだね」
真一がそう言うと、暁は「あはは」と照れながら言った。
「と言っても、俺らもだけどな」
「そうそう。しおん君は、相変わらずへっぽこですもんねえ☆」
凛子が口元を押さえて笑いながらそう言うと、
「うっせえ! 凛子だって、たまにダンスに振り間違えるだろ!!」
凛子を睨みながらしおんはそう言った。
「アイドルなんで、そこは笑顔でカバーです☆」
そう言ってウインクをする凛子。
「くっそぉ……アイドルって得だな」
しおんは悔しそうな顔でそう言った。
「あはは! りんりんもしおん君も相変わらず、
「
声を合わせてそう言うしおんと凛子。
「うふふ。相変わらずみたいでよかった」
そう言って微笑むマリア。
「マリアちゃんも相変わらずの美少女ですねえ☆ うちの事務所と契約して、アイドルなりませんかあ?」
「な、ならないからっ!」
「あはは、どこかで聞いたことのある台詞ですなあ。まあ、でもですよ! マリアちゃんは大学を出たら、研究所で働くんですもんね!」
結衣がそう言うと、マリアは嬉しそうな顔をして「うん」と言った。
「そうなんですねえ。夢に向かって、今は勉強を頑張りたいと――素敵なことじゃないですかあ☆」
「えへへ。ありがとう、凛子」
そう言いながら、マリアは微笑んだ。
「うふふ。あ! そういえば、織姫ちゃんはどうですかあ?」
唐突に凛子はそう言いながら織姫の方を見る。
「あ、私は……」
そう言いながらもじもじとする織姫は、狂司の顔を見て頷いてから、
「私も少しずつ、自分のやりたいことを始めていますよ。だから私も頑張ります」
と微笑んだ。
「そうなんですねえ。良かった」
凛子は優しい笑顔でそう言った。
「ああ、そうでした! 『はちみつとジンジャー』のお2人にぜひ合ってほしい友人がいて――ほら、実来?」
そう言って実来を真一たちの前に押し出す織姫。
「ちょ、ちょっと織姫!?」
目の前に現れた実来に、ぽかんとする真一としおん。
「あ、あの……えっと」
「彼女は如月未来。お2人の初めてのライブを観てから、ファンになったそうです」
織姫が自慢げにそう言うと、
「お、織姫ええええ!!」
顔を真っ赤にして涙目になる実来。
「ファン!? マ、マジ――本当ですか? 嬉しいです!!」
しおんは笑顔でそう言った。
「いつも音楽、聴かせていただいております……えっと、真一君の芯があって、透き通るような歌声に惚れました……」
「え、僕の歌声に……?」
驚いた顔をする真一。
「はい」
「ははは! よかったな、真一! やっぱりお前の歌声だって、みんなを幸せにできるってことだろ?」
そう言って真一と肩を組むしおん。
「あ……あの。えっと……こちらこそ、いつも聴いてくれてありがとう。えっと……これからもそう言ってもらえるような歌を届けるように、僕たちは頑張るから……応援、よろしくお願いします」
恥ずかしそうにそう言う真一。
「はい! もちろんです!! どこまでもついていきます!!」
鼻息を荒くしながらそう言う実来。
「よかったですね、実来」
織姫が嬉しそうな顔をしてそう言うと、
「織姫、ありがとう~。もう私、明日死んでもいいよ~」
実来は涙を拭うしぐさをしながらそう言った。
「え!? それはダメです! ちゃんと寿命まで生きなくては! 生きたくても生きられなかった子供たちに申し訳――」
「冗談なのに、マジレスしないでよ~!」
おろおろする織姫に、ジト目でそう返す実来。
「え、じょ、冗談!? わかりにくい……」
そう言って肩を落とす織姫。
そんな織姫と実来のやり取りを楽しそうに見つめる生徒と卒業生たち。
仲間の仲間もやっぱり仲間ってことなのかな。みんな、楽しそうで何よりだ――
暁は生徒たちを見て、そんなことを思っていた。
それから暁は生徒たちの方を見ると、
「じゃあ、全員揃ったな? ここからが本当の闘いの始まりだ!!」
笑顔でそう言った。
「あれ、お母さんは?」
首を傾げる水蓮。
「それがな……まだかかりそうだから、先に始めていて。だってさ」
「そっかあ、じゃあしょうがないね」
「大丈夫、きっと間に合うよ」
「うん!」
そして、暁たちは全員集合でやる最後のレクリエーションを始めるのだった。
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