第77話ー⑤ 物語はハッピーエンドがいいよね!
地元の最寄り駅から家に向かって歩くいろはといろはの母。
「そういえば、まゆお君とは最後に何を話していたの?」
母はニヤニヤといろはにそう尋ねた。
「内緒! まゆおとアタシの2人だけの秘密なんだから」
「そっか。でも、すごく幸せそうな顔しているね、いろは」
「うん! アタシ、幸せだよ! きっとそれはこれまでもね」
「そう」
そう言って優しく微笑むいろはの母。
「……アタシには大切な人が待っていてくれて、アタシを救ってくれた最高の友人たちがいて、尊敬する大好きな先生がいて、そしてお父さんとお母さんがいる。アタシはこれまでも、きっとこれからも幸せなんだよ」
いろははそう言って、優しく微笑んだのだった。
「……いろはが私の娘でよかったな」
「どうしたの、急に?」
母の唐突な言葉に、いろははそう言って首を傾げた。
「ただ本当にそう思ったの。昔言ったよね、子は宝だって。あの時に言った意味とは違って、今は本当にそう思ってる。いろはが私の娘でいてくれて本当に良かった。だから、ありがとう」
母はいろはの顔をまっすぐに見て、笑顔でそう言った。そして、
「お母さん……アタシもお母さんの娘でよかった。だからこれからもお母さんの娘でいるね! アタシを生んでくれてありがとう、お母さん!!」
いろはは満面の笑みでそう言ったのだった。
すると、いろはの腹から「ぐぅ」と言う音がして、いろはと母は声を上げて笑い出す。
それからいろはは自分のお腹を擦り、
「そういえばお腹空いたね。お昼、食べる時間もなかったし……帰ったら、すぐ夕飯の準備にするの?」
母にそう尋ねた。
「まあね。それに、もうすぐお父さんも仕事から帰って来る時間だしね」
母はそう言って腕時計に視線を向ける。
「じゃあ、今日からアタシも手伝うよ!」
「あら、もしかして花嫁修業?」
「ま、まあそんな感じ!!」
恥ずかしがりながら、いろははそう言った。
「そっか。わかった! じゃあ、これからはいろんなことを教えてあげる!」
「ありがと、お母さん!!」
それからいろはたちは他愛ない話をしながら、自宅へと向かったのだった。
アタシは白雪姫にはなれなかったけど、今はすっごく幸せなんだ。きっと白雪姫がいたら、今のアタシに嫉妬しちゃうかもしれないね。
だから今あるこの幸せをもう手放さないようにしよう……だって、幸せであることが当たり前じゃないってことはもうわかったからさ。
みんなが守ってくれたアタシの物語。それはここで一度、エピローグにする。だって、物語はハッピーエンドがいいでしょ? そして、また新たな物語を今ここから始めるんだ――!
「ありがとう……そして、これからもよろしく!」
いろはは空に向かって、そう呟いた。
「いろは? 置いていくよ~」
「待って、待って!!」
そしていろははそう言って、一歩を踏み出す。また新たな物語を始めていく為に――。
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