第55話ー① キリヤたちの休日
食堂にて――。
「先生、おはようございます」
「ああ、おはよう。まゆお! 結衣と織姫もおはよう」
暁は笑顔でまゆおたちにそう伝える。
「おはようございますです、先生!」
「お、おはよう……ございます」
元気のいい結衣とは反対に織姫はもじもじとそう答えた。
織姫が最近ちゃんと挨拶を返すようになって、俺はすごく嬉しいよ――!
そんなことを思いながら、織姫を見て「うんうん」と1人頷く暁。
「なんだかわかりませんが、ものすごく不愉快ですね」
織姫は頷く暁に睨みながらそう言った。
「あはは! あ、そういえば、他のみんなは?」
「りんりんはリモート収録で部屋だと思います!」
「真一君としおん君は、いつものように歌に練習をしているみたいですよ。あ、でも真一君は後から食堂に来るって言っていました!」
「そうか!」
真一もやっぱりキリヤに会うのは楽しみなんだな――。
暁はそんなことを思いつつ、にやにやしながら食事の並ぶカウンターに向かって歩き出したのだった。
朝食を終え、暁はまゆおと結衣と共に食堂でキリヤたちの到着を待っていた。
「織姫ちゃんも会っていけばいいのになあ」
結衣は残念そうな顔でそう呟く。
「まあ織姫も人見知りというか、な」
「そうですねえ。本当は優しくて、賢くてかわいいのに……きっと優香殿とも仲良くなれると思うのですよ」
「ああ、そうだな」
暁が笑顔でそう答えると、そのタイミングで暁のスマホが振動する。
「お、キリヤたちが着いたみたいだ」
「思ったより早く着いたんですね。僕、真一君を呼んできます」
「おう、頼んだよ」
まゆおは真一を呼ぶために食堂を離れ、暁はエントランスゲートに向かった。
屋外――。
暁がゲートに向かっていると、ゲートの外に人影が見つける。そこには少しだけ伸びた黒い髪を風になびかせて微笑む青年と今までは後ろで括っていたブロンド色の髪を下ろした女性がいた。
「あ、いたいた! おーい! キリヤ、優香待たせたな!!」
暁が手を振りながらそう言うと、
「先生!!」
キリヤはそう言いながら大きく手を振り返した。
「じゃあ、これ」
そして暁はキリヤたちにゲストパスを渡した。
「ありがとう!」
「おう!! それにしても久しぶりだな、キリヤ! 優香も!!」
暁は笑いながらそう言った。
「そうですね、お久しぶりです、先生」
優香は微笑みながら、暁にそう告げる。
「確かにここへ来るのは1年半ぶりくらいか。先生は相変わらずみたいで安心したよ!」
キリヤが笑顔でそう言うと、
「そうか? でもそういう2人は雰囲気が変わったな! 大人っぽくなったていうか……」
暁はそう言いながら、2人をまじまじと見つめた。
「僕はそんなに変わったつもりはないんだけどな、あはは」
暁に見つめられて、少し恥ずかしそうに答えるキリヤ。
「そっか! それで、仕事は順調か?」
「ま、まあ。そこそこに」
キリヤは苦笑いをしながら、そう答えた。
何か不安なことがあるんだろうな……この間の優香の一件も気になるし、あとで聞いてみよう――。
暁はそんなことを思ってから、
「そうか。それならよかったよ! じゃあ、立ち話もなんだから、食堂に行こうか! まゆおたちが待ってるからさ!」
笑顔でそう告げた。
「そうなんだ!」
「みんな、2人に会えるって楽しみにしているんだぞ?」
「それは嬉しいね、優香!」
「ええ、そうですね」
そして暁たちは食堂へ向かって歩き出す。
「そういえば、キリヤたちが卒業した後にまた新しい生徒が増えてな。少し癖は強いけど、なかなか面白い3人だから、仲良くしてやってくれ」
「うん。きっと先生の生徒だもん。良い子たちに決まっているよ」
キリヤはそう言って笑っていた。
しおんや凛子、織姫がキリヤたちとあったらどんな反応をするんだろうな。楽しみだ――
暁はそんなことを考えながら、食堂へ向かった。
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