第377話 百合百合不可侵条約
「わ、私の膝枕……されてみる気はないか?」
「……いや、早くないか?」
「瑞希の作戦に負けたよ」
「これは喜んでいいのか判断に困るな」
「少なくとも僕は敗北よりも太ももを優先したね」
「まあ、喜んでおくか」
そう言いながら微笑む彼女に、あれだけ時間をかけた
こまるに関しては『その手があったか』と言わんばかりに、今起きたことをスマホのメモアプリに書き込んでいる。
さすがの唯斗でも、即決でこまるの細い太ももにまで頭を乗せるほど貪欲ではないつもりだが。
「瑞希、それ私の役目なのに〜」
「悪いな、
「やっぱり瑞希もしたかったんだね〜?」
「そ、それは……あんなに幸せそうな顔されたら、自分で確かめてみたくなるもんだろ?」
「ふふふ、それで感想は〜?」
「……まあ、悪くはないな」
悪くはないなんて言いながらも、彼の頭をポンポンと撫でる瑞希の表情はどこか嬉しそうだ。
しかし、そんな様子を不満そうに見つめていた人物がいる。彼女はこっそりと背後に回り込むと、瑞希の弱点である背中を人差し指でツーっと撫で上げた。
「ひゃっ?! か、
「むぅ、唯斗さんだけずるいです!」
「お前にも後でしてやるから少し待って……って、これ以上背中を撫でないでくれ!」
「今すぐ交代してくれますか?」
「いや、
「それなら攻撃しますからね!」
「あ、ちょ、そこはダメだって……」
「瑞希ちゃんの弱いところは全部知ってるんですよ。この前のお泊まりなんて、意地悪でなでなでをお預けしたら深夜におねだりを――――――――」
「わかったわかった! 今すぐ交代してやるから、それ以上恥をかかせないでくれ!」
「えへへ、仕方ないですね♪」
瑞希と花音が一体どこまで進んでいるのかは聞けなかったものの、とりあえず2人きりの時の彼女たちの立場が反転しているということは読み取れる。
そして身体的な弱点だけでなく、精神的な弱点をも知り尽くしている花音が本気を出せば、瑞希が抗うことすら出来ないということも。
先程から寝たフリをしている唯斗がそんなことを考えている間に、頭はそっと枕の方へと戻され、代わりに花音が膝枕へと後頭部を下ろした。
「瑞希ちゃんのお膝は私のものです♪」
「あっさり小田原に使わせたことは悪かったが、あくまでゲームのためだからな?」
「言い訳は通用しませんよ、花音は怒っています。お仕置きは覚悟しておいて下さいね」
「か、勘弁してくれよ……」
この2人の幸せな時間は何人たりとも不可侵だ。普段は騒がしい夕奈も、今ばかりは温かい目で静かに見守っている。
ただ、花音の方が膝枕だけでは我慢し切れなくなった瞬間から瑞希を押し倒し、2人きりの世界に入ってしまった。
「私たち、何を見せられてるんだろ……」
「ちょ、ちょっと気まずいね〜」
「それな」
夕奈たち3人と同じ気持ちな唯斗が、しばらく寝たフリを続けながら、彼女らのイチャイチャが終わるまで耐え続けたことは言うまでもない。
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