隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第339話 努力をひけらかすのは努力をしてない人のすること
第339話 努力をひけらかすのは努力をしてない人のすること
翌朝、
時計を見てみればまだ8時過ぎ。休日は十時頃まで眠る主義の彼にとって、この時間に起こされるのはかなりの痛手である。
『唯斗なら2階で寝てるから、寝込みを襲うなら今のうちよ』
『いや、そんなことしませんよ?!』
『あ、起きてる時に襲う方がお好みだった?』
『そもそも襲いませんから!』
朝から騒がしいなと布団に潜り、ドタドタという足音を緩和する。
しかし、数秒後には何者かが部屋に入ってきていて、気が付けばベッドのすぐ横に立っている気配を感じた。
「……どちら様?」
「
「何か用?」
「そりゃないでしょ。呼んだのは唯斗君なんだから」
「……ああ、忘れてた」
そう言えば、熱で辛そうな彼女を励まそうと、柄にもなくお出かけに誘ったような気がする。
唯斗は心の中で昨日の行動を猛烈に反省しつつ、さすがに今から取り消しというのは無理なので仕方なくベッドから転がるように降りた。
「分かった、すぐ着替えるよ。……はあ、面倒臭い」
「少しは心の声隠す努力をしようよ」
「努力したことない人に言われたくない」
「夕奈ちゃんは努力家ですしぃ、めちゃくちゃ努力して生きてますよーだ!」
「ダイエット」
「ちょっと走れば痩せれる体質だし?」
「スポーツ」
「生まれつきなんでもできるって言うか?」
「勉強」
「頭悪い方が可愛くない?」
「それのどこが努力家なの」
彼がやれやれと言わんばかりに首を振ると、夕奈は「そういうことに努力してないだけだし!」と不満そうに頬を膨らませる。
「じゃあ、何になら努力してるの」
「それは……」
「無いんでしょ」
「あるし! ただ、言いづらいっていうか……」
「思いつかないから?」
「ちゃうわ!」
彼女は「言うからな! 言ってやるかんな!」と散々焦らした挙句、「やっぱり……」と喉まで出かかっていた言葉を引っ込めてしまった。
これ以上は見ていても面白いものはなさそうだからと唯斗がパジャマを脱ぎ始めると、「言う! 全部吐くからそんな暴力的なことはやめて!」と両目を手で覆う。何もしていないのに変な人だ。
「ちなみに、隙間から見てるのバレバレだからね」
「こちとら女子高生やぞ。好奇心には勝てん!」
「その好奇心に負けてどこまで見る気? 次、ズボン脱がないといけないんだけど」
「ここまで来たら最後まで……って嘘だよ? 嘘だからそんな引いた目で見ないで」
「脱いで欲しくなければ、早く努力してることについて話してよ」
「どんな脅迫?!」
「僕だってこんなことはしたくないんだ」
「悪質な犯罪者かおら」
夕奈はそう言って、はだけたパジャマから覗く唯斗のお腹に軽くパンチをする。
一度だけならツッコミということで流せたが、二度目三度目の妙にいやらしい触れ方には、さすがの彼も
「……別に言えるけどさ。笑わないでよ?」
「僕が夕奈の話で笑ったことある?」
「それはそれで別の部分に刺さるからやめろし」
「安心して、愛想笑いもしないから」
「安心していいのかわかんないけど……まあ、これから言うことは2人だけの秘密ね?」
「大丈夫、
「言っとるやないか」
夕奈は深いため息をつくと、「恥ずかしがってた自分がバカみたいじゃん」と呟いてベッドの縁に腰を下ろす。
それからこちらを真っ直ぐに見つめると、「私が努力してることはね……」と言いながらにんまりと頬を緩めた。
「唯斗君と仲良くなることだよ♪」
「……」
「いや、なんか言ってくれない?!」
「思ったより納得できる答えだったね」
「そ、そう? 夕奈ちゃん、結構頑張ってるかんね」
「努力は報われてないみたいだけど」
「……え?」
「冗談だよ。冗談だからそんな悲しい顔しないで」
この後、夕奈の嘘泣きに騙されてた唯斗が、駅前のタピオカミルクティーを奢るという約束をさせられたことは言うまでもない。
「嘘つき女王だね」
「唯斗君は騙され男爵だよ」
「どうして僕の方が位が下なの」
「ふふん、お察しください♪」
「……まあ、別にいいけど」
「夕奈ちゃんの尻に敷かれてればいいのさ」
「人差し指立てて待っとくね」
「カンチョーはやめて?!」
「ふふふ」
「え、ちょ、嘘だよね……?」
そんな会話から数分が経った頃、部屋に入ってきた
「お兄ちゃん……出口は天音が塞いでおくね!」
「さすが我が妹」
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