24
二人は、おじいちゃん恐竜の顔の所まで走っていった。
ところが、いつまで経っても、いきつかない。
痺れをきらした孫のモーモが、2人を咥え上げ、連れて行ってくれた。
ようやく、顔の所まで行きついた。すると、年老いた恐竜は、薄目を開けた。
「やあ、よく来てくれた」
「大丈夫ですか? 何かしてもらいたいことは?」
聞きながら、圭太は膝ががくがくした。
もし、このおじいちゃん、どこか痛かったら?
他人の痛みが、圭太には、耐えられなかった。テレビで、悪いやつが、正義の味方にやられるだけでも、泣きたくなるほどなのだ。
「おじいちゃんを起こしてよ。群れをおいかけなくちゃ、いけないんだ」
おじいちゃん恐竜に代わって、モーモが、説明を始めた。
「この辺の、シダや木の葉は、あらかた食べ尽くしてしまった。セイスモサウルスの首は、あまり上へと伸ばすことができないから、木を倒して、葉を食べたりする。そうでなくても、僕らの群れが葉を食べ尽くすと、木が枯れてしまうんだ。だから、群れは、また、大移動を始めたんだ。次の食料を求めて」
たしかに、辺りには、裸の木や、倒された大木が見えた。
おじいさん恐竜が、ためいきをついた。
「いいんだ。わしは、もう、駄目だよ」
「悲しいこと言わないでよ、おじいちゃん! だから、ハッピーだいちゃん♡ を呼んだんじゃないか。恐竜の力ならどうにもならなくても、道具の力でなら、何とかなるかもしれないじゃないか!」
大きな目をうるうるさせて、モーモが抗議した。
「そうですよ。私たちにできないことなんかありません!」
きっぱりと、おねえちゃんが言い切った。まるで、白蛇が乗り移ったかのような調子の良さだ。
圭太も、できることなら、この年老いたセイスモサウルスを、何とか再び立ち上がらせてあげたかった。けれども、そんなことができるのだろうか? 何しろ相手は、体重数十トンもある、史上最大の恐竜なのだ。
「ちょっと、おねえちゃん、どうするんだよ」
圭太は、おねえちゃんににじり寄った。
「いい考えがあるの」
まかせておけと言わんばかりに、おねえちゃんが胸をどんと叩いた。
「大型トラックで引っ張るのよ」
「えっ!」
圭太は不安だ。
トラックって……。
「でも、このセイスモサウルス、とっても、重いんだよ」
「だったら、トラックを何台ももってくるだけのことよ」
くるりとカイバを振り返った。
「さ、カイバ、白蛇に伝えて。大型トラックを百台、運転手を百人」
「リョウカイ、リョウカイ」
カイバは、くるっと向きを変えた。スーパーおろち目がけてふわふわと飛んでいく。
どっかーん! ギーッ!
バリバリバリバリッ!
カイバが見えなくなって、すぐだった。圭太たちの目の前に、スーパーおろち号が突如現れ、鼓膜が破れるような音を立てて停車した。
「迅速第一、スーパーおろち。トラック百台、運転手付き、おまちどうさまーっ!」
列車の急停車の音に負けないきんきん声で、白蛇が怒鳴る。
スーパーおろちの後ろには、たくさんの貨車の下枠が連結されていた。その一つ一つに、大きなトラックが乗っている。
1、2、3……。
本当に、100台、ありそうだ。
トラックたちは、いっせいにエンジンをふかし始めた。静かだった平原が、たちまち、機械の音でいっぱいになる。
やがて、トラック達は、平原に降り始めた。先頭から1台ずつ、慎重に。
騒然とした平原には、ガソリンの匂いが立ち込めている。
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