第二章 キフノイチダクは過去から続く
#28 雨羽霧慧のレポート①
【霧慧視点】
これを見ている人は初めましてかしら?
私は
突然だけれど、私は恋愛観察を趣味としているわ。
男女の間で純愛が育まれていく様子を見るのが好きなのよ。
だけど私が二年生の時、一つ年下の幼馴染みで恋人でもあるナオ君の学年で、男をとっかえひっかえしている女子がいるという噂を耳にしたの。
それが
二つ結びにした茶髪と空色の瞳が特徴で、女の子らしい可愛い顔立ちから異性の眼を集めている……けど、彼女に纏わり付いている噂にはなんとも眉を顰めてしまう。
調査して情報を精査した結果、彼女は別段男を弄ぶような性格をしているわけではなく、むしろ恋に恋している普通の女の子だった。
なのにどうして告白してきた相手と交際と破局を繰り返しているのか……それを知っていたのは、小学校から同じクラスだという
星夏ちゃんと最も付き合いの長い彼から齎された情報は、その内に秘める強い愛情と共に語られた。
十歳の頃に父親の不倫が原因で両親は離婚、母親の元で育てられるも現在はネグレクトを受けていること、その当てつけとして絶対に裏切らない理想の相手を見つけるために、交際を繰り返している。
その時、私は星夏ちゃんが求めている理想の相手には、康太郎君が相応しいと直感した。
丁度彼も星夏ちゃんに好意を懐いているから、すぐに解決出来ると思ったんだけど……。
「俺は星夏に告白はしませんよ」
ってどういうことなのよ!?
同じ高校に来たり、噂が立っても幻滅しないぐらい好きなんでしょ!?
なのにどうして告白しないって言うの!?
訳が分からず憤慨してしまったけれど、彼は頑なに自分を卑下して告白をしようとしない。
告白はしないクセに、その、えっと、せ、せせ……う゛んっ、行為だけはやってるせいか、距離感が可笑しいのよね、あの二人。
そもそもどういった経緯で彼が好意を懐いたのか訊いても、口を閉ざして答えてくれなかった。
事前の調査で康太郎君のことも調べたけれど、中学時代に暴力に明け暮れていたのが、中学三年の夏頃を境に更生したからその時期なのは明らか。
でも肝心の何があったかというのだけは分からない。
必死に粘って何とか聴き出せたのは……。
「──俺は星夏に救われたんです。ただそれだけですよ」
救われたと形容するくらいの事があったとは察せられるけれど、どうにも要領を得ない答えだった。
一体何があったんでしょうね?
まぁそこは追々で良いわ。
目下の問題はどうやって二人を恋人にするかを模索している内に、康太郎君に好意を寄せる女の子が現れた点よ。
その子の名前は
私達とは違う学校……それも女子校に通っている女の子で、腰まで伸ばされた長い黒髪に柔和な桃色の瞳、清楚な佇まいに加えて多くの人目を引く程の美少女。
正直に言うと、星夏ちゃんから目移りしない方がおかしいレベルの美人で、如何に康太郎君の気持ちが強いのかが窺えるわ。
そこまで好きならさっさと告白しなさいよ、とも思うけれど。
あら、話が逸れてしまっていたわね。
その海涼ちゃんは康太郎君と同じバイト先で働いているのだけれど、今から二ヶ月程前にストーカーに襲われていた時に、間一髪のところで康太郎君に助けられたそうなの。
そんな少女漫画みたいなことをされて、見事に恋に落ちちゃったようね。
今のところは星夏ちゃんと海涼ちゃんに面識は無い様だけれど、もしこの二人が邂逅したらどうなるのかしら?
もしかしたら今頃会ってたりして?
そうなったらきっと、否応なしにキミは態度を変えなくちゃいけないわよ。
私としては星夏ちゃんを選んで欲しいけれど、海涼ちゃんにもちゃんと誠実な対応をしないと後で痛い目を見せるわよ、康太郎君……?
======
第二章プロローグでした!
本格スタートは3月10日の夜8時からです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます