第10章 5 ずっと貴方だけを

「グアアアアアアッ!!」


ロキが叫んだ。私が握り締めていた『神殺しの剣』はしっかりとロキの身体を貫いている。


「お・・おのれ・・・リオ・・ス・・。」


ロキは剣が刺さったまま床に崩れ落ちた。私は無表情でロキを見下ろすと言った。


「さよなら・・ロキ。無に・・・帰りさない・・・。」


「リ・・オ・・・ス・・・。」


ロキの身体はみるみるうちに崩れ落ち・・・やがて黒い塵になって掻き消えていった。すると足元でタバサの声が聞こえてきた。


「ア・・・アイリス・・・。」


「えっ?!タバサッ?!」


見るとタバサの身体も塵のように崩れ始めていた。


「そ、そんな・・・何故・・・っ?!」


するとタバサは言った。


「と・・当然でしょう・・・私は・・ロキの・・使い魔だったんだから・・・。ご、ごめんなさい・・アイリス・・・オスカー様を手に入れたくて・・私は今まで何度も・・何度も・・貴女を殺してきたわ・・・・。」


「タバサ・・・。」


私はボロボロ泣きながらタバサを見た。


「アイリス・・・オスカー様を・・・よろしくね・・。」


そして、最後にそれだけ言うと・・タバサは一気に砂のように崩れ去り・・塵のように掻き消えていった。


「タバサ・・・そ、そうだわ!オスカーッ!」


私は慌ててオスカーの元へ駆け寄り、抱き起した。


「オスカーッ!!」


オスカーの身体はすっかり冷たくなっており、肌は土気色になっていた。閉じられた目が開く事は無く、おびただしい血で真っ赤に染まっている。


「イヤアア・・オスカー!目を開けて・・・お願い・・・貴方を愛しているのよ・・・私を置いて死なないで・・・っ!」


私の着ていたウェディングドレスはオスカーの血で深紅に染まっていた。


「お願いっ!オスカーッ!私の・・・私の命をあげるから・・・!」


私はすっかり冷たくなったオスカーの唇に自分の唇を強く重ねた。どうか・・どうか・・!私は命を吹き込むかのようにオスカーの口から空気を送り込み・・その時、奇跡が起こった。


オスカーの身体が突如、金色に光り輝き、胸に開いた穴が見る見るうちに塞がっていく。土気色の肌は元の色に戻り、冷たかった身体には体温が戻り始めていた。そしてそれとは反対に私の身体からは翼が消え、光りは徐々に消えていき・・・やがて静寂が訪れた―。



「う・・・。」


オスカーがゆっくりと目を開けた。


「アイリス・・・。」


「オ・・オスカー・・・・ッ!」


私の目に見る見るうちに涙がたまり・・・私はオスカーの胸に縋りつき、いつまでも泣き続け・・・そんな私をオスカーは優しく抱きしめてくれた―。




「どうだ・・?落ち着いたか?アイリス。」


あれから暫く泣き続け・・ようやく私が泣き止むとオスカーは身体を起こし、私の頭をそっと撫でると言った。


「は、はい・・・。我ながら・・・は、恥ずかしいです・・あんな子供のように泣いて・・・!」


そこから先は言葉を紡ぐことが出来なかった。オスカーが口付けてきたからだ。

そしてオスカーは唇を重ねながら言った。


「何言ってるんだ・・?俺は・・すごく嬉しかったぞ?お前がそこまで俺を愛してくれているんだと実感できたからな・・・。」


だから私は頷くと言った。


「はい、私は・・何度生まれ変わって来ても・・・ずっと貴方だけを愛してきました。たとえ前世で失敗しても・・・。」


そして私たちはさらに深く口付けあった―。

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