第9章 3 決起の時
オスカーはそっと唇を離すと、熱のこもった眼で私を見つめて言った。
「アイリス・・。お前を愛しいてる・・世界中の誰にも負けない位・・それが例えお前の両親であろうとも・・・。」
「オスカー様・・・。」
前世では私はオスカーとの婚約式で裏切られた。あの出来事は・・・とてもショックだった。あれ程ショックを受けたのは・・ひょっとする心のどこかで私はオスカーを慕っていたのかもしれない。そして今・・私はそのオスカーに愛を告げられている・・・。
「アイリス・・・どうした?何故・・・・何故泣いているんだ?」
オスカーは不思議そうな顔で私を見つめ、指先で私の涙をそっと拭った。
「え・・?」
その時、私は初めて自分が泣いていたことに気が付いた。一方のオスカーは不安気な瞳で私をじっと見つめている。
「こ、これは・・・嬉しくて・・。オスカー様に愛してると言われて・・つい、うれし涙が・・・。」
「アイリス・・ッ!」
すると再びオスカーが私を強く抱きしめてくると、訴えてきた。
「アイリス・・どうか・・・どうかずっともうこれからは俺の傍から離れないでくれ・・!不思議な事に・・お前の事をずっと考えているだけで・・俺は自分を保っていられる。あの忌まわしい『エルトリアの呪い』に侵されたもう1人の自分が現れないんだ・・・!」
「オスカー様・・・。」
そうだ・・確かに言われてみれば・・・ここ最近はずっと『黒いオスカー』が現れた様子が無い。
「はい、もう絶対に私はオスカー様から離れません。・・私はオスカー様の婚約者ですから。」
するとその言葉にオスカーは目を見開いた。
「え・・・?まだ俺の事を婚約者だと思ってくれているのか?俺は・・もう王位継承権を剥奪されたのに・・?」
「はい、でも・・・そのためのレジスタンスなのですよね?」
「アイリス・・。」
「オスカー様。私もレジスタンスの仲間に加えて下さい。一緒に陛下に憑りついた悪魔を倒し・・・『エルトリアの呪い』を解除する方法を探しましょう。」
するとオスカーは再び強く私を抱きしめてきた。
「アイリス・・・俺はお前を・・本当は危険な目に遭わせたくないんだ・・だが・・お前が傍にいてくれれば・・もう絶対にあの『黒いオスカー』が現れないだろうって確信がある。必ず俺がお前を守る・・・だから・・何処にも行くな。俺の傍にいろ。」
「・・・はい!」
私はオスカーの胸に顔をうずめて力強く返事をした。
その後、オスカーは隠れ家にいる全員をこの部屋に呼び出し、さらに偵察隊として外に放った人員も連れてくるように命じた。
「偵察隊が・・いたのですか?」
ソファに座った私は上座に座るオスカーに尋ねた
「ああ。お前が『リーベルタース』に来ていないか探しに行かせていたんだ。」
「まあ・・・それでアドニスがあそこに町の入り口にいたのですね?」
私はアドニスを見ながら言った。
「はい、それだけではありません。他にも10名ほどの仲間がアイリス様を探すために町の要所要所で待機しておりました。」
アドニスが説明してくれた。
「お前は女神『リオス』にそっくりな容姿をしているからな・・・。もしこの都市にやってくればすぐに分かるだろうと思ったんだ。それにしても・・・アイリス。お前よくあの王宮から逃げて来られたな?一体何があったんだ?」
オスカーは私に尋ねてきた。
「はい、実は・・・。」
私は事の顛末を話した。フリードリッヒ3世の前で気を失い・・目覚めるとそこは見知らぬ部屋で、タバサとアンソニー皇子がいた事、そして邪眼の力で操られ、バルコニーから身投げをさせられたけれども偶然通りかかったレイフに助けられ、逃がしてくれたこと・・それを全て語った。
私の話をオスカーもアドニスもユリアナ、シモン、アルマンゾ・・・誰もが黙って口を閉ざして聞いていたが、やがてオスカーが口を開いた。
「・・とにかく、俺はこのレジスタンスに戻ってくる事が出来た。そしてアイリスも今は俺たちの元にいる。もう・・・恐れるものは何もない。散り散りになった仲間を全員ここへ呼び集め・・・今こそ立ち上がる時がやってきた!」
オスカーの言葉に、その場にいる全員が力強く頷いた―。
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