第8章 15 レイフの告白
「いや・・それは俺のただの夢の話だから・・気にするな。」
レイフは額に手を当てるとため息をついた。レイフはそう言うけれども、私は彼の見た夢の話が気になって仕方が無かった。何故かは分らないけれども・・・それはすごく重要な事の様に感じたからだ。
「お願い、夢の話でもいいから・・聞かせて欲しいの。」
真剣な瞳でレイフを見つめる。レイフの瞳は戸惑ったように揺れていたが・・やがて口を開いた。
「この夢を見るようになったのは・・実はつい最近の事なんだ。」
「最近・・?」
「ああ。アカデミーに入学してから見るようになったんだ・・・。その夢は始めはぼんやりしていて内容もあまり思い出されなかったんだが・・タバサが現れてからは夢の内容がリアルになって来たんだ・・・。」
そしてレイフは私を見ると悲し気に笑った。
「アイリス・・・お前は夢の世界で酷い目に遭わされていた。オスカー王子との婚約は破棄され・・それどころか色々な罪状に問われ・・・お前は牢屋に入れられるんだ。そして他でも無い、お前をオスカー王子に引き渡したのは・・この俺なんだから・・。」
「!」
そ、そんな・・・!
オスカーもレイフも・・ひょっとして私と同じ記憶を持っているの・・・?彼等もタイムリープをしてきたの・・?
私は余程青ざめた顔をしていたのだろう。レイフが心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫か・・?アイリス。顔色が悪いぞ・・?今の話は・・・所詮俺の夢の話だ。だからそんなに気にする事は無い。それよりも・・アイリス。お前はここにいては危険だ。今外はもの凄い嵐だから外に出る事はかなわないが・・・嵐が治まったらすぐにお前をここから安全な場所へ逃がしてやる。」
「レイフ・・・。い、今の貴方は・・正気なの・・?」
私はレイフの顔を見た。するとレイフは辛そうに一瞬顔を背け・・次に私の目をまっすぐに見つめると言った。
「俺は・・・アイリス。お前に信用されなくて当然だ・・。お前に俺は何度も酷い事をしようとしてきたからな。・・挙句にタバサなんかに操られて・・。でも、安心しろ。今の俺は・・・正気だ。信じてくれ。」
「レイフ・・・。」
私は悪いとは思ったが、指輪をはめた手でレイフの腕にそっと触れた。するとレイフの思考がすぐさま私の中に流れ込んでくる。
≪ 今外はすごい嵐でタバサにアイリスが逃げたことを知られる事は無いだろう・・・。嵐が治まった後はすぐにアイリスを安全な場所まで逃がしてやらなければ・・! ≫
良かった・・。今のレイフは正気だ・・・そして本当に私を逃がそうとしてくれている・・・けど・・・。
「レイフ・・・私を逃がせがば・・・貴方の立場が悪くなるんじゃないの・・?」
「アイリス?」
私はレイフの顔をしっかり見つめると言った。
「レイフ・・・逃げる時は・・私と一緒に逃げましょう!嵐が治まってタバサが様子を伺いに出てしまったら・・そこに私の姿が無ければ、逃げたと思われ・・・多分真っ先に貴方が疑われてしまうわ!そしたらどんなに酷い目に遭わされるか・・!」
私は声を震わせてレイフを見た。
「アイリス・・・。」
「お願い、一緒に逃げると誓って?」
しかしレイフは首を振った。
「駄目だ・・それは出来ない。」
「レイフッ?!」
「俺は王宮の騎士だ。王族に仕えるのが俺の役目なんだ。そしてオスカー皇子は・・廃嫡された。俺の仕える相手じゃないんだ。今俺が仕える方はアンソニー皇子なんだ。だから・・俺は行けない。」
「そ、そんな・・・。それじゃ・・貴方とオスカー様は・・敵同士になるって言う事なの・・?」
レイフは頷くと言った。
「ああ・・・そうだ。今度オスカー王子に会ったら・・俺は迷わず剣を振り下ろさなければならない。だから・・本当は俺はお前を・・オスカー王子の元へは・・本当は返したくはないんだ・・。」
レイフは悲し気な瞳で私を見つめた―。
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