第7章 17 オスカー救出の計画

「悪魔にも色々な階級や種族がいますが・・彼らは決して自分の真名を明かすことはありませんし・・絶対にばれないように細心の注意を払っています。何故なら悪魔の真名は我ら人間に呼ばれてしまうと永遠に真名を呼んだ者に支配されてしまうからです。なので、ウィンザード家に代々憑りついている悪魔の名前を知る事が出来れば一気に形成は逆転。悪魔を滅ぼすも、操るも我らの意のままです。ですが・・恐らくそれは不可能でしょう・・。もっと他に何か良い方法を考え付かねば・・・。」


シモンは溜息をつくが・・・ひょっとするとこれは・・・好機かもしれない。

私は指輪のついた手をギュッと握りしめた。もし・・・この指輪が人間だけではなく悪魔の思考も読み取ることが出来るなら・・フリードリッヒ3世に憑りつく悪魔の真名を知る事が出来るかもしれない・・!だけど、私が相手の思考を読み取る力がある事は誰にも内緒にしておかなければ。そこで私は考えた。どうすればフリードリッヒ3世に近付くことが出来るのか・・。



「あ、あの・・・。オスカー様が何処に閉じ込められているのかは・・まだ分からないのよね?」


「ええ・・そうです。うかつに城に近付くこともままなりません。」


アドニスが言う。


「それなら・・良い考えがあるの。」


私は思い切って言った。


「良い考え・・?それは一体どのような考えなのでしょうか?」


ユリアナが尋ねてきた。


「私を・・私を囮に使って。」


『 え・・? 』


その場にいた全員の顔に困惑の表情が浮かぶ。


「アイリス様・・・。お待ち下さい。囮に使うとは・・一体どういう意味なのですか?」


アルマンゾが顔をしかめながら私を見た。


「ええ・・・。私を王宮に連れて行ってくれる?私をオスカー様と引き換えに交換して貰えばいいのよ。国王陛下の狙いはこの私なのよ。私と引き換えにすれば・・きっと陛下は応じるはずよ。」


「な・・なりませんっ!アイリス様っ!そのような危険な真似・・我らが出来るとお思いですかっ?!」


アドニスが興奮のあまり立ち上がった。


「落ち着いて、アドニス。私はすでに2回陛下に狙われているの。しかも今の陛下は悪魔の力によって、闇や影があればいつでもそこから現れる事が出来るのよ。つまり・・何処へ隠れても無駄と言う事なのよ。だったら・・・私を差し出す代わりにオスカー様を返してもらう要求を突きつける事の方が、何もしないで捕まるよりは余程いい考えだとは思わない?」


私は全員の顔を見渡しながら言った。・・本当はこんな要求をフリードリッヒ3世が聞き入れるかどうかなんて確証は無い。私の目的はただ一つ。何としてでも悪魔に憑りつかれたフリードリッヒ3世に近付き・・・憑りついている悪魔の真名を知る事なのだから。だけど、私の本来の目的を知らない彼らは反対した。


「いけません!アイリス様とオスカー様を引き換えに等・・そんな恐ろしい計画は断じて受け入れる事は出来ませんっ!」


普段なら冷静沈着のシモンが声を荒げる。


「ええ、そうですっ!か弱き女性を・・・ましてやオスカー様の大切な女性と引き換えなど・・・!」


アドニスが騎士らしい発言をする。


「それでは他に何か良い方法があるの?オスカー様を救出するよい方法を・・。」


「う・・そ、それは・・・。」


アドニスは俯いてしまった。だから私は遭えて明るい声で言う。


「大丈夫。私とオスカー様を交換することが出来たら・・あなた方はきっと私を助けにきてくれると信じていますから・・・。」


「アイリス様・・・。」


シモンは苦し気に顔を歪めたが・・・やがて言った。


「分かりました・・アイリス様・・。」


シモンは頷くと言った。


「アイリス様、出発は明日の朝で宜しいでしょうか?」


「ええ、お願い。」


私は頷いた。


オスカー・・待っていて。必ず貴方を助けに行くから―。





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