第208話 職人の街の発展ですが何か?
マイスタの街は、リューの街長就任から様変わりしようとしていた。
新しい建物も増え、製麺所や、『チョコ』工場、水飴工場、そして、職人の街なのでその職人達が集う大規模な鍛冶工場や、縫製工場が出来るなど、住民の新たな働き場所も増えた。
街郊外の畑も、今まであった普通の畑だけでなく、カカオン農場が北の森に突如登場し、そこで働く人員も沢山募集している。
食生活も製麺所が出来た事で、各料理店に麺料理が登場。
腹持ちが良いと評判で、職人達には特に好んで食べられている。
ここでもリューは、うどんを推した。
特に以前からうどんを成功させる為にトッピングに力を入れていたので、肉うどんに各種天ぷらの組み合わせをリューはアピールした。
これは、街長であるリュー自身が勧めるからか、職人達に大好評になり、ランドマーク領でも成しえなかった人気1位を獲得する事に成功した。
これには思わずリューもガッツポーズである。
ただ、女性には必ずしも好評とはいかなかったので、ここでもリューは策を講じた。
それは、野菜たっぷりの肉サラダうどんのメニュー開発である。
これはメニューの研究にあたっていた料理人からの提案で、リューは当初、邪道と渋っていたのだが、リーンには好評だったので各料理店に試しに提案したところ、さっぱり食べられて美味しいと直ぐに人気になった。
こうしてうどん料理は、マイスタの街で受け入れられる事になるのであった。
……と思ったのも束の間であった。
リーンが、
「お好み焼きもどき(ピザ)の専門店があってもいいんじゃない?」
と、提案してきたので、サラダうどんでの功績もあるし、前世でも人気がある食べ物であった事を残念ながらリューも理解していたので、試しに1店舗作ってみた。
すると、これが爆発的な人気になる。
マイスタの街の住民の食の魂に火を点けたのか、お店は連日満員御礼、黒山の人だかりで行列が絶える事がなかった。
あまりに店内が混雑するので、作る場所を拡張、そして、店内で食べられないのでお持ち帰りと『二輪車』での配達の仕組みを作った。
お客が大量注文をする為に店頭に訪れると、お店は注文を受けてすぐ調理し、配達員がお好み焼きもどき専用のおかもちを後ろに積んだ『二輪車』で配達するのだ。
するとこれもまた成功する。
成功は嬉しい事であったが、この成功により、うどんの人気1位の座はすぐにお好み焼きもどき(ピザ)に奪われ、リューはショックを受けるのであった。
「マイスタの街のみんなが、何となくイ◯リア的な雰囲気があると思ってたけども!」
と、リューは愚痴をこぼすのであったが、この事があってか、竜星組と、ミナトミュラー商会内では、うどんとお好み焼きもどきを比べる事は禁句になるのであった。
マイスタの街は、確実に発展していた。
こうなってくるとどうしても成功させたいのが、この街で行われる一年に一度のお祭りである。
竜星組の興行部門、出店部門はその日に向けて、準備に余念がない。
それに、この街では竜星組を始め、三つの組織が存在する。
お祭りの興行を失敗などして、来年は『闇商会』、もしくは『闇夜会』で、となるのは竜星組の面子にかけても避けたいところであった。
なので、リューは当日訪れるお客の視覚、嗅覚、聴覚に訴える事にした。
まずは、視覚。
これは、町中に提灯を飾る事にした。
これは、住民に配布して自分の家の前に吊るして貰う形だ。
提灯はこの日の為に、リューが細工職人を動員して作って貰った。
初めての事なので作るのに多少値は張ったが、次回からは安くて済むだろう。
色とりどりの提灯のおかげで住人のみならず、外からのお客にも綺麗だと思って貰えている様だ。
そして、嗅覚。
これは、もちろん料理であり、出店部門が料理に関してこの日の為に修行を重ねてきた。
屋台で調理してその場で出すスタイルで、定番の串焼きから、嗅覚を刺激するならこれ!と、リューが推し進めたのが、焼きそばや焼きイカ、焼きトウモロコシであった。
もちろん、ランドマークの豊穣祭でお馴染みのリゴー飴や、リゴーパイなども出すが、嗅覚を刺激するならやはり焼き物系であった。
ここに、唐揚げなども加えて万全の態勢を取る。
そして、最後が聴覚。
これは、祭囃子だが、革職人には太鼓を、細工職人には笛を作って貰い、若い衆に簡単なメロディーを覚えて貰って演奏させる。
これは、連日、街の片隅で練習させていたので地元の住人達は最初こそ何事かと思っていたが、簡単なメロディーの繰り返しが脳裏に残る様で、自然と口ずさむところまで洗脳……、じゃない、慣れ親しんで貰える様になっていた。
こうして、マイスタの住人にはお祭りの準備段階から楽しんで貰い、外からのお客には期待を持たせつつ、当日を迎えるのであった。
「……ついに来たねマイスタの街祭り当日」
リューが、緊張でつばを飲み込んだ。
「みんな頑張って準備したんだから成功させて楽しみましょうね!」
リーンは、リューの緊張を他所にすでにお祭り気分である。
「ランスキー、マルコ。準備万端だよね?」
「「へい!」」
「よし。……じゃあ、開始を知らせる打ち上げ花火だ!」
リューはそう言うと街長邸の庭から上空に向かって、大きめの火魔法を放った。
火魔法は上空で派手に大轟音を立て炸裂する。
マイスタの街の住人がこの大轟音にお腹の奥から振動を感じて外へ飛び出してくるのを視界に捉えつつ、リューがマイスタの街長になって一番のイベントが開始されたのであった。
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