第172話 闇組織の反撃ですが何か?

『闇組織』の幹部達が本格的に動き出すと、形勢はあっという間に『闇組織』側に傾く事になった。


『上弦の闇』『月下狼』『黒炎の羊』の三連合はすぐに窮地に陥った。



 そんな中のとある新月の夜。


『上弦の闇』グループは『闇組織』の組織だった兵隊の襲撃を受け、危うく『上弦の闇』のボスも命を失うところであった。


 しかし、突然現れた灰色装束の一団にギリギリのところで命を救われた。


 襲撃した『闇組織』の兵隊はこの灰色装束の一団に逆に反撃されて大打撃を受けると、残りの者は逃げ散った。


「大丈夫かお前ら?ワシらが偶然来なかったら死んどったぞ?」


 一団のリーダーと思われる男がそう言うとボスの男の腕を掴んで立たせる。


「た、助かった……。お前らは一体どこの連中だ?やはり黒炎の爺さんのところの兵隊か?」


「なわけあるか。ワシらはお前らのところに情報を流してやっとる情報屋じゃわい。今回はタダにしとくが、次はお金を用意しとけよ、こっちもタダ働きはしたくないからのう」


 一団のリーダーは尤もらしい事を言った。

 だが、『上弦の闇』のボスの腰にあったお金の入った袋に気づくとそれを取り上げ、


「やはり、今、貰っておくかの」


 と、言って立ち去るのであった。


「……一体何者なんだあいつらは。……ともかく助かった。──お前ら、警備兵が来る前に死体をさっさと片付けろ!急げ!今、介入されたら厄介だ!」


 ボスの男は動ける者を集めると急いで隠ぺいを始めるのであった。




 三連合の『月下狼』も、襲撃を受けたが、灰色装束の一団に救われていた。


「なんだ、少し期待したが、そこまでは強くなかったな。わはは!」


 一団を率いていると思われるがっちり体系の男は笑った。


「あんた達は一体何者だい?」


 現場に兵隊を率いて駆けつけた『月下狼』の女ボスは、目の前の一団に救われた事に感謝したが、どこの者かわからず困惑した。


「俺達は情報屋だ。いつも情報を買って貰っているからな。今回は格安にしておくぞ?わはは!」


「……そうかい。怪しいがうちのもんが助かったのも確かだ。それに私らが怪しいなんて言うのも筋違いだね。──誰か、礼金をこの人らに渡しな。借りは作らないよ」


「わかってるじゃないか。わはは!」


 一団のリーダーはそう答えるとお金を受け取り、去っていくのであった。




『黒炎の羊』の拠点の一つも襲撃を受けていた。

 こちらは大規模な戦闘になって長引きそうになったので、警備兵が駆けつける前に痛み分けで死体を回収後、両者とも撤退した。


「……俺の出番は無かったな。おい、みんなビルの管理業務があるからとっとと帰るぞ」


 灰色装束の一団を率いていたリーダーは気の抜ける様な事を言うと撤収を指示した。




 こうして三連合は『闇組織』の反攻に多大な被害を受けたが、灰色装束の一団の救援で痛み分けに終った。


 もちろん、この灰色装束の一団は、祖父カミーザ、領兵隊長スーゴ、ランドマークビル責任者レンドの三人が率いるものであった。


「何じゃレンド。お主は何もしなかったのか?」


 灰色装束が全く汚れていないレンドに気づいて祖父カミーザが、聞いた。


「『黒炎の羊』は、良い兵隊がいますね。ルッチの兵隊と互角だったので救援する必要はありませんでしたよ」


 レンドは飄々と答える。


「坊ちゃんが消耗戦になるのを望んでますからな。それなら仕方ないな。わはは!」


 領兵隊長スーゴがレンドの返答に反応して笑うのであった。


「それは残念だったのう。──で、情報収集の方はどうなったんじゃ?」


 祖父カミーザが今回の襲撃が察知できなかったので、リューの新しい部下の男について暗に聞いたのであった。


「坊ちゃんの下についたランスキーという男は、人望もあるみたいですし、これからでしょう。今、手下の連中を編成している最中で、引継ぎがうまくいってなかったところにこの襲撃だったみたいです」


 レンドが新入りを庇う。


「そうか、タイミングが悪かったのう。まあ、リューの部下になったからにはこれから嫌でも忙しくなるじゃろうから、今回は大目に見とくかのう」


 祖父カミーザは、そう言って笑うと灰色装束を脱いで、着替え始めるのであった。




「……若、今回の事は本当にすみませんでした!」


『闇組織』の大規模襲撃の翌日。


 ランスキーが朝一番でランドマークビルにやってくるとリューに土下座していた。


「大丈夫だよ、今回は仕方がないから。それより、今回はルッチが大規模に兵隊を動かしたから撤収後の動きは観察できたよね?」


「それはもちろんです。現在の『闇組織』の収入源である『薬』の原料である葉っぱの出処が分かりました」


「本当に!?」


 リューは思わず立ち上がる。


「はい!マイスタの街の北に大きな森があるんですが、その中を切り拓いて畑を作っていました。周囲は壁で覆われ厳重に守られていますので中は確認できませんでしたが、葉っぱを運び出すところは確認できました」


「マイスタの街の北側って城門無いよね?」


「はい。地下を掘ってそこから運び込んでるみたいです。多分城内の民家のどれかに繋がってると思いますが、そこまではまだ確認できていません」


「それだけわかれば十分だよ。でかしたランスキー。あとはカチコミするだけだね」


 カチコミ?


 ゴクドー用語にまだ慣れないランスキーは頭に「?」が浮かぶのであった。

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