第147話 結果発表ですが何か?

 隣のリーンに話したつもりの一言で、王女と2年生の背中を押す事になったリューであったが、その後は何事も無く数日が過ぎ、テスト結果発表の日が訪れた。


 結果発表は玄関から中に入ったところの広いスペースの掲示板に張り出されていた。

 誰もが目にする場所なので成績が振るわなかった者にとってはこれは残酷なものだ。


「リュー、後ろでは見えないから前に行きましょう」


 登校した生徒が掲示板前に大挙してるので遠巻きに後ろから覗くのは難しい。


 リューも頷いてリーンと一緒に前に行こうと人混みの中に入ると、二人に気づいた生徒達が、


「おい、本人だ。道を空けろ。おめでとう」


「本当だ!おい、前の奴、主役が来たから空けろよ」


「やるな君達!」


 とリューとリーンに声をかけてきた。


「「?」」


 二人が意味が分からなかったが、二人の前のスペースが空き、掲示板の前まで誘導された。


 そして、掲示板の成績順位が目に飛び込んできた。


 1位 リュー・ランドマーク

 2位 リーン

 3位 エリザベス・クレストリア

 4位 ナジン・マーモルン

 ・

 ・

 ・

 8位 シズ・ラソーエ

 ・

 ・

 ・

 49位 ランス・ボジーン


「おお!」


 リューは、自分の成績はもちろんだが、隅っこグループであるナジンやシズも、上位50位以内にいるのがすぐわかって喜んだ。


 ランスの名をみつけるのには苦労したが、元が補欠合格だったのだから上の方にあったのは本人の努力の賜物だろう。


 リューが喜びの声を上げたので周囲の者は、


「おめでとう!」


 と祝福してくれる人が大半だった。


 今やあの事件以外の意味でランドマークの名を知らない一年生がもぐりになった瞬間であった。


 そんな中、生徒達は一つの疑問が残っていた。

 それは点数の発表が無い事だった。

 これまでの学校の方針では上位のテスト結果の点数は発表されていたのだが、今回から順位の発表だけになっていた。


 これは、学園側の苦渋の決断の結果であった。


 上位二人の特別加点が原因で、合計点数が満点を越えていたのだ。


 学園側はリュー達に実技での手抜きをお願いした以上、加点しなければならかったのだが、二人が全ての教科でほぼ満点を出してしまった為、加点すると満点を越えてしまい、点数を公表すると生徒側からは不可解にしか映らなくなる。


 その為、職員会議の末、点数は未発表にしたのだった。


 ちなみに、四位以下は急に点数が下がる。


 テスト内容が難しかったのが原因だが、上位三人が優秀過ぎるので満点を取らせない為に問題のいくつかを難しくせざるを得なかった結果であった。


 それでも、リュー、リーンが満点以上の点を取り、王女も少し離されるが高得点を叩きだした。


 この結果はすぐに国に報告され、リューの爵位授与の話になるのだが、学園側はそれは知らず、この三人をどう扱うかについて頭を悩ませていた。


 王家が成績報告をさせる程の生徒を預かっているのだ。

 国内随一の学校として、普通に扱ってその才能を伸ばせなければ王立学園のメンツに関わる。

 これは、特別扱いしてでもその才能を伸ばし、学園の面目躍如としなければならない。


 その事が職員室会議でも連日話し合われたが結局は良い答えは出ないのであった。




「これでやっと、一番になれた!」


 教室でリューは改めて心から喜んだ。

 リーンもこの結果に喜んだ。


 私が仕えるのだ、このぐらいは当然だ。


 リーンは自分の事はさておいてリューの結果に鼻高々であった。


「みんな凄いな。俺も意外に出来たと思ってたら49位だったぜ!みんなとテスト勉強したお陰だ、ありがとうな!」


 ランスが補欠合格からの好成績をリュー達に感謝した。


「自分もシズもまさかこんなに上位に入れると思ってなかったから驚いてるよ。リューとリーンが勉強を教えてくれたお陰だよ」


 ナジンがリューとリーンにお礼を言った。


「……みんなありがとう。私も自信がついた……よ」


 シズも声は小さいが、確かに少し自信に満ち溢れている……気がする。


「うん、みんな好成績が出せて良かったよ。みんなおめでとう!今度の休み、僕が奢るから喫茶『ランドマーク』に来ない?」


「おお!今日、親父にその日手伝いを休めるか聞いてみるぜ」


 ランスは学校の外でも忙しくしているので、最近ではランドマークビルには行く事が出来なくなっていた。

 なので久しぶりのランドマークビルには行きたかったのであった。


「じゃあ、当日、個室を取って置くよ」


 こうして、次の休みに初めて全員揃って喫茶『ランドマーク』で食事とスイーツを楽しんで過ごす事になったのだった。

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