第144話 思惑ですが何か?
ランドマークの昇爵については、王家の思惑があった。
それは、リューへの爵位の授与である。
学園側からリュー・ランドマークのテストの結果報告も受けており、幻とも言える『次元回廊』を使えるどころか、全ての能力に秀でており、新しい教師陣がその才能を『逸材』と評価している。
そのランドマークと同級生であり、我が子の中でも優秀な子として目に入れても痛くないエリザベスが、この生徒を強く推薦している。
エリザベスは、スキルにも恵まれ、女でなければ王太子として跡継ぎになれたのにと周囲から残念がられる程優れている。
その子が、推薦するのだ。
天才は天才を知るという言葉もある。
そんな高い評価の少年を今のうちに王家としては囲い込み、国に仕える忠臣に育てたいのは山々であった。
ならばと、考えたのが爵位の授与である。
報告では、この三男は家族や領内の民の為に尽くしているよく出来た子供であるというから、まずはランドマーク家の発展を考えるだろう。
こちらが無造作に爵位をやっても、親であるランドマーク家が男爵位と低いままで、その三男が爵位を素直に受け取るとは思えない。
そこで、前回、断られた昇爵話を再燃させる事にしたのだ。
父親であるファーザ・ランドマークが慎ましく、清廉潔白な人物で好感が持てて、その息子で次男のジーロも能力に優れ、父同様、心根の優しい男児である事もわかっているから、昇爵自体王家としては何の迷いも無く出来るというものだ。
それに、ランドマークが所属するスゴエラ侯爵派閥も、王家とは友好関係にある。
こうなると昇爵理由をもっと確実にしたいと思ったのだが、ランドマーク家は最近、自分も愛飲するようになった『コーヒー』や、公務の間の休憩時に口にする『チョコ』の開発者なのだという。
王家御用達商人が納めていた品なので出処まで気にしていなかったのだが、王家の御用達の品を扱っているのであれば、それも理由になる。
聞けば、王宮だけでなく王都市街でも評判になっているというから、なおの事だ。
ランドマーク男爵は、子爵に昇爵、領地の加増については要相談。
その三男のリューは、魔法の能力にとても長けているというから、王家から直接禄を出す宮廷貴族として魔法士爵を授与、その後の活躍次第でさらに昇爵するという事で決定したのであった。
「ランドマークの叙爵が楽しみだな。あそこの次男もとても良い風貌、優れた才能、そして、爽やかな性格をしておったが……。あの冒険者カミーザの息子も孫も皆、優秀で羨ましいわ。そうだ。ちゃんと三男を同行する様に申し渡しておるな?」
「はい、陛下。長男もかなり優れた者と報告を受けておりますから、ランドマーク家は今後も重用して間違いないと思います。それでランドマーク領の加増の件ですが──」
宰相が国王に応じると書類を提出して内容を国王に読んで貰う。
「……ふむ。異例ではあるが、前例がないわけでもない。それで進めよ」
宰相の出した書類に目を通すと頷き、その書類にサインをしたのが、テスト結果の報告があった翌日の事であった。
自分の事で王家が動いてるとは思いもよらないリューは、父ファーザの昇爵にこれ以上無い満面の笑みで喜んでいた。
そしてリューは、すぐに父ファーザを『次元回廊』でランドマーク領に連れて帰り、みんなへの昇爵の報告を促した。
ファーザは喜びを感じる前に妻セシルと娘ハンナに報告をすると別邸に住む母ケイも呼んで報告をする。
父カミーザと長男タウロは魔境の森に出かけていたので、帰ってからの報告になるところだが、待っていられないので早馬を出す事にした。
あとは、派閥の長であるスゴエラ侯爵と、その街で勉強しているジーロ達にも報告しなければらない。
ファーザは丁度居合わせた領兵隊長のスーゴに次々に早馬を出させるのであった。
「落ち着きなよ、ファーザ様。後は俺とセバスチャンがやっておくから、今は奥方達と喜びを分かち合って下さい。がはは!」
スーゴにそう諭されるとファーザは苦笑いした。
「そんなに落ち着きが無い様に見えたか?」
「男爵への昇爵の時と同じくらい落ち着きがありませんよ。がはは!」
「そうか。今回は王都に行くのも楽だから、落ち着かないとな。ははは!」
二人は肩を叩き合って笑うと、喜びを爆発させるのであった。
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