第77話 恥ずかしい想い、しようか?

 今回は、彼の頬に遠慮気味なキスをした後のお話。ちょっとエッチで、ちょっと真剣。だからこそ恥ずかしい……、そんなお話。



 わたしが、隣に座っていた彼、渡瀬わたらせつかさくん(仮名)の言葉に嬉しくなって、つい、キスをしてしまった、その後。

 暫くは、わたしは、恥ずかしくて俯きっぱなしで……。彼は、呆然としてたみたいだった。


「司くんはさぁ、こんなわたしとエッチしたいって思う?」


 ふたりで、いろいろと話をした終盤だったと思う。どんな話の流れで、こんな話題になったのかは覚えてないのだが……。

 まぁ、わたしは、年齢的には成人したけど、体は、まだまだ子どものそれなのだ。140㎝そこその身長、30㎏台前半の体重、ほとんど膨らみを感じさせない胸。その上、病気によって、茶色い中に大量に混じる白い髪。わたしにとって、そのどれもがコンプレックスでしかない。

 男子が、魅力なんて感じるはずがない。

 でも、つきあってる以上は、いつかは、肌を合わせる時が来るかもしれないのだ。

 この時のキスは、衝動的にしちゃったけど、こればかりはそういうわけにはいかない。


「女性……と言うだけで、性の不利や不安が、男性より大きいんだ」


 父は、いつもわたしに言う。そして、こう続ける。


「ひな(仮名)も、いつかは好きな人ができて、エッチをする機会が訪れるかもしれない。基本、男の子の頭の中はそればかりだと思ってて問題ない。ただ、エッチをするにしても、どれだけ女性のことを気遣ってくれるか……が、たいせつなことだと思うよ。しっかり避妊をしてくれるか……が、最初の一歩かな?」


 そんなことを、司くんに言ってみた。

 彼は、わたしからの言葉に、顔を紅くしてたけど……。


避妊具コンドーム、用意してていいのか?」

「うん。あぁ、でも、お母さまからは釘刺されてたっけ? 卒業するまでダメって」

「あぁ、小柄なひなには負担が大きいからだって言ってた。本当に好きなら我慢しろって」

「我慢……できる?」

「自信ない」

「わたしだって……」


 そんなことを言い合って、防波堤に座ったまま、ふたりで笑った。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


「じゃあ、用意しといてね」

「わかった。けど、避妊具あれ買うのに勇気が必要なんだよ。今からヤリますみたいに見られてるみたいで……」

「そうだね。そんな風潮が、世間にできちゃってるから、女の子が泣くんだよ! 司くんも、わたしを泣かせる気?」


 司くんが、大きく首を横に振って否定してくれた。それだけで嬉しい。


「じゃあ、この旅行から帰ったら、ふたりで買いに行こう。一緒に、恥ずかしい想い、しようか?」

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