第74話 そうじゃないでしょ?

 夏休みの旅行編、まだ続きます。


 県を越えたところで乗り換えました。漸く、海あり県の方向に向かいます。ここから、1時間ちょっとで、海あり県のターミナル駅です。

 乗り換えたところで、わたしと男子陣の席に、友人の真琴まことちゃん(仮名)の妹、美琴みことちゃん(仮名)が入ってきました。会津あいづくん(仮名)が席を譲ります。

 こういうところ、会津くんはスマートなんだよなぁ……。



 美琴ちゃんの進路相談(特進課程を目指してる)を受けながら、電車は進む。

 でも、今は迷ってるらしい。少しでも上の大学(わたしたちの中で美琴ちゃんが一番考えてる)を目指すには、特進課程に進むのがいいことだというのは、本人も解ってるようだ。

 ただ、そこに、わたしみたいなイレギュラーが現れた。わたしとつきあう姉の真琴ちゃんも、成績の上昇が著しい。普通課程で友人がいるほうがいいんじゃないか……と。


「美琴ちゃんとは、目指したモノが違うんだよね。わたしは、友だちを作りたくて、この学校を選んだんだ。試験一発の合否判定っていうのもあったけどね。でも、今までの美琴ちゃんはそうじゃないでしょ?」


 美琴ちゃんが、わたしの言うことをおとなしく聞いている。特進課程を目指した理由が、姉、真琴ちゃんへの反発だった……というのは、わたしと美琴ちゃん、ふたりだけの秘密だ。

 エスカレーター式に高校に上がって、普通課程で楽をしてる……って、感じてたらしい。

 まぁ、その真琴ちゃん、自分の背中で見せつけたからね。最近では、ふたりの仲もいいそうだ。



 美琴ちゃんを交え、おとなっぽい話をしてるうちに、目的の駅に着いた。

 真琴ちゃんたちの叔母さまが、駅まで迎えに来てくれるそうだ。忙しいはずなのに申し訳ない。その上、今回の旅行は、至れり尽くせりだった。装備から設備まで、すべてに気を使っていただいて、いろいろと用意してくださっていた。

 夏休み本番前で、それほど忙しくはなかったのだそうだ。みんなで、ご好意に甘えることにした。


 ただ、待ち合わせ場所で、ひと波乱。原因は、またしてもわたしだった。

 予定では……、真琴ちゃんの同級生プラス美琴ちゃんの八人。そこに、小っさなわたしが混じってるのだ。どういう関係? 誰の妹さん? となるのは必然だった。

 美琴ちゃんが紹介してくれたのを機に、叔母さまには、頭、下げられっぱなしである。『見た目は子ども、中身はおとな』は今に始まったことではなし、気にしてはいないのに……。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 現地についた。

 目の前には、大きく広がる、海! いつ以来だろうか? 朝から暑かったけど、吹き抜ける海風が心地いい。さぁ、行こうか? と思ったところで、待ったがかかる。


「ひな? 日焼けして泣くのは自分じゃないのか? そのニーハイも脱げ!」


 美亜みあちゃん(仮名)の命令である。わたしの露わになった足に、日焼け止めの強制施行である。お世話になります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る